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第百八十話 馬車の迎えで検証

 

「殿下、お待ちしておりました。箱舟までお送りいたしますので、どうぞこちらへ」


 自分たちが門の待機所で飲み物を飲みながら待っていると、どうやら迎えの馬車がついたようで、シンプルな祭服といった見た目の白いローブを身に纏った老人が、同じような服を着た部下を連れて部屋に入ってくる。


 ちなみに、カレーが飲み物に分類されるのかの検証結果としては、そもそもこの国にもカレーはまだ存在しなかったという結果に終わった。

 自分がカレーを作る際に使っている殆どのスパイスがこの国から輸出されているので、ここならば存在すると思っていたのだが……思い返してみれば、そのどれもが香辛料ではなく薬の材料として売られていたので、料理にカレーの香辛料が使われること自体が少ないのだろう。


 まぁ、それはともかく、どうやらこの国で、現在は王宮のような役割を果たしているらしい箱舟からやってきた人物は、この教都の中心にある大聖堂で最高司祭という役職についている、この国で王族に次いで偉い人物らしい。


 そんなに偉い人が直々に迎えに来るとは、流石はアクセル殿だなと思いながら迎えの人たちの後ろをついて行くと、待機所の外には、その感想をさらに強めるように、豪華で煌びやかな馬車が数台並んでいたので、実際、思っている以上に偉いのかもしれない。


「ささ、殿下はこちらへ、お連れの皆様はこちら二台の馬車へ分かれてお乗りください」


 数台必要だったのは、見たところ、どうやらこれらの馬車はどれも四人乗りのようで、合計八人いるパーティーメンバー全員を運ぶとなると、とてもではないが一台には乗り切れないからということのようだというのは分かった。


 だが、八人であれば、四人、四人で、綺麗に二台に分けられる……ヴィーコ殿と、アーリー殿やロシー殿、カイ殿たちは分けたいところであるが、アクセル殿が一人で別の馬車に乗る必要はあるのだろうか?


「ふむ? 四人乗りの馬車なら、別にアクセル殿も含めて二台で足りるのではないか?」


 そう思った自分は、素直に、疑問に思ったその内容を、偉い人だという割には腰の低い対応をしてくる最高司祭殿に聞いてみたのだが……。


「いえ、誠に申し訳ないのですが、殿下には、まぁ形式上のものではあるのですが、一応、護衛の者と同席してもらうことになっておりまして……何より、殿下と皆さまは馬車の行き先が異なりますから」


 ……とのことだ。


 護衛よりも王族の方が強かったとしても、形式上、王族の馬車には護衛の人が一緒に乗っていた方がいいというのは、自分もグラヴィーナ帝国で王族として過ごしていた時に経験した記憶があったので、確かにそんなものだったなと思い出したのだが……。


 ……アクセル殿と自分たちの行き先が違う?


「え? 私たちとアクセルさんの行き先が違うってどういうことっすか? てっきりこのまま皆でお城? 箱舟? に行くのかと思ってたんすけど」


 どうやら珍しくグリィ殿も自分と同じ疑問に突き当たったらしく、自分が訪ねる前にその質問を最高司祭殿に投げかけてくれた。


「いえ、その点も大変申し訳ないのですが、教皇様にもご予定がございますし、皆様が面会されるために必要な事前の手続きなどもございますゆえ、皆様にはこちらで手配いたしました、教都で一番の高級宿にて、今しばらくお待ちいただければと思います」


 なるほど、グラヴィーナ帝国では王族は自分の家族という設定だったので、そういった面倒な手続きが皆無だったが、確かに、ジェラード王国で国王と面会するときは何やら待ち時間があったような記憶がある。


「ふむ、そういった仕様ならば仕方が無いな、暫く待機していることにしよう……アクセル殿はついでに家族水入らずの時間でも過ごしてくるといい」


「そうだな、オース君、ありがとう……では、先に行って父上に状況を説明してくる。父上の予定によっては少し待たせてしまうかもしれないが、それまでは教都の観光でもして待っていてくれ」


「はぁ……教国の王族が食べている料理、早く食べてみたかったんすけどね……」


 なるほど、グリィ殿が珍しく一緒について行けないことに対して疑問を投げかけていたのは、それが理由だったか……。


「はっはっは、グリィ君、楽しみは後にとっておいた方が、より一層楽しめるという物だ……それに、教都の宿屋やレストランで出される料理も中々なものだと聞く。本命の前にそれらを楽しんでおくといい」


「そうっすね、了解っす!」


 うむ、何だかんだアクセル殿はグリィ殿に続いて三人目のパーティーメンバーだからな、彼女の性格をよく理解しているようだ。

 グリィ殿はアクセル殿の言葉で教都中の料理を制覇する決意をみなぎらせると、他のみんなと一緒に馬車へ乗り込む。


 馬車の分かれ方は、アクセル殿が最高司祭殿や護衛の人たちと一緒に乗り込む馬車で一台、その他ソメール教国のお付きの人などが乗り込む馬車で一台、自分とグリィ殿とヴィーコ殿の三人が乗りこむ馬車で一台、他の四人が乗り込む馬車で一台の、合計四台。


