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第百四十二話 久しぶりのアルダートンで検証 その三

 

 冒険者ギルドアルダートン支部、エントランス。


 ギルド長との話が終わり、一階に降りてきた自分は、ヴィーコ殿、ロシー殿、カイ殿の冒険者登録を頼んでおいた仲間の姿を探すが、そこにいたのはグリィ殿だけだった。


「あ、オースさん、おかえりっす」


「うむ……他のみんなはどうしたのだ?」


「えーと、まずアーリーさんがっすね……」


 グリィ殿曰く、まず冒険者登録に特に関係ないアーリー殿が、待っている間暇だし、せっかくアルダートンに帰ってきたのだからと、彼女の祖母であるアドーレ殿がやっている薬屋〈魔女の釜〉へ挨拶をしに行ったらしい。


 王国騎士に追われている身ではあるが、アクセル殿も、身内なら何かあっても匿ってくれるだろうとのことで許可したそうだ。


 そして、冒険者登録が終わった後でそのことを聞いたロシー殿とカイ殿が、だったら自分たちも昔からこの街でお世話になっている家のところへ行くと言って、この街にある武器や防具の鍛冶屋である〈輝白の鎚〉へと向かったとのこと。


 そうなってくると、残りのメンバーも今夜自分たちが泊まる場所を確保しておいた方がよさそうだなという話になり、アクセル殿はヴィーコ殿とカヤ殿を連れて、この街にある貴族向けの高級宿を探しに行ったようだ。


 貴族向けの高級宿なら守秘義務がしっかりとしていて客の情報を漏らさないことを徹底している場所が多く、公爵であるヴィーコ殿が身分を明かして騎士が来ても応対しないよう伝えておけば、プロの対応でよしなに追い返してくれるだろうという目論見と、旅でつかれた身体を癒すための風呂が備えてあることも期待しての選定らしい。


「なるほど……それで、グリィ殿はアクセル殿について行かなかったのか?」


「うーん……まぁ、誰かが残ってオースさんに皆の行方を伝えないといけなかったのもあるっすけど、この後も特に高級宿に行く気はないっすねー……確かに、宿代もアクセルさんが出すって言ってくれてたし、豪華な夕食もお風呂も魅力的だったっすけど……なんかここに来たら、久々にいつもの宿屋のご飯が食べたくなったっす」


「ふむ、〈旅鳥の止まり木〉か……女主人のカロリーナ殿や看板娘のソニア殿も元気でやっているだろうか」


「そうっすねー、オースさんも一緒に行くっすか?」


「そうであるな、素材を納品して装備品購入のための軍資金を作ったら行くとしよう……グリィ殿は先に行って自分の分も部屋を取っておいてもらっていいか?」


「了解っす!」


 自分はグリィ殿からそれぞれの仲間の行動を聞いて、いつもこの街で利用していた宿の部屋を取ってもらうよう頼むと、遺跡からここまでの道中で手に入れた素材を換金するために、ギルドの依頼受付の方へと向かった。


「こんにちは、こちらは依頼受付です、依頼の発注や受注、素材の換金など、わたくし担当のエネットが承りますっ」


 いつもの流れでエネット殿のいる受付に足を運んだが、しばらく会わないうちに随分と他人行儀な対応になってしまったな。


 ……と思ったが、そうか……そういえば今は変装しているんだったな。


 自分の変装を見破る能力に長けているフランツ殿と、彼が正体を明かしたギルド長やミュリエル殿が普通に接していたので忘れていたが、普通はたとえ知り合いに見られてもこんな対応になるはずだったのだ。


 ふむ、そうだな……であれば、せっかくだ……。


「では、まずは冒険者登録を頼んでもいいだろうか」


「あ、えーと……こちらは依頼専用窓口でして、冒険者登録はあちらの総合窓口でお願いできますでしょうか」


「何? できないのか? そんなわけがないだろう、どちらも同じ冒険者ギルドの受付だ、ここでやってくれ」


「あの、えーと……それは、ギルドとしてそういう決まりでして……」


「あっちはなんか今それなりに並んでるじゃないか、自分は今すぐに登録したいのだ、目と鼻の先にある別の受付の業務を請け負うなんて簡単なことだろう? さっさと登録してくれ」


「で、ですから……ここじゃダメで……」


「……」


「うぅっ……そんな怖い目で見られても……ひっく……決まりは決まりで……」


「うむ」


「ひっく……?」


「……合格だ」


「……へ?」


 —— バシンッ ——


「あなたの対応は不合格ですけどね……エネットを泣かしてるんじゃないわよ、ランクを剝奪してあげましょうか?」


 フランツ殿も遺跡に帰ったことで、検証中に殴られることは無いと思っていたところにやってきた後頭部の衝撃に振り返ると……そこには角を生やしたミュリエル殿が書類を記入するときに使用するバインダーやクリップボードと呼ばれる木製の板を片手に立っていた。


