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第二百五話 マギュエ決勝で検証 その一

 

「決勝……魔王オース対、マルカント教皇……始めっ!」


 試合開始前に教皇様と少し問答をした後、彼と共に進行役のシェスリア殿に準備が完了している旨を伝えると、彼女はひとつ頷いてから試合開始を告げた。


 オースと言うのは冒険者ギルドへの登録名で、この世界での本当の肩書はグラヴィーナ帝国の第三王子、オルスヴィーンだったと思うのだが……魔王オースというのは誰がどのように決めた呼び名なのだろうか……。


「【上級強化(ハイ・ブースト)】」


「【上級強化(ハイ・ブースト)】」


 そんな風に呼び名の仕様に関して少々の疑問を抱きながらも、開始直後の行動は予想通り互い揃って上級身体強化魔法の行使。


 物理的な攻撃によって直接的なダメージが入らないとは言っても、相手より動きが鈍いことによって良いことなんて無いからな……もしそれが純粋な魔法使いであったとしても、相手と至近距離で戦う以上は身体能力の向上は必須だろう。


 それに……。


 —— ガキンッ ——


 前の試合でもそうだったが、教皇様はそれがダメージとして計算されようと計算されまいと、こうして黄金杖を振り回して攻撃してくるようだ。


 今回の試合でもそうだろうと予想していたから、亜空間倉庫から瞬時に木刀を出現させてその攻撃を防ぐことが出来たが、事前にアクセル殿の試合を見ていなければ、一応魔法を使った決闘だと銘打っているマギュエで、試合開始後にいきなり縮地で急接近して黄金杖を振り下ろしてくるなんていう行動に対応できたか怪しい。


 直接的なダメージにはならなくても衝撃は届くので、その攻撃によって吹き飛んだりフラついたりすれば、それ自体が次の攻撃を防ぎにくくする隙となる。


 マギュエと言う決闘が一定の範囲内で戦う競技となっている以上、その試合で好成績を収めたいのであれば、ある程度の近接戦闘能力は前提条件だったのだ。


「ほう……反応速度も身体能力もなかなかなものだ」


「うむ、暇があれば毎日鍛練しているからな」


 この世界、ステータス画面などでも経験値までは可視化されない仕様らしいので、今も続けているジョギングや素振りなどの日課が、果たして意味のあるものになっているのか判別がつかない。

 だが、いつかまた【鑑定】スキルの能力が強化されて見れるようになるかもしれないことを考えて、今もずっとスキル経験値を溜め続けているのだ。


 もしかしたら、どのスキル経験値も既にカンストしていて、今も続けている日課は、既に意味のない鍛練になっているかもしれないが、それほど多くの時間が取られているわけでも無いし、カンストしていることが確認出来てから止めればいいだろう。


「【追い風(テイルウィンド)】」「【追い風(テイルウィンド)】」


「【爆発(エクスプロージョン)】」「【爆発(エクスプロージョン)】」


 次手、またしても同じ思考だったらしい。


 つばぜり合いの状態から、素早さを上げる風属性身体強化魔法を使ってから、相手を弾くようにして距離を取った後、すかさず互いに撃ち放った炎の球が、ステージ中央でぶつかり、大きな爆発を生んだ。


 お互い、まだ相手の実力を測り切れていないので、様子を見ながら牽制している状態……。

 予想外の出来事にもとっさに対応できるよう、補助魔法が相手より劣ることの無いようにだけ気を付けながら、なるべく隙が大きくなるような攻撃も撃たない。


 こういった試合で、相手が手の内が読めない状態……初めて戦う相手だった場合の最適解を選び続けていたら、誰でも似たような状況になるのかもしれないな。


 ……でもまぁ、普通の試合内容に関しては他の仲間がだいたい検証してくれていたし、通常戦闘に関する検証はこのくらいでいいか。


 自分は、手を、教皇様に……。

 いや、そう見せかけて、その背後……ソメール教国側の観客席に向ける……。


「【爆発(エクスプロージョン)】」


 その発動句と共に高速で放たれた炎の球は、一瞬の後に、魔法障壁で身を守ろうとしていた教皇様のすぐ横を通り抜けて、ソメール教国側の観客席付近にて、轟音を伴った爆発を引き起こす。


 もちろん、あらかじめ分かっていたように、その火球が観客席に届くことは無く、その手前でマギの目による魔法障壁に阻まれたが、観客たちから見れば、目の前で爆発が引き起こされたその光景はなかなかスリリングだったかもしれない。


「キ……キャー!!」


「ま、魔王が……魔王が俺たちの命を狙っているぞ!」


「あ……あああ、あいつには試合中だなんて関係なかったんだ……に、逃げないと!」


「うわぁああ! だ、誰か助けてぇぇ!!」


 その証拠に、どうやらこの検証の安全性を理性的に判断できなかったらしい観客が一人、また一人と、叫び声を上げながら観客席を去って行ってしまった。


 うーむ、ここから着弾位置までのベクトルを計算すれば、その火球の軌道が観客席からわずかに上方へずれていることが分かると思うのだが……。


 自分は万が一に備えて、もし魔法障壁が発動しなかったとしても観客席に直撃することは無く、空の彼方へと飛んで行くような方向に向けて放ったのだが、それが理解できないとは、この世界の住人は空間把握かベクトルの計算が苦手なのだろうか……。


 まぁしかし、これで魔法闘技場の障壁が仕様通りきちんと発動するかどうかと、試合内容によって観客が応援以外のアクションを取るかどうかの検証項目が埋まったな。


 こういった闘技場での戦闘シーンでは、観客は一定の動きを繰り返すだけの背景として描かれることが一般的だと思うのだが、このゲームは相変わらずリソースを気にしないハイエンドな設計となっているようだ。


「……外道め」


 そうして先ほどの検証結果を分析していると、目の前に張っていた意味のない魔法障壁を解除した教皇様が、そんな言葉を漏らす。


 《称号【人の道を外れし者】を獲得しました》

 《称号【民衆を脅かす者】を獲得しました》


 ふむ……魔王と呼ばれたり、外道と呼ばれたり、忙しいことだ。


 自分はいつも通り不名誉な称号しか獲得されないシステムに対して不満を抱きながら、次の検証項目をどれにしようか選び始めた。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】

【世界征服を目論む者】

【魔王と呼ばれし者】

【人の道を外れし者】 NEW

【民衆を脅かす者】 NEW


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,680〉〈木×20〉〈薪×815〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,340〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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