 それ以外に、馬に乗って馬車の周りを警護する護衛の人も何人かいるようで、四台の馬車の列を、馬に乗った騎士が取り囲んで進むという、それなりの大所帯で教都の街並を移動していくこととなった。


「手前の領で食べたご飯も美味しかったっすけど、領都のご飯もどんなものがあるのか楽しみっすね!」


「まぁ、確かにこの国の料理も悪くは無いが、流石にこうも香辛料だらけで味の濃い料理が続くと、王国の料理が恋しくなってくるな」


「あー、ヴィーコの家の料理人さんが作る料理も美味しいっすからねー……じゅる……あ、思い出したらヨダレが……」


「ちょっ、おい、グリィ! 淑女がはしたないぞ!」


「あ……ヴィーコ、今、グリィって呼んでくれたっすね?」


「ばっ、それは、たまたまだ! ほら、そんなことより、ハンカチをやるからさっさとヨダレを拭け!」


「えー、昔みたいにヴィーコがゴシゴシ吹いてくれたりしないっすか?」


「なっ……! あ、甘えるな! 成人女性がそんなことを言うんじゃない! はっ……まさか、オース貴様! 今までグリィ嬢の頭がお子様なのをいいことに、こんな破廉恥なことを強要していたわけではないだろうな!!」


「いや、そんな強要はしていないのだが……」


 ふむ、ヴィーコ殿を他のメンバーと分けたとたんに、馬車での会話が賑やかになったな……。


 やはり、道中で取るべき行動としては、問題に気づいた時点で二台目の馬車を用意するべきだったようだ。

 まぁ、二周目以降でまた同じルートを通ることがあったら、その時は今回の失敗を活かして馬車は事前に二台用意して進めるとしよう。


 分かっていたことだが、自分はまだ、人の心というものを感じ取る力が不足しているようであるな……それがたとえゲームの中のキャラクター、シナリオライターが描いた心であっても。


 アクセル殿やグリィ殿、ヴィーコ殿やカヤ殿が持っている【社交術】というそれっぽい名前のスキルがあれば、もしかすると、その場でうまく他者との交流を乗り切ることができる選択肢のようなものが視界に表示されるということもあるかもしれないし、やはりここは早めのそのスキルを獲得してみたいものだな。


 ……だが、今は、それよりも重要なことがある。


「オースさん、突然窓の外を警戒してどうしたっすか?」


「っ! まさか、王族の馬車を狙った敵襲か!?」


 自分が突然、馬車の窓から外の状況をキョロキョロと確認し始めたので、グリィ殿とヴィーコ殿が反応し、ヴィーコ殿に至っては細剣の柄に手をかけて、一緒に警戒を始めてくれるが、残念ながら、そんな検証しがいのあるイベントが発生する様子は無い。


 こうして自分が様子をうかがっているのは、馬車の隊列の外側から襲い来る人影がいないかではなく、この隊列の配置がどうなっているかだ。


「……まさか、この隊列内に、第三王子派閥を敵視しているスパイが?」


 そして、そんな自分の視線を辿って、内部に危険人物がいるという想像に行きついたらしいヴィーコ殿が、ゴクリとつばを飲み込み、さらに警戒を強める……。


 流石のグリィ殿も、状況が呑み込めていないものの、茶化していい雰囲気ではなさそうなことだけは感じ取ったようで、とりあえず表情だけ真剣っぽい雰囲気を出して置くという選択肢を取ることにしたようだ。


 ……なるほど、確かにそんな状況になっていたら、検証したくてワクワクするのも仕方ないだろう。


 だが、残念ながらそれも違う……マップ画面で周囲に敵影が無いか確認しても、隊列内のメンバーの【鑑定】画面で所属などをしっかり調べても、どこもおかしなところがないので、きっとそんな面白そうなイベントは発生しない。


 では、なぜ、自分が隊列の人員を確認しているのか……それは……。


「ふむ、なるほど、よし」


 もちろん、本来想定されていなさそうな行動を検証すること。


「では、自分はこっそりアクセル殿についていくので、この場は二人に任せるのである」


 自分はそう言うと、ここでアクセル殿と別行動にさせられるというストーリー上の展開らしい流れに敢えて逆らう方向で、光学迷彩の知識を応用して開発した隠ぺい魔法で自身の姿を隠しつつ、アクセル殿の乗っている馬車へと飛び移った……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,710〉〈木×20〉〈薪×820〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,910日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,290〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×470〉〈獣生肉(上)×420〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈睡眠ポーション×11〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×20,000〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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