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第百三十九話 新たな仲間三人の検証

 

 メタルウォーリアを撃退し、ジェラード地下遺跡から脱出した日。


 遺跡の出口があったのはジェラード大森林の奥深くで、出迎えてくれたのは、そこに生息するAランク級の獣や魔物の群れという盛大な歓迎具合だったが、メタルウォーリアを何とか倒した後で同レベルの大軍を相手にする体力が残っているはずもなく、自分たちは残る力を全て逃走に注いで、何とか森の中央部から脱する。


 自分が彼らの気を逸らすために、料理に使っていなかった、匂いがきつかったり硬すぎたりする低ランクの獣肉をバラまき……。


 アーリー殿が、彼らの進行を防いだり邪魔したりするために、鼻の曲がるような悪臭が一週間は取れない香水や、水分が抜けて乾ききるまで延々とヌルヌルする潤滑剤、シュワシュワとはじける音がなぜか爆竹並みの爆音な炭酸水など、研究過程で生まれた様々な失敗作ポーションを投げつけ……。


 それでも追ってくる敵は、自分が魔力や体力の回復ポーションでドーピングしながら、派手で足止め効果のある魔法を連発して進行を阻止した。


 効果的な魔法を精度よく放つならカヤ殿の方が適任だが、彼女はメタルウォーリア戦での魔力切れ時に状態異常として付与される魔力疲労状態になっており、アクセル殿に背負われているのが精いっぱいだったし、そこまで精密でない魔法であれば純粋に魔力量が多く状態異常にも耐性がある自分の方が適任だ。


 まぁ、そんな自分も、カヤ殿と同じくらい足の遅いアーリー殿を背負いながら走っているのだが……。


 ヴィーコ殿は、一人で走る分には問題ないが、人を背負って険しい森の中を走ったり、Aランクの獣や魔物を相手に足止めしたり出来るほどまだ冒険に慣れていなかったし……。


 ロシー殿とカイ殿は、腕力や体力的には人ひとりを背負って走れる素質は十分あったが、その身長的に、彼らが彼女を背負ったら引きずって走ることになっただろうからな。


 唯一、グリィ殿になら任せられる可能性もあったが、彼女には同じく足止めとして、縦横無尽に動き回り、彼らに直接攻撃を加えたり、進行方向にある木を倒したりすることで活躍してもらっていたので、ポーションをバラまくアーリー殿をそんな彼女の背に乗せたら、ポーションの被害も縦横無尽になる未来が待っていたことだろう。


 自分たちにも危険なポーションの雨が降り注ぐ中で逃げるという、難易度ベリーハードな逃走イベントも是非検証してみたいところだが、今はストーリーイベント優先……自分たちは可能な限り効果的な選択をして、全員で無事に森の中央から抜けたのだ……。


 中央部から外れてさえしまえば、このジェラード大森林自体はジェラード大草原……通称、竜の休息地で検証する際に、ついでによく薬草や食料を集める、資源が豊富な森である。


 それでもCランク級くらいまでの獣や魔物が出たりはするが、それくらいなら少し他の仲間と比べてレベルが低いロシー殿やカイ殿、ヴィーコ殿のレベリングに役立つ、いい経験値と、それなりの金額で売れる素材である。


 とりあえず目指していた竜の休息地までの道中……自分たちは特に問題なく、寝るときは交代で見張りをしながら、一日半ほどかけて、ジェラード大森林を抜けた。


 そして、やっと安心して眠れる、スライムくらいしか出てこないその草原で、一晩明かした翌日……。


「「うぎゃぁぁあああ!!」」


 小鳥のさえずりが聞こえる朝の爽やかな空気を切り裂くように、草原に張られたいくつかのテントで、蛙を踏みつけたような悲鳴が響き渡った……。


 付近にいる人物がその声に対して反応する様子は様々だ。


 自分はいつも通り大の字で草原に寝転がったまま、大量のスライムに押しつぶされつつも【超観測】で周囲の状況を確認していて……グリィ殿もいつも通り、近くの木のそれなりに太い枝の上で、いびきをかきながら器用に睡眠を続けている。


 金属鎧をまとったアクセル殿は、準備万端でいつでも助けに駆けつけられる体勢を取りつつも、ピンチになるまでは手を貸さないように言ったことを守ってくれているようで、すぐには行動に移らず、心配そうに彼らの様子を見守っている。


 そして、アーリー殿とカヤ殿の二人は、今もテントで仲良く手を繋ぎながら未だに静かに寝息を立てており、そんな彼女たちのテントにはその辺のなまくら刀では歯が立たないであろう堅牢な魔法障壁が張られていた……。


 おそらく二人を守っている魔法障壁には防音効果もあるのだろう……悲鳴の上がったあたりから、怒鳴り声と共に何かを叩いたり切りつけたりするような戦闘音が響いているが、全く起きる様子は無い。


「ふむ……あの魔法障壁、発動しているのはカヤ殿だが、アーリー殿も魔力を提供しているな……」


 きっと事前にこうなることを予想して、寝るときから手をつないで二人で発動し続けているのだろう……確かに二人で魔力を共有すればそれだけ使える魔力は増えるし、二人ともアーリー殿が作った魔力回復速度を上げるポーションを飲んでから寝たようだが……それでも、朝になってもあの強度を保っていられるのは流石としか言いようがない。


