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第百三十六話 遺跡の中ボス戦で検証 その二

 

 それは、まさしく金属の巨人。


 全長は三メートルほどだと聞くと、そんなものかと思うかもしれないが、実際に縦幅も横幅も三メートルの金属の塊を目の前にしてみて欲しい……デカい、と、そう思わずにはいられないだろう。


 まぁ、自分たちはまだ、階段を登り切ったあたりで段差の陰からそろりと覗いている段階なので、目の前にはしていないが、その威圧感は遠目で見ても伝わってくる。


 こちらが目視した瞬間に襲い掛かってくるという想定もしていたが、幸い、相手がこちらに背を向けているからか、この場所が索敵範囲外なのか、まだこちらには全く気付いていない様子である。


 頭部が無く、どちらかといえば上半身に比重が置かれている、分厚い胴体に太い手足をもったその金属巨人は、胸部、腹部、肩、上腕、前腕、大腿、下腿が大きな球となっていて、それぞれの関節部が小さな球で繋がっているようなデザインだ。


 おそらく、シンプルな制御回路で、なるべく防御性能の高い形を目指した結果、そういった形に至ったのだろう……。


【超観測】でその構造を解析したところ、攻防の要なのだろう大きな球体は表面の金属部が分厚く、強度が高いが、関節部の小さい球体は、その部位を細かく制御するために内部にそれなりに複雑な制御回路が含まれているせいか、守りを厚くするより狙われにくいようにすることが選ばれたのか、表面の金属部は薄い作りとなっている。


 なので攻略法的には、作戦会議中でも話されていた通り、その装甲が薄く破壊すればそこから先が動かなくなる関節部を、金属を切断できるほどの力で攻撃する、それだけだ。


 攻撃力的にも、命中力的にも、自分やグリィ殿であればその役を買って出ることは出来るであろうが……問題は相手の素早さだな。


 実際のところは戦闘が始まってみなければ分からないが、【鑑定】で確認できるステータスを見る限り、自分やグリィ殿よりは遅いようだが、他の面々とはいい勝負といった、かなり高い数値である。


 カヤ殿が魔法で素早さや物理防御を上昇させるようなバフをかけたアクセル殿に、回避タンクとして敵の攻撃を引き付けてもらう予定ではあるが、ゲームによくある挑発系のスキルを自分も含めて誰も持っていないし、そもそも存在するかもわからない。


 付近にいる敵対生物の人数が増えることで、単純に攻撃対象の選択肢は増えると思うが、だからと言ってそれだけでは、自分やグリィ殿が攻撃に集中できるほどこちらへの攻撃頻度を下げることは難しいだろう。


 だから……。


「行くぞ」


「「了解」」


 アクセル殿が号令をかけると同時に、自ら敵に向かって突撃する。


「メタルウォーリア! こっちだ!」


 そして、その金属の巨人を通り過ぎると目の前へ躍り出て、大声で声をかけると同時に、手に持っていたポーションの瓶を投げつけ、盾を構えた。


 ……瞬間、大きな爆発音と、強い炎の光と同時に、まだ隠れているこちらまで吹き荒れる爆風。


 アーリー殿お手製の対象指定爆発ポーションで、瓶が割れて最初に触れた対象の魔力を感知し、その魔力を持つ物体以外……つまり、投げた人物どころか周囲の仲間も爆炎の被害がない大爆発を発生させるという、なんともゲーム的な攻撃ポーションを、アクセル殿がメタルウォーリアに投げつけたのだ。


 純粋な攻撃力として換算される爆炎の被害が無くとも、その爆発によって生まれた爆風や光の効果は周囲にも適用されるので、光が眩しかったり土埃が舞ったりはするが、それくらいなら基礎ステータスがバランスよく高いアクセル殿であればなんてことない。


 そして……。


 —— グゴゴゴゴゴゴ ——


 そこでやっと反応を示し、どうやらアクセル殿を敵対勢力と認識したらしいメタルウォーリアは、煙の中から咆哮とも聞こえる奇妙な機械音を発して、アクセル殿にその鉄の拳を突き出した。


 煙の中から突然現れる金属の塊……その速度は金属巨人の大きな図体には見合わずステータス通りかなり素早い攻撃だったが、しかし、アクセル殿が盾を構えていたのは、爆風を遮るためではなく、相手の攻撃に対処するため……思い切り横へ飛びながらその拳を盾で叩きつけるようにして躱し、同時にこちらへ声をかける。


「今だ!」


 金属の巨人が放った拳は、先ほどまでアクセル殿がいた地面を叩き、自然の岩より遥かに丈夫な遺跡の床を砕く……そして……。


「くらいなさいっ!」


 アクセル殿の声に反応してすぐに飛び出したアーリー殿が、その地面に叩きつけられた拳に向かっていくつものポーションを同時に投げ、拳や周囲の地面に当たって砕け散った……割れた瓶からは粘性のある液体が撒き散らされている。


