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第二百十三話 教都の危機で検証 その三

 

「全区画、作戦通り、配置に着きました!」


「報告ご苦労」


 現在、作戦司令部として機能している箱舟前広場にて、アルドヘルム殿下が部下からの報告に頷いた。


 あれから数十分。


 彼の協力で、この街で魔法が使える全住民にポーションが行きわたり、その住民たちの作戦配備も完了した。


 そんな通常であれば何か月分かかるか分からない数のポーションを作成したアーリー殿やこの街の錬金術師たちは、作成する数が数だっただけに、魔力持続回復ポーションを飲みながら作業した上で全身の魔力を使い果たしており、今は箱舟で休んでいる。


 魔法が使えない人や、身体の弱い人など、これから行う作業を手伝えない住民は、ポーションの材料集めなどを手伝ってもらった後、一足先に箱舟に匿われた。


 箱舟はこの街のどの建物よりも頑丈で、この街をまるごと格納できるほど大きいので、やろうと思えば街の住民全員を箱舟に退避させることだってできる。


 だが、箱舟に実装されていた、外からの攻撃に対してもっとも有効だった魔法障壁は、マギの目がシステムエラーを起こしているせいで消え去っており、この街で一番高いと思われていた防御力は、現在、その物質的な頑丈さ以外は残っていない。


 この状態では、今もなお街の上空で大きく育っている岩が降って来た際の衝撃や飛び散る瓦礫に耐えられる確証はないのだ。


 それに、箱舟だけがこの危機を乗り越えられたとしても、今まで住んでいた家を失う住民の心は守れないし、その後の街の復旧作業にどれだけの工数がかかるか分かったものでは無い。


 だから、住民全員が箱舟に逃げ込むのは最終手段として、今は、街を壊滅の運命から逃れさせる作戦を実行する。


「作戦開始!」


 アルドヘルム殿下の声を聞いた部下が、複数の通信魔道具に対して作戦開始の指示を出し、その通信を聞いた各所の部下が、その内容をまた複数の通信魔道具に伝える。


 そうして行きわたった末端の騎士が、風魔法で声を拡散させながら、その区画の住民に作戦開始の指示を出すのが、この世界の、今の時代における、最速の情報伝達だった。


 この世界ではまだ、一つの端末から複数の端末に向けて声などの情報を伝える技術はそれほど発展していないし、この街でそれなりに確保できた一対一の通信魔道具も、流石に協力者全員に配れるほどの数は無い。


 だがまぁ、現代日本のようにネット回線が張り巡らされているわけでもなければ、モバイル通信の基地局が配置されているわけでもない状態なので、こうして簡易的な遠距離の無線通信網が出来ているだけでも、中々に進んだ技術なのだろう。


『オースさん、作戦開始みたいっすよ』


「了解……では、カヤ殿、頼んだ」


「はいっ、頑張りますっ」


 そんな通信内容が、グリィ殿から〈音信のイヤリング〉を通して届いたタイミングで、自分の方も、隣で待機していたカヤ殿に指示を出す。


 通信を聞かずとも、こちらが一方的に状況を把握するだけなら【超観測】で事足りるのだが、即席の通信網がうまく機能するかの検証もしないといけないからな。


 カヤ殿は自分が通信を受けて出した指示を聞くと、指揮棒タイプの魔法杖を上空に構えて、そこに鎮座する魔法陣に対して、魔力干渉を開始した。


 今から行う作業は、もしかすると、映画などで見かける爆弾解除作業に似ているのかもしれない。


 魔法陣を構成する線を、ひとつひとつ、特定の順番で消していく……そんな気力と根気のいる地味な作業だ。


 本当は、魔法陣の知識のない人物を解除の担当者に当てて、魔法陣の知識を持っている人が通信で手順を伝える……というような検証もしたかったのだが、流石に大勢の命がかかっている状況で失敗の検証まで出来ないので、それはまた次の機会に検証するとしよう。


 —— パシュンッ パシュンッ ——


 ひとつ、またひとつ、カヤ殿が魔法陣の線に対して、彼女自身の魔力を使って切り取るようにして、少しずつ描き変えていく。


 今行っている作業は、岩をその場に固定するための要素だけ残し、砂や塵を集めて岩を大きくするために使われている線を消していく作業だ。


 これが終われば、岩の大きさはそれ以上大きくならないので、単純にそれ以上被害が増えなくなるし、その後に大岩を少しずつ削って小さくするなどといった作業にもつなげられる。


 だが……。


「あっ……!」


 カヤ殿が線を消す順番を間違えたのか、手が滑ってしまったのか、一瞬、大岩の固定が解除され、上下に尖った形のその岩が少し傾いた。


「っ!!」


 すぐに消してしまった線を復活させて、その傾きは止まったが、先ほどの振動で表面の岩が少しだけ剥がれてしまったようで、街にいくつかの瓦礫が散らばってしまった。


「総員! 防御魔法発動!!」


「「【街の防壁(シティ・ウォール)】!」」


「カイ! 行ける?」


「任せて!」


 だが、こういった事故を想定して、街中に防御魔法が使える人員と、強力な攻撃手段を持った人員を配置しているのだ。


 街の各地では、住民たちが発動した集団防御魔法によって、すぐにいくつもの大きな魔法障壁が展開される。

 そして、その防御魔法でも防ぐのが難しそうな、落下物の中でも比較的大きな岩に対しては、地上で待機している迎撃部隊が魔力を乗せた攻撃で弾き、瓦礫をまるごと街の外に吹き飛ばすか、防御魔法で耐えられる大きさに砕くかを実行する作戦だ。


「うぉぉおおおりゃぁああああ!!」


 カイ殿のその攻撃は、その大きな岩の塊を弾くと、それを誰もいない海へと飛ばす。


 —— パラパラパラ ——


 弾く時に砕けた岩の欠片が、多少街に降り注ぐことにはなったが、その程度であればこの街の住民が発動してくれている防御魔法が防いでくれる。


 元々ミスなしで魔法陣の解体作業を行えるとは思っていないし、事前に色々な対応策を作戦を組んでいるので、カヤ殿が多少ミスしたところで作戦には何の影響もないのだ。


「ご、ごめんなさい……」


 だが、ミスをしてしまった本人は、全く気にしないというわけにもいかないのだろう……カヤ殿は少し表情を沈めて、自分に謝ってくる。


「いや、謝る必要などない。自分がその作業を担当したら、もっと大きな岩を頻繁に落としているだろうし、元はと言えば自分がこんな魔法を発動したのが原因だ」


「は、はい……」


 カヤ殿はまだ納得していないようだったが、自分がそう反論した通り、この、一つ間違えただけで大きな影響を生んでしまう繊細な作業をこなせるのは、世界中を探してもカヤ殿しかありえないと思っている。


 まぁ、小さな瓦礫を頻繁に落としてもいいなら、自分や教皇様、他国の魔法が得意な人たちにも可能だと思うが、街で待機している迎撃部隊の負担や、街にあたえてしまう被害を最小限に抑えるのであれば、セイフティ無しで魔法が行使できてしまうほどの繊細な技術を持った彼女に敵う人はいないだろう。


「では、続けよう」


「はいっ」


 自分は彼女の背中を押すようにして、この爆弾解除ゲームのような作業を再開させた。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】

【世界征服を目論む者】

【魔王と呼ばれし者】

【人の道を外れし者】

【民衆を脅かす者】

【人とみなされぬ者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,680〉〈木×20〉〈薪×815〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,340〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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