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第百三十五話 遺跡の中ボス戦で検証 その一

 

 ジェラード地下遺跡、北東の出口付近。


 地階から地上階へと向かう階段を登り、そろそろ地上階へたどり着くタイミングで、自分たちはこれから始まるであろう戦闘のため、休憩も兼ねて一度立ち止まり、作戦会議を開いていた。


「……それで、この階段を登り切った先にある広間に、遺跡の守護者と思われる強力な気配が一つあるということだったか」


「うむ」


 作戦会議の進行役は、この旅の間はリーダーということになっているアクセル殿だ。


 だからと言ってアクセル殿が一人で全ての行動を考えて指示するわけではなく、他のメンバーが考えた意見が採用されることもあるだろうが、その意見を採用するかしないかなど、最終的に判断して決定を下すのは彼の役割である。


 なので、自分が何らかの意見を通したい場合は、進言する意見と共に、その意見を採用するに足るデータや事例など、根拠となる情報も一緒に伝えるのが定石だろう。


 自分はアクセル殿に情報を求められると、自分の考える作戦を伝えるために【鑑定】で分かっている敵の名前や特徴などを伝えた。


「メタルウォーリアだと? 貴様、それは知っている魔動生物の名前をただ口にしているだけではないだろうな」


 その情報に対して、アクセル殿よりも先に反応したのはヴィーコ殿だった。


 彼はその敵について何か知っているようで、それほど有名なのか、自分がただ知っている敵の名前をテキトーに選んで言っているだけだとも疑っているようだが、残念ながらまだ自分はこの世界の魔物の情報は積極的に集めていないので、【鑑定】で得た情報しか持っていない。


「魔動生物?」


「なんだ? 魔動生物も知らないのか? というか、だったら何故この先にいるのがそいつだと分かる? まさか、偽情報でボクやアクセル殿下のことを騙そうとしているわけじゃないだろうな……」


「いや、そんなつもりはないので安心してほしい、自分がこの先にいる敵の情報を把握しているのは……勇者の力だ」


「はんっ、またそれか……勇者の力と、そういえば何でも済むと思っているのか?」


 うーむ、まぁ、説明できないスキルのことを勇者の力で片付けようとしているのは否定できない……。


 だが、今は仕方がないだろう……今まで高ランク冒険者も貴族も王族も、数々の人物を【鑑定】してみたが、自分と同じようにこの鑑定系スキルを持っているキャラクターはいなかったからな……。


 このスキルは元々、亜空間倉庫にアイテムを格納してその効果が分かったことから、発想を得て手に入れたスキルだし、その元となる亜空間倉庫に関しては、スキル欄にも表示されないからな……勇者の力かどうかはともかく、自分のようなプレイヤーしか使えない能力であることは間違いないだろう。


「まぁまぁヴィーコ君、今はオース君がどうやってこの情報を得ているかについては置いておこうじゃないか……それよりも、問題はその遺跡の守護者に対してどう戦うか、あるいは戦わずに突破するか、だ」


「そんなの、戦闘も突破も、どちらも諦めて帰るに決まっているだろう? いくらパーティーに王族や貴族が多いからと言って、本当にそこにいるのがメタルウォーリアだったら、相手は熟練のAランク冒険者が四人以上いてやっとどうにかなる魔動生物だ……まだ魔法も戦闘も勉強中の学生なら束になったって足止めすらできないで終わるのがオチだ」


「ほう、ヴィーコ君はやけに魔動生物に詳しいんだな……僕もそれなりに勉強はしているけど、魔物や魔動生物の強さを冒険者と比べて正確に測れるほどじゃない」


「ふんっ、まぁ、ボクは開拓事業を取り仕切る公爵家の長男だからね、未開拓の遺跡に生息する魔動生物だけじゃなく、野山に出没する魔物に関しても一通り勉強しているつもりだ」


 ふむ……ヴィーコ殿はライバルを自称することもない、ただの咬ませ犬キャラクターのような役割だと思っていたが、敵の情報を教えてくれるお助けキャラクターだったか……これは考えを改めなければならないな。


 人には意外な特技があるものだとはよくいうが、色々な人を見下して、いつも偉そうにしている彼が、実は自分の家の仕事に対して勉強熱心な性格だったとは……人とはなかなか分からないものである。


 自分はメモ欄に書いていたヴィーコ殿のキャラクター情報を少し訂正すると、偉そうなのは変わらないが、どこか少し誇らしげで得意げに敵の情報を喋り出す彼の説明を大人しく聞いておくことにした……。


 彼の説明によると、未開拓の遺跡には、古代人が作った人造の警備兵が今もまだ稼働していることがあるらしく、彼らは魔石に込められた魔力をエネルギーとして動いていることから、魔動生物と総称されているらしい。


 魔動生物には、身体が木で作られているものから、岩や金属で作られているものまで様々な種類が存在して、[メタルウォーリア]はその金属で作られている魔動生物の中でも強さ的に上位にランクインする、全長三メートルほどの金属巨人とのこと。


 手足がある人型の魔動生物ではあるが、特殊な武器は持っておらず、しかし、その巨体から繰り出される金属の拳は、頑丈な遺跡の壁さえ易々と破壊する威力だそうだ。


 全身が金属なので防御力も高く、剣や斧など刃のある武器では相手を傷つけるどころか武器の刃が欠けてしまうし、魔法による攻撃でも、炎の魔法を長時間連続で当て続ければダメージが通るようになるが、狭い遺跡の中でそんなことをすれば周囲の温度もすさまじいことになって味方にも悪影響を及ぼす……。


