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第百五十三話 フォークピックの街で検証 その二

 

「オース君! ついさっき、この宿に勇者が泊っているという噂を耳にしたのだが、まさか君の正体がバレ…………何をやっているんだ?」


 フォークピックの中央広場からそれほど離れていない場所にある、アクセル殿が宿泊の手続きをしてくれた、中位冒険者や行商人御用達の宿屋〈スワドリング〉。


 この街を通る騎士や貴族が宿泊するような高級宿屋よりは敷居が低く、かといって下位ランクの冒険者が泊るには敷居の高いその宿で、自分は男性陣に割り当てられた部屋にいくつかの木箱を積み上げ、他のメンバーに囲まれていた。


「うむ、アクセル殿も来たか、今からガチャ結果の発表をするのだが、アクセル殿も見ていくか?」


「ガチャの結果……? 一体何のことを言っているのか分からないが……それよりも! 広場あたりからここまでの道中で、人々が口々に『勇者が現れた』『その勇者がこの宿に泊まっている』などということを言っているんだ! 君の正体が……」


「あの、えっと……たぶん、その人たちはオースさんの正体が伝承にある勇者だと言っているわけではないと思います」


「なに……?」


「まぁ、オースくんのことを指して勇者って呼んでいるのは変わらないけどねー」


「ん? んん? どういうことだ?」


「これっすよ、これ」


 アクセル殿も帰ってきて全員揃ったので、そろそろガチャの結果発表に移ろうと思ったのだが、彼は街の住人が言っていることが気になるらしい。


 確かに、自分はあったことも話したこともないこの街の住人から口々に『勇者』と呼ばれることとなったが、それはカヤ殿が言っている通り伝承の勇者を指すわけではない。


 混乱するアクセル殿に対する説明役にアーリー殿とグリィ殿が加わって、カヤ殿と三人で詳しく説明し始めてくれた内容通り、自分が勇者と呼ばれている理由はこの今から結果発表があるガチャを大量に買い込んだからだ。


 彼女たち曰く、いや、その前も自分がこの木箱を持ってきた段階でヴィーコ殿やロシー殿にもさんざん言われたが、このガチャを売っている露店で馬車の積み荷いっぱい分に近い買い物をするのは、勇者というよりもただの考え無しらしいが……。


 唯一、カイ殿には『無駄な大人買いはロマンだよなぁ』と言われて共感? されたり、グリィ殿に、これが鉱石ではなくどんな料理が出されるか分からない『シェフの気まぐれランチ』だったら買うだろうと同意を求めたら、『それならついさっき近くのレストランで三回くらいおかわりしたっすね』という予想の上を行く回答が返ってきたりした。


 まぁ、それでもグリィ殿は、食べ物以外でそんなことをするなんて無駄遣いだと、鉱石ガチャの大人買いには共感してくれなかったが。


「なるほど、オース君が勇者と呼ばれている理由はそれか……まぁ、もしかしたら追っ手を撒くカモフラージュになるかもしれないが、出来るだけ目立つ真似は控えてほしい」


「うむ、承知した」


 自分は別に目立とうと思ってこの行動を起こしたわけではないので気を付けるのは難しいが、今の状況を見る限り、これが『勇者がいる』という噂だけ広がって追手をおびき寄せることになるか、『どうやら当たりがあるか分からない石ころを大量に買った観光客がいただけらしい』という噂までたどり着いて士気を下げさせるか分からないからな。


「じゃ、話は終わったみたいだし、始めるわよ?」


「はい」「いいわよ」「おっけーっす」「ワクワクするな」


 アクセル殿への説明が一通り終わった後、鉱石の鑑定には自信があるらしいロシー殿が主導で、ガチャの結果発表が執り行われる。


 鑑定のスピードだけを考えれば自分が【鑑定】スキルで直接確認していった方が早いのだが、自分が岩石を割りもせずに手に持っては当たりかハズレか言って次に移るという作業をしていくのは面白くないし、何よりこの話をしたときにロシー殿が珍しく食いついたので、これも何かのイベントだろうと鑑定を任せることにしたのだ。


 彼女はガチャの大人買いには興味はないが、鉱石や宝石には興味があり、鑑定や加工の道具も魔法鞄に入れて持ってきているらしいので、せっかくなので便利スキルではなく職人の技で鑑定する様子も見てみようと思ったというのもある。


