表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/310

第百七十話 教国軍との接触で検証 その二

 

 ソメール教国、パトワス砦。


 グラヴィーナ帝国から教国へ入る際に必ず通る、関所の役割も担った砦である。



 ゲーム開始地点がジェラード王国の、竜の休息地。


 半年ほど経ってから、おそらくメインクエストに関わってくるであろう王族イベントを進めた結果、グラヴィーナ帝国に辿り着いた。


 そして、また半年ほど経過したのち、今度もメインクエストの気配を感じて、この戦争イベントを進め始めたわけだが……。


 ふむ……ゲーム開始から丸々一年経って、ようやくこの世界に登場する三つ目の国、ソメール教国に足を踏み入れることになったか。


 デバッガーとして、目についた検証項目を隅々まで検証していたというのもあるだろうが、それでも全然クエストを消化できているような感覚が無いし、レベル上げ目的の狩りなども特に行っていない。


 そんな状態の自分が、二年目にして、やっとゲームに登場する全ての国に足を踏み入れることが出来たというのは、なかなか時間がかかっている方ではないだろうか。


 だが、それだけ時間をかけたとしても、既に検証を進めている他の国でさえ、授業で習った領土面積的に、まだ全体の一割ずつ回れたかどうか怪しいというレベルである。


 ……オープンワールドゲームあるあるではあるが、終わる気配が全くないな。


 某海外のオープンワールドゲームでも、プレイ時間が千時間を超えてるけどサブクエストが多すぎてメインクエストをクリアしたことがない、という話をよく聞くし、やはりオープンワールドゲームに遊べるボリュームが膨大過ぎるのはつきものなのだろう。


 自分は、ようやく足を踏み入れた三つ目の国の大地を踏みしめ、そんなことを考えながら、仲間と共に、先ほどであった兵士に連れられて、砦の門をくぐり、拠点と思わしき建物へと案内されていた……。


 ……手や口を拘束された状態で。


 ふむ……これも海外のオープンワールドゲームあるあるなのかもしれないが、ストーリーイベントのいくつかに、必ずプレイヤーキャラクターを拘束するイベントを用意しなければならない、というような決まりでもあるのだろうか。



「聖騎士様! 砦の外、帝国側をうろついていた、ワールドでばっがー? と名乗る、怪しい集団を捕えました!」


「ん? そんな集団、聞いたことないな……帝国軍の捕虜ならあっちの建物に……ブフゥー!」


 自分が、それにしても拘束されるイベントが用意され過ぎている気もするなと、このゲームのイベント構成について考えていると、何やらそのイベントに進展があったらしい。


 自分たちを拘束してここまで連れてきた兵士が、砦の拠点と思わしき、外壁の内側で一番大きな建物の前で、扉を立ち塞ぐように立っている騎士にそう声をかけると、話しかけられたその騎士は、何か面白いことでもあったのか、急に盛大に吹きだした。


「おいお前! すぐにこの方たちの拘束を解け!」


「え? えーと……この怪しい連中、聖騎士様のお知り合いの方でしたか?」


「馬鹿か貴様は! 知り合いも何も! まぁ、私もお一人以外、心当たりはないが……少なくとも! こちらへあらせられるお方は! この国の第三王子! アクセル・ソメール殿下だぞ!」


「えぇ!? 殿下ってことは、お、王子様? はっ! すぐに拘束を解きます! 解かせていただきますー!」


 騎士に命じられた兵士はそう元気に返事をすると、迅速かつ丁寧に、自分たちの手や口を縛っていた拘束を解いてくれた。


 まぁ、兵士に拘束を解かれずとも、自分たちはそれぞれの手段を用いて自力で拘束を解くこともできたし、なんなら拘束される前に兵士を倒すなどの対応も出来たと思うが、アクセル殿が兵士に大人しく従おうとジェスチャーで訴えてきたのだ。


「アクセル殿下! と、そのお仲間の方々! 大変失礼いたしました! この者にはきつい罰を与えておきます!」


「はっはっは、別に構わないさ、間違いは誰にでもあることだ」


 自分たちの拘束が解かれると、アクセル殿の顔を知っていたらしい騎士が、こちらに対して謝罪の言葉を述べ、その言葉に合わせて、自分たちを拘束した兵士は、心底申し訳なさそうな顔で頭を下げる。


 だが、アクセル殿は自分たちと会話するときと同じように、気さくに、笑顔で、純粋な眼差しをもって、いつも通りに自身の気持ちをまっすぐに伝える。


「しかし……殿下を拘束して全くの無罪というわけにも……」


「君、これは、民衆に……しかも、国に仕える兵士に顔が知れ渡っていなかった、そんな知名度しか得られていなかった僕の責任でもあるんだ……彼が罰を受けるなら、僕にも同じ罰が必要だとは思わないかい?」


