第二百六話 マギュエ決勝で検証 その二
「【岩の棘】」
「【石の弾丸】」
引き続きマギュエの最終決戦。
自分は教皇様が次々に放ってくる大きな魔法を避けながら、小さな魔法を返していく。
第一試合でジェイラス殿下が地面から岩が突き出す魔法を飛び上がって避けたせいで次弾の上空から氷柱が降ってくる魔法に対応しにくくなるという状況に陥っていたが、第三試合でアクセル殿が見せてくれたように、身体強化などのバフをかけていれば、こういった避けるのが難しい魔法も横に回避することだってできる。
「【氷柱の雨】」
「【水の弾丸】」
そして足が地面に近ければ、そのまま続けて横にステップすることも、方向転換することも、逆方向へ走って逃げることもできるので、何度も回避を迫られる場面では、できるだけジャンプでの回避をしない方が避け続けやすいのだ。
某さまざまなキャラクターが大乱闘する対戦ゲームも、半ジャンプなどという出来るだけ滞空時間を短くする技術が有効なくらいだ……やはり様々な状況に対応できる選択肢を減らさないためには、出来るだけ地面に近い位置で戦い続けた方がいいのだろう。
まぁ、その戦い方は相手もよく分かっているようで、こちらが放つ魔法も全て避けられているのだが。
それも、横に避けるそれどころか、こちらが行使している魔法が当たり判定も小さい初級の単発魔法ということもあって、あちら側は軽く首を傾げたり身体をひねったりするだけで簡単に避ける上に、その余裕を活用して大きな魔法を行使している。
……うむ、予想通りに動いてくれて助かるな。
観客から見たら、もしかすると、自分が手も足も出せていないような状況に見えるかもしれないが、それは誤解だ。
なにしろ、自分はこれらの魔法を、相手に当てるためではなく、その後ろの魔法障壁に当てるために放っているのだから。
魔法障壁は、石という無機物を通さない。OK。
魔法障壁は、水という液体も通さない。OK。
自分は教皇様の攻撃を避けながら、着々と検証項目を確認していき、その結果をメモ画面へと記入していく。
やはり魔法闘技場の試合ステージを囲うように展開されている魔法障壁も、牢獄の中で検証した船内の魔法障壁と同じ性能のようで、それが攻撃とみなされればどのようなものも通さない仕様のようだ。
ふむ、では同じように、これも攻撃とみなされるだろうか……。
自分は一度メモ画面を閉じて、教皇様に向き直り、片手を前に突き出す。
教皇様は自分が何かしようとしていることを察して、警戒し、攻撃を中止して身構えたようだが、安心して欲しい……その手のひらは教皇様ではなく、地面に向いている。
「水を」
それは魔法の発動句でも無ければ、第一試合でカヤ殿が使っていた無詠唱魔法の呼び声でもない。
だが……そこに、水は現れた。
しかも……大量に。
ドバァーっと、滝のような勢いで手のひらから溢れ続ける水は、あっという間に闘技場のステージを浸水させ、その水位は見る見るうちに足首、膝へと上がっていった。
「な……魔力を全く感じないのに、水が現れているだと……!? しかもこの量……魔法で大気中の水分を集めたくらいではどうにもならんぞ……いったいどうやって……」
その光景に、流石の教皇様も驚いているようで、こちらへの警戒を継続しながら、闘技場のあちらこちらをキョロキョロと見回している。
おそらく、ステージ上のどこか、船の甲板を突き破るように穴が開いていて、その穴を通して海などから水を汲んでいるのではないかと考えたのだろうが、甘いな……。
岩でできたステージには簡単に穴が開くが、その下にある甲板にまで穴をあけようとしてもマギの目による魔法障壁で防がれることなど、とっくに検証済みだ。
これはもっと単純な方法。どんな魔法の発動も阻止しようとするマギにも、魔法と感知されず、阻止されなかった、亜空間倉庫から水を取り出しているだけである。
そして、これと似た内容は牢獄の中でも検証済み……。
あの時に出現させたのは水ではないが、亜空間倉庫からものを取り出すこと自体は魔法とも攻撃とも判定されないことは分かっている。
そして、その取り出した物質を攻撃禁止対象……ここでいう観客席に向けて、ある程度の勢いでぶつけた場合、それは攻撃と判定されて止まるということも分かっているのだ。
……つまり。
「っ……! 貴様! 私を窒息死させるつもりか!」
水位が腰まで到達したところで、教皇様はようやく事の異常さに気が付いたらしい。
そう……この大量の水による物理的な圧力は観客席への攻撃と判定されて、それなりに広いとは言っても野球が出来るほどではない広さを覆う魔法障壁から外に漏れだすことは無い……つまり、このステージ内に水が溜まり続けるのだ。
そしてその脅威は、地味に、しかし確実に、ステージ内の選手を襲う。
マギの目による防御機能で物理ダメージは無いが、人が命を落とす原因となるのは外から影響を『受ける』ことによるものだけではない。外から影響を『受けられなくなる』こともまた、命に関わることがある。
実際、牢屋の中で大量の土を出し続けた時、全方位から土に圧迫されるという圧力自体は魔法障壁によって防がれたが、マギの目がその土の壁による副次効果で下がっていく酸素濃度をどうにかしてくれることは無く、時間の経過とともに普通に息が苦しくなった。
今回は別の検証も試してみたかったので土ではなく水にしてみたが、残念ながら危険度はこちらの方が上だ……。
土も水も、この旅の途中で大雨による洪水を防いだ時に大量に手に入れているので、どちらを使ってもこの闘技場を満たすことは出来るだろうが、土で満たす検証は既に牢屋でやったからな、自分がここで水を選ばない理由は無い。
さて、あらかじめどんな検証を行うかが分かっている自分は、その対策もとれるので生存する可能性があるが、果たして、教皇様はこの危機的状況に対してどう出るだろうか……。
▼スキル一覧
【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。
【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる
【全強化】:あらゆる能力が上昇する
【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える
【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える
【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる
【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る
【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる
【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる
【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる
【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る
【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る
【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る
【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる
【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる
【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる
【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる
【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる
【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る
▼称号一覧
【連打を極めし者】
【全てを試みる者】
【世界の理を探究する者】
【動かざる者】
【躊躇いの無い者】
【非道なる者】
【常軌を逸した者】
【仲間を陥れる者】
【仲間を欺く者】
【森林を破壊する者】
【生物を恐怖させる者】
【種の根絶を目論む者】
【悪に味方する者】
【同族を変異させる者】
【覇者】
【権威を振りかざす者】
【禁断の領域に踏み入れし者】
【自然に逆らいし者】
【奪いし者】
【獣を操る者】
【世界征服を目論む者】
【魔王と呼ばれし者】
【人の道を外れし者】
【民衆を脅かす者】
▼アイテム一覧
〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,680〉〈木×20〉〈薪×815〉〈布×89〉
〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,340〉
〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×500〉
〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉
〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉
〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉
〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉
〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉
〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉
〈音信のイヤリング×1〉
〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×100,000〉
〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉
▼ 商業ギルドからの借金
オース名義:金貨2枚
グリィ名義:金貨2枚