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第二百四十一話 ハグレ盗賊団との抗争で検証 その一

 

 レイザー盗賊団のアジト。


 灯台下暗しというのだろうか。その場所は、盗賊ギルドの本拠地があるダルラン領都から南東の、それほど遠くない山の中にあった。


 開拓時代、鉱脈を探すために掘られた坑道のひとつだったらしいのだが、結局、当時はその付近から鉱脈は見つからず、特に名前も付けられないまま閉鎖されたとのこと。


 レイザー盗賊団はその空っぽの横穴を新しいアジトに決めて、鉱脈が発掘された坑道かのように深く深く掘り進めていたらしく、今やその場所は大層立派な拠点になっているようだ。


 盗賊ギルドのメンバーが周囲を探索したところ、そのアジトの出入り口となっているであろう横穴の数が、ジェラード王国側だけでも少なくとも五か所以上はあり、どの程度の深さなのか分からないが、場合によっては洞窟の先が山を突き抜けてソメール教国側まで延びている可能性もあるらしい。


 そこまでの規模になっていた場合、こちら側から攻めてもソメール教国側に逃げられる可能性があるので、そちら側も調査してから襲撃した方がいいという意見も出ていたが、のんびり調査している間に拠点を移されてしまうというリスクもあるということで、盗賊ギルドとしては、準備が整い次第襲撃するという方針に落ち着いた。


 自分とリヤ殿は、そんな風に作戦会議をしているギルドメンバーの横を抜けて、一足先に件のレイザー盗賊団アジトへやってきて……。


「……」


「……」


 ……現在、無事にそのアジト内の牢獄に捕らわれていた。



「なんでこんなことになってるんだよ!」


「レイザー盗賊団に捕まったからだな」


「じゃなくて! なんで捕まってるんだよ!」


「罠の解除に時間がかかったからだな」


「……はぁ」


 もういい、とでもいうように、大きなため息を吐きながら手を額に当て首を振るリヤ殿に返答した通り、自分たちは、レイザー盗賊団のアジト入口付近に張り巡らされていた罠に引っかかり、その解除をしている内にやってきた盗賊一味に捕まった。


 いや、正確には、五十個目の罠の検証をしている時に捕まった。と言った方が正しいだろうか。


「……どうしてあんな見え見えの罠に何度も引っかかったの?」


「ふむ……そこに罠があったから、だろうか?」


「いや、意味わかんないけど……」


 レイザー盗賊団のアジトには、盗賊ギルド内の作戦でも予想されていた通り、いたるところに外敵を排除するためのトラップが仕掛けてあった。


 単純な落とし穴から、落石トラップ、ボウガンの自動発射装置に、魔道具による火炎トラップと、殺傷能力の高いものから低いものまでより取り見取りだ。


 もちろん、そのトラップに盗賊団側の人間が引っかかっては物も子もないので、罠の近くには何となくそれっぽい目印が設置してあったりしたのだが、自分は新しい種類のトラップを発見するたびに、その目印にまっすぐ飛び込んでいった。


 直接的なトラップ以外にも、足止め要素となる分かれ道もたくさん存在し、おそらく、盗賊団内で暗号のように口伝されているのだろう道順に進まないと、危険なトラップ地帯へと足を踏み入れてしまうような作りになっていたのだろうが……申し訳ないが、自分にはマップ画面が確認できる。


 各区画に入らないとマップ情報が入手できなかったソメール教国の箱舟とは違い、この盗賊団アジトは最初からマップ情報が全開放されているタイプだったのもあり、どのルートが行き止まりで、どのルートが奥に進める道なのか、容易に把握できたのだ。


 ハズレと分かるルートから順に全ての分かれ道を通ることで、トラップ付近に目印などが設置されていない危険な道を検証しきるなど造作もない。


 優秀な盗賊でも回避が困難であろう凶悪な罠としては、地面に埋められた魔道具の上を通ると天井が爆発し、足を踏み入れたその道が全て土砂で埋まってしまうというものがあったが、亜空間倉庫が使用できるプレイヤーであれば、罠が発動してしまっても冷静に対処すれば被害はゼロで済む。


 接近を感知する魔道具を使って、目で見ただけではその場所が罠の起動スイッチになっているとは分からない工夫を凝らしている点は評価できるが、プレイヤーには一定範囲内の他人が所有していないアイテムを手で触れることなく格納できる機能が標準搭載されているので、プレイヤー的にはそこまで脅威レベルは高くないと言えるだろう。


 同じように、落石も、ボウガンの矢も、落とし穴の先に設置された木の槍も、冷静な思考と動体視力さえあれば自分の身体に接触する前に回収してしまえるので、視力アップ系のスキルを入手していれば対応は可能。


 発動からダメージまでの猶予が少なく亜空間倉庫での対応が難しいトラップとして、原始的なトラバサミなどが有効であるという発見があったが、そういった罠でも物理的な耐性スキルを獲得していればダメージは少なく済むし、そもそも原始的な罠は発見しやすい。


 同じように亜空間倉庫が使えない罠として、魔道具を使った火炎トラップなどが挙げられるが、そちらは物理的な回避に使えるスキルや、火や魔法に対する耐性スキルの他、上がった火の手を消火できる道具や魔法など、対応できる手段がたくさん存在するので、そこまでの脅威はないと言える。


 そうしてハズレの道や、トラップを一通り検証をしながら進んだ自分の所感としては、このダンジョンの適正レベルはそれほど高くないという結論になった。


 まぁ、そんなことをやっていたせいで侵入者がいることが早い段階から相手にバレていたようで、頭上から降ってきた鉄の檻に捕らえられるという罠の開錠が終わったタイミングで、大勢の盗賊団員に囲まれていた。というわけである。


「まぁ、無事に侵入成功したということで、何も問題ないな」


「問題だらけだよ!」


 ふむ……盗賊団に捕らえられることにはなったものの、そのおかげでアジトのかなり奥にある牢獄まで侵入できたし、数多くのトラップが検証できたのだが、リヤ殿は何が不満なのだろうか?


