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第百三十七話 遺跡の中ボス戦で検証 その三

本編では珍しくヴィーコ視点になりました。

 

 ボクは、夢でも見ているのか……?


 あの巨大な金属の塊の攻撃を受けて壁に叩きつけられ、土埃から現れた壁の凹みから平気そうに現れたあいつは、そのまま何事もなかったかのようにグリィ嬢と一緒にまたメタルウォーリアに飛び掛かっていった……。


 しかも……木刀で。


 つい数分前の作戦会議中、攻撃役に立候補したあいつが、金属鎧どころか革鎧すら持っておらず、武器も木刀だけだと聞いた時は、ふざけているのかと怒鳴りつけたが……。


 グリィ嬢を含めて周りのやつらが心配していなかったように、あいつは金が無いとか油断しているとかいう理由で持っていないのではなく、必要ないから自分の意思で持っていなかったのだ。


 初めて戦う魔動生物の、予測不能で縦横無尽な動きに翻弄され、関節部への攻撃はなかなか通らず、致命的なダメージは与えられていないものの、あいつの攻撃は装甲の厚い部分で受け止められても、その装甲を傷つけている。


 メタルウォーリアの装甲には、ミスリルも含まれているのだぞ? その装甲を木刀で傷つけるなんて、Sランク冒険者でも出来る人物が限られてくる芸当だ……。


 あいつは……やはり化け物か。


 共に戦っているグリィ嬢も、作戦会議の時は代わりにボクが出ると熱弁したものだが、今では、ボクでは彼女の代わりなど務められないだろうと……公爵家の人間として、ひとりの男として悔しいが、そう思えてしまうほどに、彼女の強さを理解してしまった。


 アクセル殿下も、補助魔法で助力されているとはいえ、あのメタルウォーリアの攻撃を、一切のダメージを負うこともなく受け流し続けているのは、尋常ではない技術と集中力だ。


 アーリーとかいう錬金術師も、国の研究機関に所属する研究員でもそんなものを作れた人物はいないだろうポーションをいくつも持っているようだし……。


 地味で目立っていないが、カヤという魔術師がアクセル殿下にかけ続けている補助魔法は、彼の動きに合わせて追い風を作り身体能力以上の敏捷力を生み出す魔法と、身体や鎧、メイスや盾の表面を沿うように膜のような魔法障壁を展開させる魔法の二つ。


 構造が複雑になりすぎて、魔法研究院でもどちらか片方を発動させるだけでも苦労するであろうそれらを、二つ同時に、しかも戦闘が始まってからずっとかけ続けているなんて、いったいどこの王宮魔術師だと言いたくなる力量だ。


 今、この状況で自分にもっとも近い存在は、遺憾ながら、隣で同じように階段の段差に身を潜め、目の前で起きている戦闘のレベルに驚愕しているハーフドワーフの二人ということになるだろう。


 あいつの冒険者パーティーに所属している者は、グリィ嬢を含めて、規格外だ。


 Aランクパーティーが四人いれば出来るときいて、だったら自分たちなら出来ると言っていたあいつの判断は嘘ではない……確かに、それだけの実力を既に持っている。


 Eランクの冒険者が、Aランクの実力を持っているのは、普通に考えれば十分おかしなことだろう……。


 ……だが、それは、まだ納得できる範囲内だ。


 あいつだけは……そのおかしな冒険者パーティーを作った、オースとかいうあいつ自身は、その常識の枠に収まらないほど、ずば抜けておかしい。


 一介の冒険者が、その王子本人も変人とはいえ、王族であるアクセル殿下を冒険者パーティーの仲間として従えているのもおかしいし、グリィ嬢はもちろん、カヤという女生徒も確か貴族ということだっただろう? 貴族をこれほどまでに従えている冒険者パーティーなど、そうそう見かけない。


 グリィ嬢が入学するという噂を仕入れて、同じタイミングで受けた王立学校の入学受験で、あろうことかこのボクに武器を突き付けて人質とし、学園長室に飛び込んで入学させろと脅迫し始めた時から、あいつのことはヤバい奴だと思っていたが、その度合いは再会するたびに高まる一方だ。


 やはりあいつは伝承にある魔族で、人族を滅ぼすためにこの国に潜り込んでいるに違いない……伝承によれば、魔族は人族の何倍も力を持ち、身体能力も魔力量も、人族とは比べ物にならないらしいからな……。


