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第百六十九話 教国軍との接触で検証 その一

 

「ダメだったっすねー」


「うむ、そうだな」


「馬車も置いてくることになってしまいましたね」


「うむ、まだ借金も返せていないのだがな……」


「王国からだけじゃなくて帝国からも追われる立場になっちゃって、アタシたち人気者ね」


「うむ、このまま教国軍との交渉も決裂させて、追手を三国コンプリートさせてみる検証も悪くないな」


「いや、悪いわよ」


 グラヴィーナ帝国軍の拠点となっているランダバウト砦で、グラヴィーナ帝国の第二王子でありこの世界では実の兄という設定でもあるヴォルフ殿下に会い、教国の戦争を止めるように進言したが、その進言を蹴られるどころかアクセル殿を捕えようとしてきたので、仕方なく逃げ出してきた自分たち……。


 あらかじめそんな展開にもなりえると話し合っていたので、特に混乱もせず、事前に決めていた陣形で各々の役割分担通りの行動をしてスムーズに逃げ出すことは出来たものの、交渉がうまくいっていればこの先の旅もいくらか楽になったことを考えてか、皆の心情はそこまで明るくはないようだ。


「すまない、みんな……僕が不甲斐ないばっかりに……」


「ふんっ、最初から分かっていたことだろう? こんなところで弱音を吐くなら、最初から戦争を止める旅など始めずに遺跡で大人しくしれいればよかったんだ」


 そんな空気を察してか、何でも自分で背負い込もうとするアクセル殿が、自然と口からこぼれるように謝罪の言葉を述べるが、特に何かがあったわけでなくとも常に何かしら機嫌が悪いヴィーコ殿が、いつものように棘のある言葉を返す。


 確かに今回の作戦は、帝国側の立場で交渉する自分か、教国側の立場で交渉するアクセル殿の信用度などによって結果が変わっていたかもしれないが、それを言われたら自分だって続けようと思えば続けられて信用度が上がっただろう王子ルートの検証をそこそこに、冒険者ルートへ戻ってしまったので、他人のことは言えない。


 それに、ヴィーコ殿は遺跡で大人しく待っていれば良かったというが、オープンワールドRPGでよくある展開としては、主人公が関わるか関わらないか選択できる場面で関わらない方を選択すると、だいたい後悔するストーリーが待っているのだ……遺跡で大人しくしているルートにその方が良かったと思える可能性は低いだろう。


「ヴィーコの兄ちゃん、そりゃあないぜ、悪いのはアクセルの兄ちゃんじゃなくって、帝国軍の……」


「うむ、自分の兄上がすまなかったな」


「あ、いや……そうじゃなくて……うーん、そうだ! それもこれも全部この戦争のきっかけを作った……」


「僕の父上が、本当に申し訳ない……」


「あ……いや……えーと……」


 カイ殿が空気を読んでか、いつも訓練に付き合ってくれているアクセル殿をフォローしようと反論するが、どうあがいても自分たちのパーティー内に跳ね返ってきてしまうようで、うまくいっていないようだ。


 やはり、こういった時に優れたコミュニケーション能力を発揮するためには、アクセル殿やカヤ殿が持っている【社交術】スキルのようなものが必要なのだろう。


 自分もカイ殿もそういったコミュニケーション能力に関わってきそうなスキルは持っていないからな、うまく場を治められなくても仕方がない。


 ヴィーコ殿とグリィ殿もそのスキルを持ってはいるのだが……まぁ、二人にそのスキルの片りんは見たことがないのはきっと、自分が常に色々なスキル効果をオフにしているように、二人もそのスキル効果をオフにしているからだろう。


「今更だけど、この冒険者パーティー、各国の重鎮がいすぎじゃない?」


 そんな風に、いつか手に入れたいスキルについて考えていると、アーリー殿がそう口を開いた。


 自分が意図してそういった人物ばかりを集めたわけでは無いが、確かに、改めて言われるまでも無く、このパーティーには総人数に対して王族や貴族が多い構成になっている。


「あはは……オースさんもアクセルさんも親しみやすい方なので感覚が麻痺してしまっていますが、本当にそうですよね」


「いや、そういうカヤちゃんもそっち側だけどね?」


 カヤ殿は謙遜しているが、アーリー殿の言う通り、カヤ殿も貴族、グリィ殿もヴィーコ殿も貴族で、自分とアクセル殿は王族……アーリー殿、ロシー殿、カイ殿の三人が平民という構成になっている。


 八人いる中、王族や貴族が五人……貴族が様々な理由で冒険者をやっていることはそれなりにあるとはいえ、その中でもパーティーの半数以上が権力者という構成は、なかなか珍しい部類なのではないだろうか。


