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第百六十五話 リズムゲームで検証 その二

 

 五人の奏者が紡ぎ出す、アイリッシュ音楽の明るくリズミカルな曲調。


 木製フルート、二つのフィドル、イリアン・パイプスに、コンサーティーナ……全ての楽器が同じ旋律を奏でるユニゾンは耳に心地よく、聞いている者は身体が自然とリールのリズムで揺れてしまう。


 変装のために吟遊詩人の真似事をしていた自分たちとは異なり、この楽団にバウロンなどの打楽器を持っている者がいなかったので、それで息の合ったリズムが生み出せるのかと疑問に思っていたのだが、今なら分かる、このセッションに打楽器は必要ない。


 —— タンタタ タタタタ タンタッターン ——


 楽器の生み出すリールのリズムに合わせて、楽団の踊り手が見事なステップダンスを披露する……。


 ところどころで上半身にも動きがあるので、これはシャン・ノースという種類のアイリッシュ・ダンスに近いスタイルなのだろうか、足元はかなり激しい動きをしているのに観客へ笑顔を向け続けている彼女は、さながら水面下で足をばたつかせながらも水面を優雅に進む白鳥のようである。


 そんな彼女が、一つの楽節を踊り終わる最後のステップと同時に、手をこちらへ向け、ダンスの手番を自分へとバトンタッチする……。


 そして、自分はその合図を受け、先ほどの楽節で彼女が踏んだものと同じステップを、彼女とは違い、上半身不動のまま、真顔で踊り始めた。


 現在、この世界ではそれなりに有名らしい楽団〈三重二重奏トリプルデュオ〉との十回目のダンズイベント、もとい、リズムゲームの検証中……。


 これまでのダンスで、上半身の動きまではコピーしなくてもいいことは既に検証済みである。


 大事なのはステップ……足元の動きを完璧にトレースすること……。


 リズムゲームでよくあるように、このダンズイベントでも、ステップ一つ一つ、譜面をタップするタイミングのズレによって、パーフェクト、グレイト、グッド、バッド、ミスなど、様々な判定が下されるらしい。


 視界にその判定結果やスコアなどのUIは一切表示されないが、長年のデバッグ経験から、これは、パーフェクト判定から順にスコアに加わる点数が増えていき、最後までプレイした結果、最終的な合計点数を競い合うだけの仕様ではなく……。


 パーフェクト判定から順にライフが下がる点数が増えていき、固定値であるライフがゼロまで下がり切ると、その時点でダンスが中断されてしまう、減点方式の仕様も併せ持っているということが分かっている。


 しかも、その減点ライフゲージは曲全体で見られる評価用の他に、プレイ中の一楽節での評価が見られる一楽節単位のゲージもあるらしく、全体を通してのマイナス点としてはそこまでではないと判断される点数であっても、連続でミス判定が続くなど、一楽節中で減点をもらい過ぎると、その時点で曲を中断されてしまう仕様らしい。


 最初の説明を聞いてパーティー向けのリズムゲームだと思っていたが、始まってみれば、曲自体の難易度も、判定の難易度も、アーケードゲームなどによくある、一人で果てしない高みを目指すようなものになっているとは……。


 この世界で発生するミニゲームイベントには、最強武器を手に入れるために必要な鬼畜ミニゲームも含まれているのかもしれないな……もしかしたらいつか、大きな鳥に騎乗して風船を割ったり、落ちてくる雷を連続で何回も避けさせられたりすることになるのかもしれない。


 もちろん、この鬼畜難易度ミニゲームは、おそらく、このゲームを軽く遊んでストーリーを楽しむだけのユーザーであれば、そもそも挑戦する必要は無いし、挑戦したとしても、軽く遊んで、出せる範囲の自己ベストだけ残して、次に進んでもいいというような、メインのストーリーに全く関係のないイベントだとは思う。


