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第百九十六話 マギュエの開催で検証 その一

 

 ソメール教国、箱舟、中央甲板。選手控室。

 皇妃様との謁見からさらに数日が立ち、今日はついにマギュエが開催される当日。


 あれからも滞りなく停戦処理は進んでいき、各国は少しずつ落ち着きを取り戻してきている。

 ソメール教国に勇者として招かれ、他国から隔離されていた人々も、全員無事に解放され、迷惑料も含む帰路の馬車代も渡されているようなので、まっすぐ家に帰った人たちはもう今頃は元の生活に戻っていることだろう。


 あとは、現段階ではまだ一時的な停戦協定を結んでいる状態にすぎないので、これから講和条約を結ぶことになると思うのだが、本来であれば講和は戦争の当事国に対して中立とみなされる地域でその処理が進められるところ、今回の場合は三か国あるうちの三か国とも当事者なので、この場合はどのような流れになるのだろうか。


 まぁ、そもそも現代とは異なる世界観なので、この辺りの進行も現実世界とは異なるかもしれないが、どちらにしても、完全な講和が締結にはまだ時間がかかる……。


 ……と思うのだが。


「やっぱりお前が関わっていたか」


「うーむ……何故ジェラード王国の第三王子がこんなところに?」


 そんなまだ各国の仲が不安定なところ……今日のマギュエに参加する自分たちが控室として宛がわれた部屋に、既に見知った顔である、ジェラード王国の第三王子、ヴェルンヘル殿下が訪れた。


「いや、なんつーか、それはこっちのセリフでもあるんだが……まぁいい。とりあえずこっちは何か、うちの国がこの国の教皇にマギュエの観戦に招待されたらしくてな? 罠の可能性もあるから親父や兄貴は行きたくないっつーんだけど、これから講和を結ぶのに招待を完全に蹴ることも出来ないとかで……」


「ヴェル殿に白羽の矢が立ったと」


「まぁ、そういうことだな」


 それからヴェルンヘル殿の詳しい話を聞いてみると、両国で互いの使者を通して停戦協定を結んだあと、今回の件に関する申し開きの書簡が届き、そこには勇者を探して集めていた理由が書かれていたらしい。


 かいつまんで説明してもらったが、その内容は皇妃様から聞いた内容の前半に当たる部分、魔王との戦いを見越して、戦争を知らない人類に戦争の経験を積ませるためだったというもののようだ。


 そんな理由があったとしても、相手からしては迷惑な話だろうが、まったく理由が分からないよりはいいだろう。


「ふむ……そこからどうしてヴェル殿がこちらに来ることに?」


「ああ、その書簡には続きがあってな……」


 そういって付け足された彼の話を要約すると……。


 勇者を集めていたら魔王だかその手先が釣れたから喧嘩を売った。

 ソメール教国が聖なる決闘であるマギュエで倒してやるから見に来い。


 ……とのことだ。


 まぁ、実際にはもっとかしこまった、古の伝説と神託の内容を照らし合わせると完全には否定できないような書かれ方がされていて、ここで負けたとしても魔王側の実力が測れるだろうからその情報を持ち帰って戦いに備えろだとか、もっともらしいことも書かれていたので、ジェラード王国の国王はその点でも少々悩んだらしい。


 その魔王だとか手先だとか言われているのが自分だと知っている身内からすると、この戦いが大した意味のないイベント戦だと分かると思うのだが、そこまで事情を知らない他国からすると確かに判断材料に困るかもしれないな。


 結果、それもこれも全てが教皇の御乱心による出来事で、今ソメール教国に訪れること自体が危ないことなのか、彼の言っている内容は全て本当で、魔族を率いる魔王とやらの戦いに本当に備えた方が良いのか分からず、とりあえず、失ってもそれほど痛手ではない第三王子が送られてくることとなった、と。


「酷い話だろ?」


「うむ、そうだな……ちなみに、その魔王と呼ばれているのが自分なのだが……」


「まぁ、そんな気がしたから控室に顔を出してみたんだが……もう家に帰っていいか?」


 ヴェルンヘル殿はそういうと、大きくため息をついた。


「まぁ、せっかく来たのだ。休暇だと思って見ていくといい」


 自分はそんな彼の肩をポンと叩いて、滞在を促す。


 彼は無言で睨みつけるという返答で抗議の意を示してきたが、聞くところによるとヴェルンヘル殿はグリィ殿やヴィーコ殿と幼馴染らしいしので、彼女たちと一緒に戦いを観戦していく分には暇はしないだろう。

 そんな風に思った自分が仲間のいる席を教えると、肩を落とし、もう一度大きな溜息を吐いてから、こちらに背を向け、手を振りながら去っていった……。


 ジェラード王国がソメール教国を信用していないということの表れなのか、チラリと見えた扉の先には、彼が部屋から出てくるのを待っていたらしい見覚えのある騎士たちの姿もあったので、おそらくヴェルンヘル殿が率いる第三騎士団は総出でこの国に訪れているのだと思われる。

 ? ……だとしたら彼は、部下がいるのにも関わらず、魔王がいると言われている控室に一人で入ってきたのだろうか。

 ジェラード王国で共に過ごしている時も思っていたが、王子らしからぬ行動を取るお方だな。


「まぁ、王子らしくともそうでなくとも、強いキャラクターが増えるというのは、いざと言う時に頼れる力が増えるということになるし、正直助かるな」


 自分は、彼が出て行った扉を見ながら、改めてそう呟く。


 マップを確認すると、どうやらヴェルンヘル殿と同じ理由でグラヴィーナ帝国からも第二王子のヴォル兄が第二騎士団を引き連れて訪れているようだし、このイベント戦はなかなか賑やかになりそうだ。