 特に、トラップに使えるオリジナルの魔道具が多く設置されていることから、敵陣に魔法の知識が豊富な人物がいるということが予想できたのは、大きな収穫だろう。


 専属の魔道具職人も抱え込んでいるのか、作成に関しては一般の職人に外注しているのかは分からないが、少なくとも魔道具に刻む特殊な魔法陣を考えることが出来る人物が盗賊団サイドにいることは間違いない。


 そして、そんな魔法陣を考えられる人物であれば、きっと普通に戦闘系の魔法を使って戦ったとしても強いはずだ。注意しておくに越したことはない。


 それに……。


「リヤ殿にひとつ教えを授けたい」


「こんな状況になった原因であるキミから教えられることなんて無い気がするけど、一応、聞こうか?」


「うむ、それでいい。では、まず質問だ……このレイザー盗賊団のアジトは、レイザー盗賊団が壊滅したら、どうなると思う?」


「え? そりゃあ、国の騎士が中を確認した後に厳重に封鎖したり、取り壊したりするんじゃない?」


「うーむ……間違ってはいないが、自分が求めていた答えとは違うな」


「どういうこと?」


「良いであるか? このレイザー盗賊団のアジトは、レイザー盗賊団が壊滅したら、レイザー盗賊団のアジトではなくなってしまうのだ」


「……は?」


「つまり、レイザー盗賊団のアジトというマップを検証できるのは、今だけなのだ」


「……」


「……」


「ちょっと横になって休んでるから、何か進展があったら起こして」


 ふむ……彼女に検証の心得を伝授するにはまだ早かっただろうか。


 今このタイミングで、この場所に存在する罠を全て検証しなければならない理由について、分かりやすく説明したつもりなのだが……リヤ殿は苦々しい顔を返すという以外に特に何のリアクションもなく、横になって眠ってしまった。


 まぁ、トラップの検証という慣れない対応で疲れていることもあるだろうし、彼女にはしばらくこのまま休んでいてもらって、残りの検証は自分の方で検証を進めるとしよう。


 自分は頭の中でそう方針をまとめると、牢獄から出て、開錠した鍵を掛けなおした。


「……え?」


「ふむ……【施錠(ロック)】【防護壁プロテクション・ウォール】」


「何やってんの?」


「これであるか? 牢屋の鍵や防御性能がイマイチだったので、強化したのだ」


「そうじゃなくて、キミ、〈抑制の首輪〉をつけられた上に、ピッキングツールとかの盗賊道具を取り上げられたはずじゃ……」


「うむ、そうだな」


 まぁ、〈抑制の首輪〉が亜空間倉庫を使用できるプレイヤーに全く意味のないものであることは検証済みだし、ピッキングツールは盗賊道具用の物だけでなく、冒険者用の物も持っているから問題ない。


 盗られたままだと、また怒られた上で新しい盗賊道具を購入する経費がかかってしまいそうだが、どうせ今回の検証のために無断でアジトに乗り込んだことを怒られるだろうしな……これ以上怒られる項目が増えたところで変わらないだろう。


「いや、そうじゃなくて……」


「では、何か進展があったら起こしに来るので、それまで少し休んでいてくれ」


「え、ちょっ、オース! だったらぼくも……!」


「あぁ、誰かが来たら、自分はトイレに行っているとでも言っておいてくれ」


 走り出した自分の後ろからリヤ殿がまだ何か叫んでいたが、申し訳ないが自分には彼女の休憩を待っている暇はない。


 先ほども言った通り、レイザー盗賊団のアジトというマップを検証できるのは、レイザー盗賊団が壊滅するまでなのだ。


 盗賊ギルドの仲間がこの場所を襲撃してくる前に、このマップがレイザー盗賊団のアジトである内に、ここで行える検証を全て済ませなくては……。


「ふむ……なるほど……よし」


「とりあえず敵という敵を全て拘束して、全アイテムを回収しよう」


 自分は頭の中で検証項目を洗い出すと、マップ画面を頼りにアジトのさらに奥へと進んでいった……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【魔王】:人知を超える魔法を操り、魔物を従える。

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる。

【言語理解】:様々な言語を読み、書き、話すことが出来る。


▼称号一覧

【魔王】:勇者の枠を超え、魔王としての役割を果たした。


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,510〉〈木×18〉〈薪×1,400〉〈布×200〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,850日分〉〈保存食×19,995〉〈飼料×1,800〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×400〉〈獣生肉(上)×400〉

〈獣の骨×700〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×240〉〈羽毛×30〉〈魔石(極小)×66〉

〈革×270〉〈毛皮×90〉〈スライム草×90〉〈抑制の首輪×6〉

〈着替え×980〉〈本×90〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×1,098〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×8〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉〈採掘道具×1〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈交易品×200〉

〈教国軍の消耗品×199,200〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×99,180〉

〈金貨×513〉〈大銀貨×1,940〉〈銀貨×1,800〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×2〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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