 だが……製作者の方々……安心してほしい。


 ……自分はただの一般プレイヤーではなく、超一流のデバッガーだ。


 この十回目の挑戦……最初の八回でダンスが中断されるパターンとして思いつく条件はは全て確認し、直近の一回に関しては、既に最後まで踊り切っている……。


 そこで金貨二枚という賞金は貰えたし、アクセル殿やロシー殿、カイ殿も含めて、それを見ていた観客からは拍手が送られ称えられ、楽団の人には一度、クリアした人の再挑戦は受け付けていないと断わられた。


 だが……。


「まだ完全パーフェクト判定の検証が終わっていない!」


 自分はアクセル殿たちが止めるのも聞かずに、そう言って楽団のリーダーに詰め寄り、先ほど手にした賞金の金貨二枚と、もともと十回目の挑戦で使う予定だった金貨一枚、合わせて金貨三枚を参加料として払い、しかも、先ほどとは違う楽曲でプレイするという条件で、この十回目のダンス挑戦権を獲得したのだ。


 楽団の人たちも流石に九回連続での演奏やダンスに疲れを見せ始めていたが、せっかく最後の検証をするのだからと、万全の状態で挑ませてもらうため、独自に発明した体力回復や魔力譲渡の魔法で楽団の人たちを全回復させてもらった。


 そして、自分の十回目のリズムゲーム検証が始まり、今、終わりを迎えようとしている……。


 本当は上半身の振り付けまで完璧にコピーしたかったが、今の自分にそこまでの力量はないし、何より、このゲームにおいて上半身の振り付けコピーは減点にも加点にもならないことは検証済みだ。


 だから、自分はひたすら、初見の曲への初挑戦という緊張感を味わいながらも、一流のデバッガーとしてのみならず、今まで数々のリズムゲームを踏破してきたプレイヤーとしての意地もかけて……ついに……。


 —— タンタタ タタタタ タンタッターン ——


 《スキル【舞踊】を獲得しました》


「「おぉおおおお!!!」」


 —— パチパチパチパチ ——


 七回目の検証で事前説明無しにいきなり振られたときは焦った、最後の楽節では直前の楽節と同じステップだが交互にではなく一緒に踊るという難所も乗り越え、ダンスが終わると同時に締めくくられる楽曲と、沸き起こる拍手……。


 観客や楽団メンバー……そして、久々のスキル獲得で聞いたシステム音声の反応を見ても、自分は今回の挑戦でパーフェクトクリアを達成したという判定で間違いないだろう。


 リズミカルな曲と踊りで興奮が冷めないのか、めずらしくロシー殿も含めて素直に自分のことを褒めたたえてくれて、自分、アクセル殿、ロシー殿、カイ殿の四人で、ハイタッチして、この突発リズムゲームイベントは締めくくられた……。


 アクセル殿に借りた金貨十枚を全て使って、最終イベントで賞金としてもらった五枚の金貨を返しても、金貨五枚の借金が残ったが、ゲームも検証もパーフェクトだったので、そんなことは些細な問題だろう。


「ふむ……なるほど……よし」


「次はグリィ殿とヴィーコ殿のところだな」


 色々な店で泥棒の検証をして、リズムゲームという突発イベントの検証をしても、まだ日は高い。


 あの二人がどんな場所で何の検証をしているのか予想もつかないが、予想もつかない検証こそ、自分も参加しなくては……。


 自分は検証に付き合ってくれた〈三重二重奏トリプルデュオ〉の方々と、それを見守ってくれたアクセル殿、ロシー殿、カイ殿に手を振って、次の検証場所へと歩いて行った。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【舞踊】:あらゆる条件で思い通りに踊ることができる <NEW>

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,800〉〈木×20〉〈薪×900〉〈布×104〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1590日分〉〈保存食×96〉〈飼料×198〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×540〉〈獣生肉(上)×490〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈着替え×20〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈金貨×1〉〈大銀貨×2〉〈銀貨×4〉〈大銅貨×1〉〈銅貨×2〉


▼ 商業ギルドからの借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


▼ アクセルからの借金

金貨5枚


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