 ……これは自分にとっても好都合。


 検証項目を洗い出してみたが、今回の検証は、かなり大規模になりそうだからな。

 実は、消防や救急の心得があるキャラクターは多い方が心強いのだ。


 —— コンコン ——


 と、そんなことを考えていると、ノックの後に、今回の検証チームメイトが入ってくる。


「いやー、ビックリしたよオース君。カヤ君と一緒に会場を見に行って帰ってきたら、控室の扉の前で強面の男たちに止められて……」


「さっき出て行かれたのは、ヴェルンヘル殿下ですよね? どうして殿下がこちらへ?」


「うむ、実は……」


 ヴェルンヘル殿と入れ違いで入ってきたのは、今回のイベント戦、マギュエで、こちら側のチームとして一緒に参加する、アクセル殿と、カヤ殿。


 マギュエは本来、航海時代にこの箱舟で暮らしていた人々が、仕事や食料の分配などで意見の食い違った種族同士で、どちら側の意見を通すか決める時に使われていた競技。

 なので、歴史的に見ても、基本的にはチーム戦、三対三以上で行われるのが伝統らしい。


 今回もその伝統に則り、試合は三対三のチーム戦で行われるのだが、こちら側の戦力は、魔王ということになっている自分をリーダーとして、魔王に操られているということになっている、アクセル殿と、カヤ殿。

 あちら側は、この戦いの発起人である教皇様ご自身がリーダーを務め、その仲間には、まだ会ったことのない、ソメール教国、第一王子アルドヘルム殿下と、第二王子ジェイラス殿下が参加するようだ。


 アクセル殿によると、教皇様はもちろん、アクセル殿の兄にあたる第一王子と第二王子もかなりの魔法の使い手で、三人とも全属性の魔法を自在に操るらしい。


「オース君、試合の当日になってしまったが、やはり今からでも、試合を中止して本当のことを話した方がいいんじゃないか?」


「そうですよっ、わたしはオースさんに操られていませんし、オースさんは……確かに魔王と呼ばれるにふさわしいくらい滅茶苦茶な人ですけど……魔王ではありませんっ」


 ふむ……? ふさわしくはあるのか?


「いや、アクセル殿も、カヤ殿も、待ってほしい。多少認識の相違はあるかもしれないが、今回の戦いのためにせっかくここまで準備を進めてきたのだ。打ち明けるにしてもイベント戦の検証が終わってからでもいいだろう」


「うーん、それはそうかもしれないが……。どちらにしても、僕がマギュエに参加するのは今でも場違いだと思っている。だから、個人的に今すぐにでも辞退したいな……」


「それはわたしもです……」


「いや、カヤ君はまだ色々な魔法が使えるからいいじゃないか。でも僕は元々強化魔法しか使えなかった。オース君に新しい技を教えてもらったけど、戦いにすらなるかどうか怪しいところだ」


「魔法の腕なんか関係ありませんっ! 参加者をよく見てくださいっ! わたし以外、全員王族ですよっ! その中にひとりポツンといる貧乏男爵家の末娘……! 場違い感で今にも泣きそうです……」


 うーむ、相手チームの様子は分からないが、こちらのチームの士気は著しく低いな……。

 だが、これは三対三の戦いなのだ、イベント戦の参加資格を得るためにも、我慢してもらうしかない。


 それに、自分としては、このメンバーが最適解だと思っている。


 カヤ殿は言うまでもなく、純粋な魔法の腕で言えば自分よりも上なので、この魔法しか使えない戦いにおいて、彼女を外すという選択肢はない。

 血筋的なところも影響しているので、魔力量は確かに参加者の中では一番少ないかもしれないが、それでも、日々の鍛錬のおかげで、貴族の水準ではかなり優秀な方だ。


 そして、アクセル殿に関しては、確かに、彼自身も言っている通り、強化魔法しか使えない脳筋タンクかもしれない……。

 だが、王族ということもあって、一緒にスライム狩りなどをして修行をした現在、カヤ殿よりも魔力量はかなり上だし、彼の鉄壁の守りは魔法の弾幕でも防げるのだ。

 相手チームにいる彼の兄君とは訓練で何度も戦っているとのことで、対戦相手の立ち回りなどは分かっているだろうし……おそらく、相手の攻撃を防ぐことに関しては、彼の右に出る者はいないだろう。


「二人とも、大丈夫である。自分の作戦通り戦えば、必ず勝てる」


 カヤ殿に関しては、魔法を構築し始めてから発動するまでにかかる時間が少々心配で、アクセル殿に関しては、魔法での攻撃手段が皆無だったことが心配だったが、その弱点に対する秘策は既に獲得済みなので、きっと問題ない。

 それに、このマギュエのルール的には、二人が瞬殺されてしまっても、自分が生き残っている限り逆転のチャンスはあるのだ。


 あとは実際に戦って、勝利をつかみ取るだけ……。

 だから……。


「ふむ……なるほど……よし」


「とりあえず二人とも、ドーピングしよう」


 自分は、アーリー殿にあらかじめ作っておいてもらったドーピングポーションを二人に差し出した。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】

【世界征服を目論む者】

【魔王と呼ばれし者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,680〉〈木×20〉〈薪×815〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,340〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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