 ヴィーコ殿が最初に戦わずに帰った方がいいと言ったように、素人では本当に手のつけようのない、殆ど無敵と言っても過言ではない相手らしい。


「ははは……それは何とも……遺跡の守護者らしい相手だな……」


「そうっすね……刃のついた武器が効かないなら、それこそ私の攻撃じゃ文字通り歯が立たないっすね」


「お役に立てるかと思ってここまで付いてきましたが、魔法との相性も悪いようですし、わたしもあまりお力になれなさそうです……」


 ヴィーコ殿の説明に、アクセル殿も、グリィ殿も、カヤ殿も自信を無くし、他の面々も不安な表情を浮かべている……。


 まぁ、今聞いたことだけを受け入れるなら、本当に隙のない、自分たちでは全くかなわなそうな相手に聞こえるから当然だろう……だが……。


「……先ほど、熟練のAランク冒険者なら四人いれば倒せるとも言っていただろう? だったら、絶対に倒せない相手というわけではないということだ」


 ヴィーコ殿は、先ほど確かに、Aランク冒険者が四人以上いればどうにかなると言っていた……だったら、倒す術が全くないというわけでもないだろうし、むしろ、そういう強力な敵を相手取って開拓を進めるのがヴィーコ殿の家系なら、その先人の知恵を蓄積し、対策も練ってあるのだろう。


「だから無理だと言っているだろう? 熟練の冒険者ならできるというのは、熟練の冒険者にしかできないのと同じことだ、彼らにはできてもボクたちにできるわけが……」


「ヴィーコ君、とても困難なことはもう十分に伝わったから、先人がその困難にどう立ち向かったか教えてほしい……どれだけ難しいことでも、僕は前に進まなくてはならないんだ」


「……」


「……」


「はぁ……分かった、教えてやろう……それを聞いて絶望しても知らんがな」


「助かる」


 ヴィーコ殿は、おそらく自分自身や、グリィ殿を始めとするジェラード王国の住人の安全を思ってだろう、突破できる可能性を提示することなく引き返させようとしていたようだが、同じように自国の民を想うアクセル殿の真剣な眼差しに当てられたからか、ひとつため息をついてからその情報を開示した。


「メタルウォーリアなどの金属の魔動生物を倒せるのは……刃のある武器だけだ」


「……」


「……」


「……は?」


「そう、刃、だ」


「うーん、いや、さっきの『は』は、疑問を表す『は』だったのだが……まぁ、それは置いておくとして……ヴィーコ君、君は先程、金属の魔動生物に刃のついた武器は効かないと言っていなかったか?」


「ああ、そうだ……奴らに刃のついた武器は基本的には効かない……だが、奴らを倒せるのは刃のついた武器だけだ」


 ふむ……何とも謎なぞのように聞こえる攻略法だな。


 しかし、急な謎なぞに困惑するパーティーメンバーの面々も、続けて詳しく説明してくれたヴイーコ殿の話しによって、なるほどと納得した顔になる。


 その内容は、実際に聞いてみれば何てことはない、一般的な全身に金属鎧を身に纏った人間を相手にするときと同じようなものだった。


 ただ純粋に、防御力の低い『間接部』を狙う……それだけだ。


 だが、だからこそ……奇を衒った裏技のような攻略法ではなく、王道を突き進む愚直な方法だからこそ、ヴィーコ殿が無理だと言っていた理由がよく分かる。


 それを成し遂げる方法は、奇抜な案や相違工夫された道具や罠、相手の弱点を見事についた魔法ではなく、前衛の純粋な力量だ。


 当たれば一溜りもない相手の攻撃を掻い潜り、人と異なり怯むことのないその巨体の間接部を、的確に、鋭く、他の部位よりも多少は脆いと言えど、金属を切断するような威力で攻撃しなければならない。


 確かに、そんな芸当をやってのけるのは、攻防のバランスが取れて息の合った熟練の冒険者パーティーくらいだろう。


「ふむ……」


「だから言っただろう? ボクたちには……」


「……それなら何とかなりそうであるな」


「そうそう、それくらいなんとか……え?」


 確かに厳しい戦いであることには違いないだろう……だが、不可能でないことがわかった。


 それに、自分達は熟練と言うほど長く冒険者活動をしているわけではないが、そのステータスは何故か熟練者に負けないくらい高い。


 何より、その対金属魔動生物の要となるであろう我がチームの近接戦闘エースは……。


「? 私の顔になんかついてるっすか?」


「うむ、出口に向かい始めたときから口元に食べカスがついているな」


「うっ……気づいてたなら早く言って欲しいっす!」


 グリィ殿は、敵の弱点を的確に攻撃する怪力娘なのだから。


「ふむ……なるほど……よし」


 厳しい戦いにはなるだろう……だが、決して無理難題ではない。


 これから始まる、遺跡脱出の中ボス戦……。


 自分は、今一度パーティーメンバーのステータスを確認し、それぞれの持っている道具を聞いて、そこから導き出される最適な立ち回りをアクセル殿と一緒に考え、指示すると、祖父上から貰った木刀を腰に携え、階段の上へと歩き出した。


「さぁ……検証開始だ」


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1626日分〉〈保存食×110〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×614〉〈鶏生肉×48〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×8〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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