 —— グゴゴゴ ——


 金属の巨人は異変を察したのだろう……その粘性のある液体にまみれた拳を引き上げようとしたようだが、周囲の液体を引っ張るように少し持ち上がるだけで、地面からも拳からも剥がれないその瞬間粘着スライム液が、それ以上の動きを許しはしなかった。


「今よ!」


「うむ」「了解っす!」


 アーリー殿のバトンタッチで、次に出るのは自分とグリィ殿……。


 そう、本来メタルウォーリアは、熟練の冒険者が四人……関節部を的確に攻撃できる二人と、その彼らを巨人の攻撃から守る二人によって討伐する魔動生物だ。


 そして、こちらには攻撃を受け止めるタンク役が出来る人物がアクセル殿一人しかいない……アーリー殿とカヤ殿はダメージやサポート特化で防御力は低いし、ロシー殿やカイ殿、ヴィーコ殿などの新人メンバー三人に至っては、まだ攻撃役としても防御役としてもこの戦闘に参加できるほどステータスが高くない。


 こちらが防御役を増やすことは出来ない……。


 だが……だったら、相手に攻撃の頻度を減らしてもらえばいいのだ。


 おそらく魔法でも似たようなことは出来るのだろうが、魔法で足止めするとなったら発動している間中ずっと集中していないといけない……。


 だが、ポーションなら、使ったら消費してしまうので数は限られているものの、一度当ててしまえば特にその後何もしなくても効果は持続する。


 だから、敵の片手を封じるのはアーリー殿に任せて、カヤ殿には、自由に動いて的確に自分やグリィ殿に向く攻撃をガードできるアクセル殿の強化に回ってもらったのだ。


 ……まぁ、一般的な錬金術師は、まず相手の動きを封じるポーションを作ろうと思うことすらないだろうし、それをメタルウォーリア級のステータスを持った相手の動きを封じることが出来るレベルに仕上げるなんてやらないだろうから、これは常軌を逸した錬金術研究欲があるアーリー殿がいる自分たちのパーティーにしかできない芸当だろうが。


 —— カキンッ ——


「およ?」


 しかし、これで戦う舞台は整ったとは言っても、敵もそう簡単にはやられてくれないようだ……。


 野生の動物的な動きとも異なり、人間の関節の可動領域も無視したその魔動生物は、頭部がないことからうすうす察してはいたが、アクセル殿が躍り出た側の胸部にも特に目に当たる視覚センサーのようなものは見当たらず、そもそも正面と背面の区別も特に無いようで、アクセル殿の反対側から迫るグリィ殿の攻撃を振り返ることなく防ぐ。


「なら……こっちはどうだ」


 グリィ殿が腕を切り落とそうと肩口の関節部を狙ったところを、この金属巨人は身体を少し捻ることで丈夫な胸部で受け止め防いだので、だったら、体重を支えるためにあまり機敏には動かせないだろう足の関節を狙い、低い姿勢を維持したまま素早く切りかかる。


 しかし……。


 その攻撃を相手の関節部に叩き込もうとしたタイミングより早く、逆に相手の蹴りが飛んできたことで、自分は木刀を構えた体勢のまま鈍い音と共に蹴り飛ばされ、飛び掛かった方向とは逆のベクトルでそのまま遺跡の壁に叩きつけられた。


「オースさん!」「オース君!」


 派手に吹き飛んだことで、こちらを心配してくれる二人……。


 グリィ殿は敵の胸部を蹴りつけて距離を取ると自分の元へ駆け寄り、アクセル殿がその彼女を守るように自分たちとメタルウォーリアの間に割り込んで盾を構える。


「オースさん、大丈夫っすか!」


 土煙が立ち込める自分がぶつかったその場所へグリィ殿が心配そうに声をかけてくれるが、いつものようにスキルを制限していない自分ならとにかく、今の自分はスキルを全力解放しているので耐えられないほどではない。


 凹み崩れた遺跡の壁に、大の字で半分めり込んでいる自分は、薄れてきた土煙の中から、その壁にめり込んだ状態のまま、奴と戦うときの新たな注意点を伝えた。


「ふむ……どうやら奴は鈍重そうに見えて足の動きも素早いようだな」


「……はぁ……なんか呆れるくらいピンピンしてるっすね……」


「うむ」


 まぁ、骨折などの大きな怪我は無いとはいえ、軽い打撲や切り傷などの小さな怪我はそれなりにあって体力は減っているので、めり込んでいた壁から抜け出すと、念のため体力回復ポーションをひとつ飲んで、ついでにもうひとつ開けて頭からかぶっておく。


 そうして、簡易的な怪我の処置が終わり、グリィ殿に頷くと、改めて二人で武器を構え、アクセル殿が抑えてくれているメタルウォーリアへと突撃していった……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1626日分〉〈保存食×110〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×614〉〈鶏生肉×48〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×6〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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