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第二百二十二話 ジェラード王国への帰還で検証

 

「ついにここまで戻ってきたか……」


 ジェラード王国、ダルラン領、スルーバレー砦。


 ジェラード王国の学園からソメール教国へと向かう途中の旅では、ジェラード王国側にあるこの関所からソメール教国へ入ろうとしたところ、ソメール教国とグラヴィーナ帝国の間で戦争が始まってしまったあおりを受けて封鎖されていた砦だ。


 あの時は確か、この砦を抜けてソメール教国へ入るルートが使えなくなったという理由と、グラヴィーナ帝国で始まってしまった戦争を止めたいという理由が重なって、ぐるっとグラヴィーナ帝国側から遠回りしてソメール教国へ入るルートを選ぶことになったのだったな。


 だが今はそんな封鎖はすっかり解かれて、ソメール教国側からこの道を使ってジェラード王国へと入る人や馬車はそれなりにあるようで、自分のいる最後尾から砦の門に向かって何台もの馬車や人が並んでいる。


 自分はバジオーラ侯爵領都にて、もうこちら側のルートから普通にジェラード王国へ入れるようになっていると聞いていたので、この砦を通るルートでジェラード王国へ向かうことを決めていた。


 バジオーラ侯爵邸から頂戴してきた大量の盗品を携えて……。


 侯爵邸では結局、あのまま誰にも見つからずに持てるだけの金品を盗んで脱出できた。


 書斎の金庫や机の引き出し、侯爵の寝室のチェストから、ありったけの金銭を頂き、奥様の寝室や展示室にあった宝飾品も頂いた上で、それでも想定していたよりも荷物量が少なく済んだので、ギャラリーやエントランスホールに展示されている美術品まで盗んできている。


 しかも、侯爵邸の強盗があまりにも難易度が低すぎたので、夜になってから追加でカジノの方にも強盗を仕掛けたのだが、そこでもタイミングよくカジノを取り仕切る立場の人物やその護衛が揃って出払っていたので、指示系統や警備が麻痺しており、多少見つかって騒動にはなったが、最終的にはカジノの金庫からもごっそりと金銭を頂けてしまった。


 おそらく、屋敷に盗人が入ったことを知った侯爵様が、カジノを運営していた者も含めて他の貴族たちを呼び出していたりしたタイミングだったのだろう。


 ふーむ……だが、強盗がメインの遊びではないゲームだったとしても、これは流石に難易度が低すぎないだろうか。


 金銭を入手する手段として、こういった窃盗行為で簡単に稼げてしまうと、通常の商売や冒険者の依頼報酬などでお金を稼ぐ意味が薄れてしまうので、ゲームバランスとしては大変よろしくない。


 これはしっかりとメモに書き留めておいて、開発チームに会えた時にちゃんと進言するとしよう。


「……コホン、身分証を」


 そうこう考えているうちに、砦に入る順番待ちをしていた行列が捌かれて、自分が操る馬車の番が回ってきたようで、門番に身分証の提示を求められる。


 国と国の間にある砦には関所の役割があって、大きな町などに入る時と同じように身分証の提示や通行税が求められるのはいつものことだったので、自分は特に気にせずに冒険者ギルドの身分証を渡した。


「アルダートンのEランク冒険者? が、一人? なんで教国なんかに行っていたんだ?」


 しかし、その門番は、自分が渡したその冒険者ギルドカードを受け取って眺めた後、こちらへ怪訝な目を向け、今までの大きな街に入るときの検問などでは聞かれなかった、そんな内容を聞いてきた。


「? まぁ、一言では説明しきれないほど複雑な事情があったのだが……どうしてそのようなことを尋ねるのだ?」


「どうしてって、Eランク冒険者なら国外に行くような依頼は受けられないだろ? そんなやつが、しかも一人で、どうして教国なんかに行っていたのか、疑問に思って当然だ」


「ふむ……そう言われてみればそうか」


 確か、Eランクで受注できる依頼は、依頼を受注した街の周辺で解決できる討伐依頼などまでで、Fランクにいたっては街の中で完結するような依頼か、魔物の討伐が必須ではない採取依頼まで。


 Dランクでも、他の街へ荷物を配達するような依頼が許されるだけで、街から街への護衛依頼が受けられるのはCランクになってから……Bランクになってからようやく、国を渡る貴族などの護衛依頼が受けられるんだったか。


 そんなルールなら確かに、Eランクの冒険者が国外から帰ってきたら、何をしに行っていたのか気になるかもしれないな。


「それに最近、例の勇者騒動があったばかりだろ? そんな時期に件のソメール教国に行っていたなんて、特別な事情じゃない限りありえない」


 そうだとしても、この門番がいったい自分をどのような人物であるように疑っているのか分からないのだが……特に違法な国境越えをしようとしているわけではないし、気にすることもないか。


