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第百九十四話 皇妃様との謁見で検証 その二


「母上。グラヴィーナ帝国第三王子、オルスヴィーン殿下と、ジェラード王国公爵家、カルボーニ卿をお連れいたしました」


 アクセル殿に続いてメインブリッジに入った自分は、彼の数歩後ろで、ヴィーコ殿と一緒に片膝をつき頭を下げる体勢を取って、その紹介を聞いた。


 頭を下げる前に見えたアクセル殿の母君、ソメール教国の皇妃様は、教皇様と違い、あまり威厳を感じられず、失礼ながら、服が多少派手な女性という印象を受けてしまった。


 その服も、この国でよく見かけるように白を基調とした色合いであるものの、差し色が多く、形状に関しても、アクセル殿の妹君が着ていたローブとは異なり、丈の長いAラインのドレスといった、ジェラード王国などでも貴族や王族が着そうなデザインだ。


 ローブもドレスも言い方が異なるだけで同じカテゴリの衣装ではあるのかもしれないが、日本人がローブと聞いて思い浮かべる形状に近いのは、アクセル殿の妹君が着ていた衣装。ドレスと聞いて思い浮かべる形状に近いのは、母君が着ている衣装だろう。


 街の中でも殆どの人が、ローブという言葉で思い浮かべるアカデミックドレスタイプの服装をしていたので、教都ではそれが主流なのだと思っていたのだが、国のお偉いさんがそれに当てはまらないということは、宗教的にその服でなければいけないという設定ではないのかもしれない。


それか、単純にゲーム内リソースの節約だな。


 街の住人が全員こんな凝った服を着ていたら、そのリソースの読み込みにも、物理演算にも負荷がかかるからな、プレイヤーに印象付けたい重要なキャラクター以外のポリゴン数などを節約するのはよくあることだ。


「よく来ましたね、顔を上げてください」


 と、そんな風にゲームリソースのことについて思考を巡らせていると、アクセル殿の母君から顔を上げる許可が出る。


 一拍置いて顔を上げた先にあった彼女の顔は、やはり教皇様にあった威圧感に似た威厳のようなものは感じられず、ただただ息子が連れてきた友人に向けてほほ笑む母親といった印象を受けた。


 このメインブリッジに玉座のようなものは無く、ただ相手がその場に立っているだけという状況も、そう言った印象を感じる要因になっているのかもしれない。


「初めまして……では無かったですね。改めましてこんにちは。アクセルの母、マルグレットです。気軽にマリーさんとでも呼んでくださいね」


「……」


 これは……外見の印象以上に気さくな人のようだ。


普通に考えて、いくら自分が王族だとしても、それほど親しくない皇妃様に向かって気安く愛称で呼べるはずが無いだろう。


 ただ、きっぱりと否定してしまうのも失礼に当たるだろうということで、隣を見ると、ヴィーコ殿は少々引きつった笑顔を返しながら、どう返答したものか答えを出しあぐねているようだ。


 ふむ……ヴィーコ殿の検証能力はまだまだだな。


「承知した、マリー殿。自分の事も気軽にオースくんとでも呼んで欲しい」


 ここで検証するべきは、第三の選択肢ではなく、第一の選択肢だろう。


一般的なプレイヤーが選択しない明らかな地雷と分かる選択肢を踏み抜き、その後のゲーム進行にどれほどの影響があるのか確認しておかなければ、一流のデバッガーは名乗れない。


その選択によって打ち首でゲームオーバーになるような展開が待っているかもしれないが、そうだとしたらゲーム側からそれとなく匂わせておかなければ、ユーザビリティの低いゲームになってしまうからな。


このゲームをプレイするユーザーが理不尽なストレスを感じないよう、デバッガーは危険そうな選択肢の先にどの程度の悪影響が出るのか見ておかなければならないのだ。


その回答に対して、皇妃様は少し驚いた表情を浮かべ、それ以上に隣にいるヴィーコ殿が驚愕の表情を浮かべているが、相手がそう呼んで欲しいといった呼び方をしただけなので、親切なゲームであればそこまで悪い展開にはならないだろう。