 ずっと発動させ続けているせいで二人とも魔法系のスキル経験値も入り続けているようで、寝る前よりも魔力の最大値が増えており、その数値は王族の血を引くアクセル殿に追いつきそうだ。


「……っと、感心している場合ではなかったな」


 自分は上に乗っていたスライムを吹き飛ばしながら飛び起きると、何とか耐えているが流石に数の暴力で押され気味の新たな仲間三人の元へ駆け寄り、アクセル殿に声をかける。


「アクセル殿はヴィーコ殿、自分はロシー殿とカイ殿の方でいこう……邪魔な数匹くらいなら倒してしまってもいいのだが、出来ればコツを教えて、彼自身に倒させてあげて欲しい」


「承知した」


 二人で頷くと、それぞれ助けに入る仲間の元へと向かう。


 遺跡を出てからヴィーコ殿が使っている武器は、レイピアのような細い剣……決闘用のものでなく、実践でも使える、自分がレイピアと聞いて思い浮かべるそれと比べると太く厚みがある剣のようだが、形状からして切るよりも刺す方が適している剣であることには違いない。


 だが、相手はサイズが小さく物理耐性を持っているスライムということで……外したり掠ったりして総ダメージが低くなることを警戒しているのか、その本来の刺突力を活かさず、切るような攻撃で地味でも確実なダメージを負わせているようだ。


 あれではダメージを負わせることは出来ても、いつまでたっても全体的なスライムの数が減らず、ジリ貧の状態が続くだけだと思うが、アクセル殿が入ってヘイトを稼いでくれれば、野外での戦闘自体には慣れてきているヴィーコ殿にも余裕が出来て、確実に一体ずつ倒していくことが出来るだろう。


 問題は自分が向かっているロシー殿とカイ殿の方で……。


「うりゃぁああ!!」


「とりゃぁあああ!!」


 二人が使っている武器は、武器というか、いや、もはや武器ではなく、金属の塊そのもの……。


 冒険者でも騎士でもない二人は武器なんて持っていなかったので、今二人が使っているのは、メタルウォーリアを分解して得た手ごろなパーツだ。


 二人とも、一般人では振り上げることすらできないであろう重さの、それなりに大きなパーツを選んだので、武器の攻撃力としては申し分ないのだが……。


「何よこいつ! プニプニしてて、殴っても全然効かないじゃない!」


「くそー、地面に押しつぶそうとしてもダメだ! 地面も土だし、こいつらの弾力じゃ埋まるだけでつぶれないぜ」


 今回は戦う相手と、環境が悪いな……森で出会った弱い獣や、旅の途中で出会うかもしれない盗賊相手なら簡単に撃退できる、いや、そんなものを軽々と振り回す子供が現れただけで逃げるだろうが……今回は物理耐性がかなり高く、逆に逃げるような知能がないスライムだ。


 どれだけ強い力で殴っても、横に払えば何もない後方へと飛んでいき、縦に振ってもそれほど固くない地面にめり込むだけである。


 そう……後ろに固いものが無いからいけないのだ。


「ロシー殿、カイ殿……出来るか分からないが、二人で息を合わせて、両側から挟み込むように叩いたら、逃げ場がなくてつぶれるのではないか?」


「え? ちょっと、何言ってんのよ! アンタ、近くにいるならそんなこと言ってないで手伝いなさいよ!」


「ふむ……まぁ、どうしてもというのであればすぐに手伝ってもいいが、もうギブアップということでいいのか?」


「はぁああ? ギブアップですってえ? そんなわけないじゃない! カイ! やるわよ!」


「おい! ちょっと姉ちゃん! 安い挑発に乗んなよ! そんなの急に言われて出来るわけないだろ?」


「出来るか出来ないかじゃない! や・る・の!!」


「くっそー! 出来なくても文句言うなよなー?」


 双子はそう決意を固めると、それからは、たまに外して金属同士がぶつかった振動で手を痺れさせるような場面が何度かありながらも、文句を言い合い、喧嘩しつつ、一匹、また一匹と、当たりさえすれば一撃必殺の威力で次々とスライムを倒していった。


 危なければ手を貸そうと思っていたが、結局自分がロシー殿とカイ殿に手を貸すことはなかったし、後で聞いたところ、アクセル殿も実際にスライムを倒すのはヴィーコ殿に全て任せることが出来たそうだ。


 うむ……レベルもそれなりに上がってきたし、今回の新たな仲間三人も他の仲間と同じくらい活躍してくれそうだな。


 自分はこれからの冒険に希望を抱きつつ、今まで寝ていて特に何もしていなかったグリィ殿の提案で、通過儀礼を突破した歓迎会と称し、青空の下、広い草原の中心で、ささやかなバーベキューパーティーを開いたのだった。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×50,000〉〈薪×83〉〈小石×1,040〉〈布×110〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1605日分〉〈保存食×96〉

〈獣生肉(下)×1500〉〈獣生肉(中)×619〉〈獣生肉(上)×600〉〈鶏生肉×41〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×3〉〈魔力回復ポーション×2〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉

〈金属巨人の屍×1〉〈狼の屍×12〉〈猪の屍×4〉〈大蜥蜴の屍×1〉〈大猿の屍×3〉

〈大熊の屍×1〉〈大毒蛙の屍×4〉〈巨大毒花の屍×1〉〈スライムの粘液×100〉


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