「痛いではないかミュリエル殿、これも大事な検証なのだ」


「え? え? ……あ! この人、オースさんですか!?」


「そうだ」


 依頼受付で本来は総合受付で行うべき処理が出来るかどうかの検証ついでに、自分の正体がバレる基準を検証していたのだが、どうやらエネット殿はミュリエル殿の反応を見てやっと分かったらしい。


 しばらく会っていなかったとはいえ、知り合いを相手に会話してここまで正体がバレないとは、自分の変装スキルの経験値もそれなりに高いようだな。


 自分はメモ画面にその検証結果を書き込むと、目に浮かべた涙を拭ってもなおビクビクと何かに怯えているエネット殿に、本来の目的を話した。


「け、獣や魔物の素材の換金ですね……え、えっと……けっこう量はありますかね?」


「うむ、そうだな、それなりに多い」


「はい、わかりました……で、では、こちらへどうぞ……」


 エネット殿はそういうと、自分を解体所の方へと誘導する。


 もう何か追加で検証する予定は無いので普通に対応してくれていいのだが、彼女は自分の一挙手一投足に全てビクりと反応して、歩き方も右手と右足が同時に出ていてぎこちなく、精いっぱい笑顔を作っているようだがその表情は硬かった。


 ふむ……最初の挨拶はかなりスラスラと淀みなく言えていたし、最初に会ってから一年ほど経っているので少しは受付嬢として成長しているかと思ったが、そんなことはなかったようだな。


 数値をいじることで簡単に成長させられるステータスやスキルと違って、性格というAIを成長させるのはプログラム的に手間がかかるだろうからな……メインストーリーに関わるキャラクターでもない限りは、性格が変わることは無いとみていいのだろう。


 自分が前を歩いて案内してくれるエネット殿の後姿を見ながらそんなことを考えていると、解体所へとたどり着いた。


「おう、エネット、どうした? そいつは新しい冒険者か?」


「あ、いえ……実はこちらの方は変装したオースさんでして……」


「あぁん? これがあの坊主?」


「うむ、久しぶりであるダグマル殿、元気そうで何よりだ……訳あって今はこのような格好をしているが許してほしい」


「ほう、確かにこの喋り方は坊主だな……おめぇも元気そうで何よりだ……ま、冒険者には色々あるから俺は詳しく事情を聞いたりしねぇよ……それより今回の獲物はなんだ?」


「話が早くて助かる……今回の獲物はこんな感じだ」


 —— ドサドサ ——


 自分は解体所の親方と簡単な挨拶を交わすと、亜空間倉庫から持っていた獣や魔物の亡骸の中からメタルウォーリアの素材を除いてその場に出現させた。


「ギガントにグリズリーに、これはラフレシアじゃねぇか……相変わらずとんでもねぇ素材を持ってきやがる……坊主、お前本当にFランク冒険者か?」


「いや、この間Eランクに昇格した」


「Eランクでも成果が身の丈にあってねぇのは変わらねぇよアホ……んで、解体した素材はどうする?」


「今回は全部換金する、あーいや、やはり魔石だけもらっておこう」


「了解、宿に届けるか?」


「そうだな、明日そのまま出発するかもしれないし、〈旅鳥の止まり木〉まで頼む」


「かぁー、Eランクに昇格してもあの宿屋を使ってんのか……フランツもそうだが、あの平凡な宿のどこがいいのかねー……って、んなこと言ったらカロリーナにどやされるか、がっはっは」


 自分はそうして久しぶりに会った親方や、親方に呼ばれてやってきた作業員と少し雑談して素材の査定を待ち、査定が終わると別れの挨拶をしてギルドのエントランスへと戻り、受付で納品した素材分のお金を受け取った。


 今回の収入は、ギルドが受け取る手数料を引いて、金貨一枚と大銀貨五枚と少し、という内容だった。


 普通に冒険者として生活をする分には十分な金額だが、新たな装備を整えるには今の手持ちと合わせても少々心もとないな……うーむ……。


「そうだ……錬金術の検証中にアーリー殿がシャンプーの開発に成功していたし、彼女を連れてファビオ殿のところへ行ったら、製造法を買い取ってもらえるかもしれないな」


 自分はまだ足りないであろう装備の購入費用を調達するために、アーリー殿を連れてファビオ殿の元へ行くことを決め、まずは彼女を迎えにアドーレ殿の薬屋〈魔女の釜〉へと向かうことにした。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×50,000〉〈薪×83〉〈小石×1,040〉〈布×110〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1605日分〉〈保存食×96〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×619〉〈獣生肉(上)×600〉〈鶏生肉×41〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×69〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×6〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×7〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×12〉〈大銀貨×11〉〈銀貨×12〉〈大銅貨×5〉〈銅貨×3〉

〈金属巨人の屍×1〉〈スライムの粘液×100〉


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