 くっ……何故このことに気づいているのがボクだけなんだ……。


 国王も父上も、何故かあいつのことをグラヴィーナ帝国の第三王子だと言って、あいつが城や学校で好き放題やっていても見てみぬふりをする……。


 ジェラード王国の公爵家長男であるこのボクに、出会ったその日にいきなり武器を突き付けてくるなど、いくらグラヴィーナ帝国が【戦いと開拓の国】と言われているとはいえ、利口で誇り高い王族がそんなことをするわけがないだろう。


 このままでは、国王や父上、あいつが仲間に引き入れた冒険者パーティーを含む、学校の連中がそうであるように、この国の民も次々にそんなわけの分からない認識妨害の幻術に踊らされて、ジェラード王国全体が……果ては、人族全体が洗脳、支配されてしまうこととなりかねない。


 どうにかしなければ……。


 この真実に唯一気づいているこのボクが……ジェラード王国の公爵家、その長男であるこのボクが、この事態をなんとかしなければ……。


 ……だが、今はまだ駄目だ。


 —— カキンッ ——


 また、あいつがメタルウォーリアに攻撃を阻まれ、しかし、その装甲に傷をつけた音が鳴り響く……。


 傷は浅い……だが、それを何度も繰り返されれば、少しずつでも確実に敵の装甲は脆くなっていくし、それに、魔動生物との戦いに慣れてきたのか、あいつの動きはだんだんとよくなってきている。


 その証拠に、メタルウォーリアもあいつを最優先の障害と認識したのだろう……グリィ嬢への攻撃は一切なくなり、先ほどからずっとその金属の巨人の攻撃対象に選ばれているのはあいつだけだ。


 だが、そのあいつへ向けられた攻撃も、アクセル殿下が盾で受け流すことで共に避け、一度攻撃を受けて以来、ずっと無傷を保っている。


 そう、今この戦闘において……そして、おそらくこの旅の目的、ジェラード王国とソメール教国の戦争を止めることに関して、あいつの力は無くてはならないものだ。


「くっ……」


 ボクは自身の力の無さを悔やみ、拳を強く握る……。


 何が、ジェラード王国の未来を担う公爵家の長男だ……何が、グリィ嬢を守らなくてはだ……。


 今、守られているのは、ボクの方だ……。


 悔しい……。


 公爵家の長男として、これでもそれなりに努力はしてきた……。


 剣の腕を磨くことはもちろん、魔法や、魔物に関する勉強だってしてきた……。


 だが、きっと……どこか世界を、甘く見ていた……。


 父上が国王の弟ということで、王族の血をそれなりに濃く受け継いでいる者として、幼いころから周りの大人よりも魔力量が多かった……だからかは知らないが、剣の上達も早かったし、物覚えも良かった。


 その結果、小さい頃は、一緒に遊んでいた子供たちの中でも、ヴェルンヘルと並んで、グリィ嬢やその姉妹を守る兄貴分的な存在だったし、剣や勉強の出来を褒められることはあっても、貶されることはなかった。


 それが、当たり前だと思っていたし、実際、そんな日常が当たり前の世界にいたのだ……。


「今思えば、生ぬるい、ぬるま湯の中で育ったということなのだろうな……」


 その証拠に、ある日急に冒険者になると言って家を飛び出し、ボクの前から姿を消したグリィ嬢が、今はボクよりも強くなっている。


 頭の成長がそれに追いついていないのは可愛らしい部分だが、それでも、だからこそ、男として、守る側ではなく守られる側に追いやられているのは悔しいだろう。


 聞くところによると、グリィ嬢がその実力を伸ばしていったのは、あいつが彼女を冒険者パーティーの仲間として加えてかららしい。


 そして、あいつの側にいるやつらは、グリィ嬢だけでなく、ハーフエルフも落ちこぼれ貴族も、Aランク冒険者並みの強さを手に入れている……。


 あいつの修行が相当厳しいのか、強さを手に入れるための悪魔の契約をさせられているのか、その真相はまだ分からないが……あいつの側にいれば、その力を手に入れることは事実のようだ。


 だったら、この機会を利用して、ボクもあいつから力を手に入れてやる。


 それがたとえ悪魔の契約だったとしても、やがてあいつを倒すために、今は少しでも早く力を身に着けなければならない……。


 ……愛する国民と、一人の女性を守るためにも。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1626日分〉〈保存食×110〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×614〉〈鶏生肉×48〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×6〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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[良い点] イイハナシダナー [一言] ぼっちゃんぼっちゃん悪魔を倒すために悪魔と契約したらダメでしょ…
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