 単に国外へ行っていた要件がよくわからないという疑問を解消したいだけかもしれないしな。


「それなら、自分はその騒動に巻き込まれた被害者のようなものだ」


「あぁ、ってことは、あんたも勇者と間違われて誘拐された被害者か」


「……まぁ、そんなところだな」


 実際には間違われるどころか本物の勇者だったり、誘拐されたわけではなく自ら進んで突撃したのだが……それを言ったら話がややこしくなりそうだし、今はやめておこう。


 今は検証資金を集めるために、馬車に積んでいる美術品の類をどこかで換金することを優先したい。


「だったら、勇者騒動に巻き込まれた人物として、ソメール教国から一時的な身分証が発行されているだろう? それに帰国の印を押すから渡してくれ」


「ソメール教国で身分証……?」


「ほら、長期間持ち場を離れていたせいで雇われていた店から解雇されていたり、その期間で受けられていたはずの支援を受けられなかったりした人に、被った被害の全額をソメール教国が保証するとかなんとか……そんな身分証を受け取ってないか?」


 ほう……アクセル殿の父君は、勇者騒動の被害者にそんな補填までしているのか。


 彼らは実際には、誘拐されていたわけでもなければ、ソメール教国内に軟禁されている間の生活費も国が全額負担していて、しかも仕事の紹介まで行っていたという、至れり尽くせりな身分を与えられていたというのに……ソーシャルゲームの運営並みに律儀な方なのだな。


 自分も逃げ出したりせずにあのまま留まっていたら、その身分証とやらを貰えたのかもしれないが、いつの間にか増えていた魔王という称号に焦りを覚えて、まだマギュエの後処理でゴタゴタしているうちに逃げ出してしまったから、そんなものは貰っていない。


「申し訳ないが、そんなものが貰えるとは知らなかったので貰っていない。……それがないとここを通してもらえないのか?」


「いや、それがないと通れないってことはないが……せっかく貰えるものがあるなら、貰っておかないと損じゃないか?」


「それはそうかもしれないが、今からそれを貰うためだけに戻るのも余計な時間と出費が発生するだけだし、Eランク冒険者に必要な補填など特に無さそうだしな」


「まぁ、それもそうか……だが、一応、入国の税は規則通りもらうからな、馬車の積み荷をチェックさせてもらうぞ?」


「あぁ、問題ない……ない?」


 自分がそう返事をしつつ、大事なことに気づくころには、まだ身分証を怪訝そうな顔で眺めている門番とは別の、もう一人の門番が馬車の裏に回り込み、幌の中に積まれた荷物を確認していた……。


 麻袋に乱雑にしまわれた、美術品や宝飾品を。


「……」


「……」


「あー、一応、聞いておくが、これは、その……なんだ?」


 ここで、これらがどこかの店に卸すための商品だと答えても、お土産に買ったものだと答えても、親切な人からの貰いものだと答えても、そんな品がきちんとした箱などに仕舞われていないことの説明がつかないだろう。


 高価な美術品や宝飾品が、傷つかないような工夫もされていない安価な麻袋の中に乱雑に仕舞われている理由など、それが盗品だという以外のどんな理由があるだろうか……。


 しかも、まだそこまで手を伸ばされていないが、その盗品の袋のさらに奥には、小さな革袋などに入った硬貨がギッシリと仕舞われた麻袋もある……それも、大きな商会のトップだって持っていないような額の硬貨が……。


「……」


「……」


 そんな高価な品を、一介のEランク冒険者が、護衛もつけずに馬車で運んでいる……。


 そして今、国境を越えようとしている……。


 うむ……どう考えても窃盗犯だな。


「ふむ……なるほど……よし」


「とりあえず逃げよう」


 自分は空気弾の魔法で周囲の門番をすべて吹き飛ばすと、馬車を全力で走らせて砦の門を突破し、そのまま砦の中も騒ぎを聞きつけて群がってきた兵士をも空気弾で吹き飛ばしながら、反対側の門も強行突破してジェラード王国へと入国した……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【魔王】:人知を超える魔法を操り、魔物を従える。

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる。

【言語理解】:様々な言語を読み、書き、話すことが出来る。


▼称号一覧

【魔王】:勇者の枠を超え、魔王としての役割を果たした。


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,660〉〈木×20〉〈薪×795〉〈布×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×19,998〉〈飼料×4,300〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×270〉

〈獣の骨×700〉〈獣の爪×250〉〈獣の牙×240〉〈羽毛×30〉〈魔石(極小)×68〉

〈革×270〉〈毛皮×90〉〈スライム草×90〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×989〉〈本×90〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×1,100〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×8〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉〈採掘道具×1〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈美術品×20〉〈宝飾品×100〉

〈教国軍の消耗品×199,200〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×99,200〉

〈金貨×400〉〈大銀貨×1,802〉〈銀貨×2,004〉〈大銅貨×3〉〈銅貨×2〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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