「うーん……これはただの石ね……こっちは……いや、これもただの石ね」


 そして始まったガチャの結果発表。


 ロシー殿が手のひらサイズの岩石をひとつひとつ手に取り、分厚いルーペといったような道具で石を眺めたり、小さめの先が少し尖ったハンマーで石を半分に割って中を確かめたりしながら、次々に岩石に鉱石が含まれているかを鑑定していく。


「んー? これは、見るからに銅が含まれていそうだけど……うーん、まぁ、それ以外は特に変わったところは無さそうね」


 中には手に取った段階で錆色の銅が露出しており、ぱっと見で銅鉱石だと分かるものも含まれていたりするが、今のところただの石ではない確率は半分以下……リアルマネーでの課金を必要とせずゲーム内通貨のみで引ける無償ガチャということを考えればそんなものなのかもしれないが、なんとも渋いガチャである。


 日本の有名な牧場運営ゲームからインスパイアされて海外で作られた、それなりに知名度のある牧場運営ゲームに、こんな感じで石を割って中から鉱石や宝石が出てくるシステムがあったが、あのゲームのガチャ結果はこれほど酷くなかった気がするな。


「あ! これ、宝石が入ってるわ! って言っても、そんなに大きくないし、そこまで品質も良くないガーネットだけど」


 当たり枠なのか、たまに宝石が出てきて、その度に周りの女性陣がキャッキャとはしゃぎ出すが、宝石に対して特に興味を示していないように見えたグリィ殿もアーリー殿やカヤ殿と一緒に賑やかにしているのは意外だった。


 食べ物にしか興味が無いように見えても、彼女も一応貴族の出身であるし、宝飾品にそれなりの興味は持っているのだな……。


「ところで、ガーネットって売ったら串焼き何本分っすかね?」


 ……と思ったが、そんなことはなかったようだ。


 そんなこんなで、全ての岩石を鑑定するのに小一時間ほどかかっただろうか。


 途中、目が疲れてきたらしいロシー殿が、実は同じように鉱石の鑑定が出来るらしいカイ殿にも手伝わせ始めなかったらもっとかかっていただろう。


 最終的な結果としては、ガーネットやアメシスト、ルビーやエメラルドといった宝石類が全体の八パーセントほど、この岩石が発掘された場所が銀鉱山と銅鉱山だったのか、銀と銅、錫などの金属鉱石が三十パーセントほどで、残りが特に鉱石の類を含有していないただの石だった。


 最高レアリティをルビーやエメラルドのそれなりに希少な宝石として、最低レアリティをただの石とするならば、デバッガーとしての評価は、リリースしたばかりのソーシャルゲームの無償ガチャ、といった感じだろう。


 これがリアルマネーを使う課金ガチャだったら炎上待ったなしだろうが、ゲーム内マネーで買えるガチャだからな……出てきた鉱石や宝石を売っても買った額の半分にも満たないだろう結果を受けた他のメンバーは『やっぱり旅人を狙ったぼったくり露店だった』という辛口の評価を下しているが、自分としては酷評するほど渋い結果だとは思わない。


 天井がある想定で店の商品を二回ほど空にするという試みをして、結局一周目の購入と二周目の購入で、全然違うアイテムが排出されていたので、天井という仕組みも特に存在しなかったわけだが、無償ガチャならそんなものはないのは当然だろうし、今後も運営が続いて排出アイテムの種類が増えていけば、少しずつ良い排出率になっていくだろう。


 自分はこのガチャの結果をメモ画面に書き残し、検証結果にとりあえず緊急の問題点は無いと判断すると、ため込んでいる様々な検証結果はいつになったら開発陣に報告できるのだろうかと思いながら、今回の検証を終えた。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×46,000〉〈薪×83〉〈小石×1,040〉〈布×106〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1699日分〉〈保存食×96〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×619〉〈獣生肉(上)×580〉〈鶏生肉×41〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈着替え×20〉〈本×100〉〈遺物×10〉〈宝石・鉱石×170〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈木刀×1〉〈ミスリル合金の軽鎧×1〉〈ミスリル合金の短剣×1〉

〈音信のイヤリング×1〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×0〉〈銀貨×2〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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