「え? いや、その、わたしなんか貴族の娘とは言っても、貧乏な男爵の家ですし……」


「ぶーぶー、アンタが貧乏だったら、アタシたちなんかどうだっていうのよー」


「そうだそうだ! オレと姉ちゃんは体型がほとんど変わらないからって二人で服を着まわすこともあるんだぞ」


「あの……その……ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」


「同情するなら服をくれー!」


「そうよ! アタシだってたまには可愛い服を着てみたいわよー!」


「私は服よりも美味しいご飯が欲しいっすー!」


 そんな権力者だらけのパーティーだと言っても、カイ殿とロシー殿は、権力よりもどうやら服がご所望らしい。


 何やら欲しいものを叫ぶ場だとでも思ったのか、横から紛れ込んだグリィ殿も、本来は彼女自身も持っているであろう権力や立場よりも美味しい食べ物が欲しいらしいし、自分も別にプレイヤーキャラクターにそういう設定が割り当てられているだけで、自ら王族なんて立場を望んだわけでは無い。


 アクセル殿とヴィーコ殿は別かもしれないが、そんな、貴族らしくない貴族や、別に貴族の権力や立場を羨んでいない者たちが集まっているから、このパーティーはうまくやれているのだろう。


 自分たち仲のいい冒険者パーティーは、その後も、他愛のない会話をしながら、徒歩で南へと進んでいく……。


 正確には、帝国側の砦と教国側の砦の直線状には、各軍の野営地などがあるため、まっすぐ南へは進んでおらず、東側へ大きく迂回するように進んでいるのだが……途中で一日野営を挟んだ後、次の日の朝からまた、少しずつ、教国側の砦へと近づいていた。


 そして……。


「なっ……止まれ! そこを動くな!」


 そろそろお昼ご飯の時間だなという時間になって、砦の目前までたどり着くと、見回りをしていたのか、砦の周囲を徘徊していた教国側の軍人らしき四人グループに進行を阻まれた。


「お前たち、何者だ!」


 そう言って四人全員でこちらへ騎槍を突き出し、警戒しながら近づいてくるグループは、武器が大きな槍というところ以外はアクセル殿の普段の格好に非常によく似た、全身金属鎧で盾持ちの騎士、といった風貌の連中だ。


 ランスとも称される、本来であれば馬上で真価を発揮するであろう大きな槍も含め、鎧や盾、装備している全てのものに対して、なかなか凝った意匠が施されており、それを見ているこちら側視点でも高貴さが感じられるように、身に着けている人物はそれを装備しているというだけでどこか偉くなったような気持ちになるかもしれない。


 だが、残念ながら、実際の偉さの度合いでいえば、こちら側の勝利だ。


 【鑑定】で彼らのステータスを確認する限り、どうやら相手はその見た目に反して貴族でもなんでもなく、一応、今回の戦争の教国軍には所属しているし、〈スパルトイ〉という大層な名前を持った集団でもあるようだが、鑑定結果の説明欄を見ると、その実体としては平民から募集された兵士らしい。


「ふむ……なるほど……よし」


 だったら、ここは、こちら側も堂々と自己紹介をして、対等かそれ以上の立場に立つべきだろう。



「控えろ、一般兵! 我々を誰だと心得る!」


「「え?」」



(な……なんだ……この高貴なオーラを漂わせる青年は……)


(お前、上から何か聞いてるか……?)


(知らないし、何も聞いていないが、見てみろ、先頭の青年だけじゃなく、後ろに控えているのも全員ミスリル合金装備だぞ……)


(まじかよ、聖騎士様と同じくらい偉いんじゃねぇか?)


(おいおい俺たち、そんな人たちに武器を向けて……ちょっとお前、何か返事しろよ)


(くそっ、俺がかよ……)



「あ、あの……いや、えーと……申し訳、ございません……特に上から通達が無かったもので……失礼ではございますが、あなた方は一体……」


 堂々とした態度が良かったのか、とりあえず相手はこちらに武器を向けるのを止めてくれたようで、最初の高圧的な態度とは打って変わって、かなり腰の低い態度で丁寧に話しかけてくれた。


 うむ、どうやら良好な、話し出しができそうだな。


 ならばこちらも、その態度に応じて、自分たちが真面目で安全な集団であることを、正確に伝えなければならないだろう……。



「自分たちは、〈世界の探究者ワールドデバッガー〉……超一流の検証チームだ」



 自分がそう高らかに宣言すると、一度下げられたその相手の槍は、何故か再びこちらへ突きつけられた……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【冒険術】:冒険に必要な行動を高い水準で実行することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】

【獣を操る者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,770〉〈木×20〉〈薪×880〉〈布×95〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1570日分〉〈保存食×96〉〈飼料×190〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×530〉〈獣生肉(上)×490〉〈茶蕎麦×500〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈着替え×20〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈金貨×1〉〈大銀貨×1〉〈銀貨×9〉〈大銅貨×1〉〈銅貨×2〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


▼ アクセルからの借金

金貨5枚


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