「い、いえ! 決してそんなことはございません! 大変失礼いたしました! この者にはこのまま通常業務に戻らせます!」


「うん、よろしく頼むよ」


 自分も人のことは言えないが、アクセル殿の対応はきっと、この世界の、この時代の王子らしいとは言えないのだろう。


 だが、それが良いことなのか、悪いことなのかは置いておいて、それは間違いなく、アクセル殿らしい選択であるし……何よりも……。


「うむ、周囲の人々と異なる選択をする……実にデバッガーらしい、検証の基本だな」


 タイトル画面で「何かボタンを押してください」と書いてあったら、ボタンを押さずに放置する。


 アイテムを最大所持数まで手に入れて、これ以上は持てないという状況で、あえてもう一つ購入を試みる。


 ゲームを実装してくれるプログラマーという職業の方々は、想定された操作が、想定された通りに動くようにゲームを作るから、説明書に書いてあるような、プレイヤーが自然と行うような操作の中には、不具合という物は、あまり仕込まれていないものだ。


 だから、デバッガーは、事あるごとに、人の選択する道の逆を行く……。


 まぁ、そうは言っても、プレイヤーが自然と行う説明書通りの操作の中に不具合が入っている可能性もあり、それを残してリリースしてしまうのは本末転倒なので、異常系と呼ばれる項目の検証は、通常の検証をしっかりと行ってからではあるが。


 だが、このゲームは……この世界は……検証項目を渡されていない、フリーデバッグの世界……。


 どんな項目を、どのように検証するかは、デバッガー個々人の自由なのだ。


 そう考えると、アクセル殿の、王子らしくない態度や対応……そしてもちろん、現在行っている、ソメール教国がきっかけを作った戦争を、ソメール教国の王子が止める、ということ……どれも素晴らしく、デバッガーらしい行動ではないだろうか。


「これは、検証リーダーとして、負けてはいられないな……」


 自分は、そんなことを考えながら、どうやらアクセル殿との話がまとまったらしい騎士に連れられて拠点に入り、その建物の中を進んでいく……。


 グラヴィーナ帝国側の砦である〈ランダバウト砦〉の拠点を案内されたときにも思ったことだが、ここ、ソメール教国側の砦である〈パトワス砦〉も、グリィ殿と一緒に段ボール、もとい、木箱を被って潜入した、ジェラード王国の〈ノーアイアン砦〉と構造が非常によく似ている。


 それらの建造物が建てられたのが、時代的にまだ国が三つに分かれる前だったのか、時代は違えど、建築技術自体が古代人から受け継いだ状態のまま、あまり発展していないからなのか、世界観的な理由はともかく、建築素材も構造もほとんど同じなのだ。


 まぁ、ゲーム開発のメタ的に言えば、建物は一つ一つ別のオブジェクトとして作られているわけでは無く、床、天井、通路、扉など、建物を構成するいくつかの部品を分けてオブジェクトを作成し、それをどう組み合わせるかによって別の建物を作り、見た目のバリエーションを増やしているだけだからな……似ているのは当然と言えば当然なのだが。


「アクセル殿下と、そのご友人をお連れいたしました!」


 道中の壁や天井を眺めながら、そんなことを考えていると、どうやら目的地である最奥の部屋に辿り着いたようで、ここまで案内してくれた騎士によって、この部屋の主に自分たちが紹介される。


 考え事をしながら聞いていた会話によると、今案内されたのは今回の軍に指示を出す司令塔……デリベス侯爵がいる部屋で、おそらく、この正面にいる四十代くらいのおじさんがその侯爵なのだろう。


 その他、部屋にいる人物は、デリベス侯爵の後ろ、左側に、鎧ではなくシンプルな祭服といった見た目の白いローブを身に纏った老人が一人、右側に、他の騎士より少し装備のレベルが高い騎士が一人……そして、この部屋の入り口で控える騎士が二人に、今案内してきてくれた騎士が一人で、合計六人……。


「ふむ……なるほど……よし」


 自分はそんな周囲の状況を確認すると、ごく自然な、当たり前のような動作で、アクセル殿の背後に近づき、その肩にそっと手を置く。


 そして、肩を置いた方の手とは反対側の手で、亜空間倉庫から、作ったもののずっと活用する機会のなかった〈ミスリル合金の短剣〉を取り出し……。


「この王子の命が惜しければ、すぐに軍を撤退させろ!」


 その短剣をアクセル殿の首に突き付けながら、目の前の侯爵にそう言い放った。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,770〉〈木×20〉〈薪×880〉〈布×95〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1570日分〉〈保存食×96〉〈飼料×190〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×530〉〈獣生肉(上)×490〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈着替え×20〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈金貨×1〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×9〉〈大銅貨×1〉〈銅貨×2〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


▼ アクセルからの借金

金貨5枚


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