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第百七十四話 色材とファッションの街で検証 その三

 

「さて、じゃあ、観光も楽しんだところで、今の状況と、これからの行動を整理しようか」


【色彩豊かな都】デリベス領都、宿屋。


 この街で買った服を着て、この街の観光を一通り楽しんだ後、門の近くに二部屋でとっておいた宿屋へと戻り、いつものごとくみんなで男部屋の方へ集まると、アクセル殿を中心とした作戦会議が始まった。


「っていうか、観光を楽しんじゃった後に言うのもなんだけど、アタシたち、この国の軍にも追われてるんでしょ? 大丈夫なの?」


「そうだよなぁ、オースの兄ちゃんが、追手はしばらく来ないだろうって言ってた通り、今のところは本当に来てないみたいだけど」


「そうだね、昨日まで移動でバタバタしていて詳しく聞けなかったし、オース君、あの夜に何をしてきたのか教えてくれるかい?」


「うむ」


 ロシー殿とカイ殿の疑問に促されるように、作戦会議の最初の議題は、自分たちがソメール教国軍に戦いを止めるように脅迫して逃げた後、自分が夜に一人で抜け出して何をしてきたかという内容になったようだ。


 ざっくりとした概要としては、この街まで移動してくる道中でも皆に伝えたが、自分がその夜にやったことは、ソメール教国軍がこのまま戦いを続けるという選択をしにくくなる妨害工作である。


 まぁ、その中身は主に、施設内のアイテムの全回収、というだけなのだが、戦場において、補給物資が無くなるというのは戦線の維持に深刻なダメージとなるだろう。


 とは言っても、自分個人としては、その行為はオープンワールドゲームをプレイヤーとして楽しんでいる時もよくやっていた、ゲームプレイヤーの一行動でしかなく、回収可能なアイテムは、食料や武器・防具、ポーションなどだけでなく、食器から空き瓶などのゴミまで、すべて回収してみたいという好奇心からくる行動の一つだ。


 自分がプレイしていたゲームでは、MODの導入やコマンドの使用などをしていない状態では重量制限などがあり、対象の施設と、回収したアイテムを売ることが出来る雑貨屋などを何回か往復して、ようやく達成できるようなことが殆どだったが、このゲームでは容量が無限と思われる亜空間倉庫が最初から使える仕様となっているから楽だった。


 その他、一般的なオープンワールドゲームと異なった点として、多くのゲームではアイテムではなく、マップのオブジェクトとして設定されているであろう家具なども亜空間倉庫に回収可能だったので、自分が一通りの仕事を終えた後の砦は、性能があまり高くないノートPCでプレイするユーザーにも優しそうな、すっきりとしたマップになった。


 風などの影響をうけて靡くという物理エンジン的にも負荷がかかっていたであろう旗やタペストリーなどの布系から、全オブジェクトに対してきちんと影を表示させるというシェーダーが頑張りすぎていた松明や蠟燭などの明かり系まで、ありとあらゆるものを回収し、砦というマップオブジェクトしかないその場所は、なかなかの絶景だった。


 もちろん、アーリー殿に作ってもらっていた睡眠ポーションなどで、砦にいた領主や兵士たちを眠らせて、彼らが所有しているアイテムも、下着まで含めてすべて一度は回収している。


 自分で自身の身体を拭いたり着替えたりしている時にも薄々気づいていたが、他キャラクターの下着の下にも立派なモノが修正なしで視認できるということは、このゲームは最低でも日本で販売されるゲームではないのだろう。


 とりあえず、他人が使用した下着など持っていても扱いに困るので、回収作業が一通り終わって、検証のメモを残した後で、砦内を歩くだけでも必要であろう靴と、餓死しない程度の食料と一緒に、下着などもまとめて砦の中庭に山積みしておいた。


 そして、扱いに困ったものとしては、もう一つ……。


 ソメール教国軍に囚われていた、グラヴィーナ帝国軍の捕虜だ。


 人数はそれほど多くなかったが、助けずに放置するのも、逆に助けたまま放置するのも、なにかと被害を生みそうだと思い、今後の検証への影響も踏まえてどうするべきかと本当に悩んだものだが、最終的に導き出した答えは、それほど悪くない選択だったと思っている。