「あらあら、この間に続いて、今日も愛称で呼んでくれる人が増えるなんて、アクセルのお友達は良い人ばかりですね」


「ふむ? この間……?」


「ええ、数日前にシェスリアと一緒に遊びにいらした……あら、遊びにいらしたわけじゃなかったかしら……あなた達のお友達のグリィちゃんやアーリーちゃんもそう呼んでくれたわ。殆どの人がそうであるように、カヤちゃんはまだ呼んでくれませんけど」


 察するに、教皇様と対峙した日、彼女たちが別動隊としてアクセル殿の妹君のシェスリア殿と共に皇妃様を救出へ向かった時の出来事をいっているのだろう。


 確かに、グリィ殿やアーリー殿なら、相手の柔らかな雰囲気も相まって、普通に対応しそうだな……。


 しかし、うーむ……既にこの選択肢が検証済みだったとは……。

 それならば第二の選択肢、きっぱりと断るという選択肢の方も検証してみたかったな。


 これは情報共有の不足からくる連係ミスだな。二人にはあとでしっかりと報連相がいかに大切かを教えておこう。


 隣を見ると、おそらくヴィーコ殿としてもこの事態は受け入れがたいものだったのだろう、情報共有の不足を嘆いているのか、拳をワナワナと震わせている。


「そちらの……カルボーニ卿? だったかしら? あなたは、私のことを愛称で呼んでくださるのかしら?」


「え、あ……いえ、その……なんといいますか、まだそれほど交流があるわけではありませんし……」


 ふむ……なるほど。


「マリー殿……。ヴィーコ殿は、親しくもなく、今後とも親しくなる予定もない貴女に対して、一生、愛称で呼ぶつもりなど無いと言っているようです」


 そういえば、まだヴィーコ殿は選択肢を選んでいなかったな。

 せっかくならば、まだ未検証である第二の選択肢を選んでもらおう。


「そうなのですか? ごめんなさい、そんなに嫌われているとは思わずに、はしゃいでしまって……」


「え? ちょっと、いや、それは……くっ……おい貴様! 余計なことを!」


「と……このように、ジェラード王国からここまでの旅で苦楽を共にしてきた、同じ学校に通う友人の自分にさえ、未だに心を許さずに、“貴様“と呼ぶような人物なのです」


「まぁ、お友達に対しても? それはなんとも悲しいですわね……」


「おい! ボクがいつ貴様と友人になった!!」


「同じ学校に通いここまで共に旅をする間柄だというのに、お友達ではないのですか?」


「いや、あの、皇妃様! これはその、何と言いますか……」


「あぁ……ヴィーコ殿は貴女のことを“皇妃様”と呼ぶことに決めてしまわれたようですね」


「……そう呼ばれることには慣れていると思っていましたが、今後一生進展することもないと真正面から言われてしまうと、流石に悲しいです……しくしく」


「あ、いえ、それはボクが言ったわけでは無く……」


「心中お察しする……自分もそうだからな」


「貴様は話をややこしくするなぁあああああ!!」


「くは、はっはっは、やめてくれオース君、ヴィーコ君、いくら相手が母上だとしても、謁見の最中にこんな可笑しな会話になったのは初めてだぞ、はっはっは」


 そうして、箱舟のメインブリッジではいつの間にか……泣き真似をする皇妃様と、彼女に寄り添う自分と、そんな自分に激昂するヴィーコ殿と、そんな光景を見て耐えきれずに笑い出すアクセル殿という構図が出来上がっていた。


 結局どんな選択肢を選んでも身構えていたような展開にはならなそうな雰囲気だが、検証結果としてそれが分かっただけでも良しとしよう。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】

【世界征服を目論む者】

【魔王と呼ばれし者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,680〉〈木×20〉〈薪×815〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,960日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,340〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×500〉〈獣生肉(上)×480〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×19,990〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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