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第百六十三話 お土産と泥棒で検証

 

「こちらは『てん茶』と言う種類の茶葉でして、この辺りの茶屋で出しているお茶は、こちらを石臼で挽いて粉状にした抹茶というものでございます」


「なるほど、これがさっきのお店でいただいたお茶の元なんですね、形も独特で、香りも他の茶葉と比べて随分と爽やかな感じがしますが、これもやっぱり育て方や加工法に違いがあるのでしょうか?」


 茶屋と並ぶように建てられたお土産用の茶葉を売っているお店で、茶葉の説明をしてくれている店員に対して、カヤ殿が質問を投げかける。


「はい、こちらも先ほどご紹介した『かぶせ茶』や『玉露』と同じ、被覆栽培ですが、被覆期間は他の二つより長く、蒸し時間が短めな他、揉みの工程がないのが大きな違いですね」


「へー、確か揉みって、水分を抜きながら形を揃える工程だったわよね……あー、だからこの茶葉には水属性系の効果が多めなのか」


「は、はぁ……」


 カヤ殿の質問に対して、彼女より身長の低い、見た目的にはいかにもベテランの若女将と言ったような風体のドワーフの店員は、懇切丁寧に茶葉の説明を続けてくれるが、そんな彼女も流石に錬金術師的な知識は持ち合わせていなかったようで、続いたアーリー殿の感想には、うまい言葉が返せないようだ。


「あはは……えっと、彼女の言っていることはあまり気にしないでください」


「ええ、まぁ、茶葉にどんな感想を抱くのかは人それぞれですが……」


「カヤちゃん、錬金素材を乾燥してもらってる時の魔法に、この水分を無理やり抜かずに水属性系の効果を維持したまま乾燥させるって応用できないかしら?」


「え? うーん、そうですね……最近開発した水属性魔法の乾燥法なら、火属性魔法での乾燥法より素材の効果を壊さず、尚且つそれなりに早く加工できるのが利点でしたが、それ以上となると、加工時間は伸びそうですが、風属性魔法での乾燥法なら……」


「あ、あの、お客さん? もしもし、お客さーん」


 ……ふむ。


 アーリー殿とカヤ殿は、宣言通り錬金素材の買い物などを検証しているようだな。


 素材だけでなく、その加工法などの情報も余すことなく仕入れているようで、流石はアーリー殿とカヤ殿、グリィ殿に次いで我が検証チームの優秀なデバッガーである。


 ちょっと別の検証をしようとスキルで気配を薄くしていることもあるが、自分が店に入ってきても気づかないほど集中しているようであるし、この二人には接触せず、このまま検証を続けてもらおう。


 自分は心の中で二人の検証を応援すると、フードを深くかぶり直し、そのあたりの棚に置いてあった商品を手に持ったまま、代金を払うことなく、静かに店を出て行った……。


 アーリー殿たちも休みをもらったにもかかわらず検証を続けてくれているのだ、自分もしっかりと出来る検証をやっていかないとな。



 ♢ ♢ ♢



「ふむ……次はアクセル殿たち三人グループのところか」


 自分はそう呟くと、先ほどまた別の店で手に入れたお土産用のお饅頭を食べながら、マップ画面を眺める。


「しかし、こうも簡単に万引きが出来てしまうとは、世の中から衛兵がいなくならないはずである」


 某オープンワールドRPGでも、隠密レベルが高いと、明らかに店主に見られているであろうという状況であろうとも、店の商品をバレずに根こそぎ奪うことが出来るが、このゲームでも似たような世界を演出しているらしい。


 流石に店員の目の前で商品を懐に入れてみたら、いくらスキルを全力で使用していようと怒られたが……。


 まぁ、その理由がスキル経験値の低さなのかどうかは、また経験値を上げて別の機会に検証してみる予定である。


 盗みがバレても、あのオープンワールドRPGと違い、いきなり衛兵を呼ばれるわけでもなく、店主が自ら殴りかかってくるわけでもなく、普通に怒られる仕様だと分かっただけでも今回の検証に意味はあっただろう。


 ……まぁ、別の検証では衛兵を呼ばれたが。


「この大陸は、どうやら夢を見ない島だったらしいな」


 リメイク版も販売されている、元は懐かしい携帯型ゲーム機用ソフトとして販売されたあのゲームでは、商品を持ったまま店主の周りをグルグル回ってから店を出ることによって持ち逃げすることが出来たなと思い出し、そちらの検証もしてみたのだが、その際に衛兵を呼ばれてしまったのだ。


 確か、あのゲームでは、衛兵などというシステムが無い代わりに住民から泥棒と呼ばれることになったり、店主がゲームのラスボスよりも強いキャラクターになって二度と店の商品を購入することが出来なかったりする仕様だったが、このゲームでは普通に衛兵を呼ばれる仕様らしい。


 変装スキルで姿を別の見た目に変えれば同じ店にも堂々と入れるし、街の住民から不名誉な称号で呼ばれることも無かったが、ゲームシステムは見逃してくれなかったようで、久しぶりに称号の欄に【奪いし者】という新たな称号が追加されてしまっていた。


 一通り確認項目も見終わったので、検証に協力していただいた店には、後でそっと商品を戻したり、商品分の代金を置いてきたりするつもりではあるが、おそらく、そんなことをしてもこの称号は残ったままになるのであろうな……。


 うーむ、ゲームシステム上、致し方ないとはいえ、身に覚えのない不名誉な称号が増え続けるのは誠に遺憾である。


「む、こんなところにいたか」


 そんな考え事をしながらマップ画面でアクセル殿を捜索していると、どうやらアクセル殿たちの方も別の検証をしてくれているらしい……。


 彼らのマップマーカーは、屋敷と呼んでも過言ではない大きさの茶屋の中庭、マップ上で茶屋〈百年桜・演目庭〉と表示されている場所にあり……戦闘中なのか何なのか、体力にはまだ余裕があるものの、魔力がごっそりと減っていた。


「ふむ……重要そうなイベントの検証をするなら、検証リーダーである自分に一声かけて欲しいものだ」


 自分は身に着けている装備を見直してから、アクセル殿たちのいる茶屋へと向かった。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】

【自然に逆らいし者】

【奪いし者】 <NEW>


▼アイテム一覧

〈水×999,999+〉〈土×999,999+〉〈石×199,800〉〈木×20〉〈薪×900〉〈布×104〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1590日分〉〈保存食×96〉〈飼料×198〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×540〉〈獣生肉(上)×490〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈着替え×20〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈金貨×1〉〈大銀貨×2〉〈銀貨×4〉〈大銅貨×1〉〈銅貨×2〉


▼借金

オース名義:金貨2枚

グリィ名義:金貨2枚


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