 自分が彼らに対して行った行動は、救出して、グラヴィーナ帝国軍へのメッセンジャーになってもらうこと。


 三十人を超える捕虜の中に、自分が出場したグラヴィーナ帝国の武闘大会を見ていた者がいたのも運が良かっただろう。


 きちんと王族らしい格好をして、グラヴィーナ帝国の第三王子としてソメール教国軍の司令塔であるデリベス侯爵と交渉して休戦協定を結んだと話し、それをグラヴィーナ帝国軍の砦まで伝えに行って欲しいとお願いしたら、快く引き受けてくれたのだ。


 出口まで先導する中、砦内が静まり返っており、砦の出口まで人の気配がなく、何故か中庭に下着や靴が山積みになっていることに疑問を投げかけられたが、王族命令として気にしないように諭したので、きっと気にしないでくれているだろう。


 彼らがグラヴィーナ帝国軍の砦までの移動補助として、自分が砦に来る途中で拾った馬と一緒に、砦にいた馬も全て渡したので、戦場をぐるりと回避したとしても数日後にはヴォル兄に休戦協定の話を伝えてくれているはずだ。


 その後、ヴォル兄がどんな対応をするのかは全く分からないが、捕虜として捕まっていた彼らの話を信じて、戦いの矛を収めてくれていたら嬉しい。


 だがまぁ、実際には平和的な休戦協定など結んでいないので、翌朝、補給物資どころか家具から馬まで無くなっている砦で素っ裸な状態で目覚めた領主は、グラヴィーナ帝国軍からの追撃を警戒し、警戒に当たるような態勢を取ってくれているのではないだろうか。


 同時に、こちら側、領都の方へと救援を呼ぶために、使者を走らせるようなことも考えるかもしれないが、下着姿の使者を送りだす勇気がない限り、前線で戦っているソメール教国軍を呼び戻すまでは、そういった行動に乗り出さないと予想している。


 よって、検証も出来た上に、戦争も止まって、追手も暫くは来ない、文句なしの結果を出せただろうということだ。


「……」


「……」


「あー、コホン……まぁ、そうだな……とりあえず、僕の国の兵士たちの命を奪わないでくれてありがとう」


「……命を取られた方がましだったかもしれないけどね」


「オースさん……流石の私もドン引きっすよ」


「貴様には王族としての誇り、いや、人としての心は無いのか?」


「あの、えっと……ごめんなさい、ちょっと、なんとフォローしていいか……」


 うーむ……戦いを止め、追手も足止めし、出来る検証を全て行うという完璧な行動だったと思うのだが、何故か周りからの評判はあまり良くないようだ。


「でもまぁ、確かに、砦がそんな状況であれば、そこから追手が来てこちらの行動がこの国に知れ渡るのに数日の猶予はあるだろう……とはいえ、そこまで悠長にしていられるほどでもないだろうから、ここからは足を早め、なんとか追手の伝達が父上に辿り着く前に僕たちがたどり着けるように行動しよう」


「うむ」


 ジェラード王国の遺跡で戦争イベントの開始を告げられ、グラヴィーナ帝国を経由し、ついに辿り着いたソメール教国。


 あとは、アクセル殿がこの国の首都に辿り着き、彼の父上……ソメール教国の教皇なる人物に、戦争を止めるよう説得出来れば、このイベントはクリアへと向かうだろう。


 このイベントで、国で、他にどんな出来事が待っているのかは分からないが、何が起きようとも、全力で隅から隅まで検証しつくすことを、ここに誓おう。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,730〉〈木×20〉〈薪×840〉〈布×89〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1,980日分〉〈保存食×20,000〉〈飼料×4,760〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×515〉〈獣生肉(上)×485〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×5〉

〈着替え×1,000〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉〈睡眠ポーション×11〉

〈教国軍の消耗品×200,000〉〈教国軍の装備品×20,000〉〈教国軍の雑貨×100,000〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×11〉〈大銅貨×135〉〈銅貨×84〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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― 新着の感想 ―
[良い点] 命あってのものだねですけど、でもやばいですね! 中庭に山盛りの下着と靴! 山盛りだから誰の履いてたのかわからないから、履く前に洗濯したいけど日用品もないからどうしたもんか! 他の兵が来てく…
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