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第百二十七話 仲間集めで検証 その一

 

「……こちらに騎士の姿はない、そちらはどうだ?」


「こちらも問題ない」


「よし、先へ進もう」


「うむ」


 時間帯と連動して明かりが調整される遺跡の天井が、月光から日の出へとその色味や光加減を変動させている中……自分とアクセル殿は、騎士の駐在所に隣接している拘置所から脱出し、冒険者学科の生徒たちが割り当てられた宿舎へと進んでいた……。


 自分は自身の荷物が常に全て亜空間倉庫に入っているので問題ないが、アクセル殿は大事なものこそ魔法鞄に格納して持ち歩いているが、王都から遺跡に来るまでに身に着けていた鎧や武器は、流石に鞄には入らないので宿舎に置いてきているから、今はそれを取りに行くところである。


 まぁ、別に武器や鎧なら遺跡を脱出してからソメール教国までの道中で買ってもいいのだが、そうなると遺跡を出てから一番近い街まで無防備な状態で過ごさなくてはならないし、アクセル殿の武器や鎧はかなり強力な魔法が付与されているので、それを置いて行ってしまうのは金銭的にも戦力的にも勿体ない。


 それになにより、自分はこの遺跡からソメール教国までの冒険に、自分とアクセル殿の二人だけでなく、グリィ殿たち冒険者パーティーのメンバーも連れていきたいと思っているので、まぁ状況的に一緒についてきてくれるかどうかは分からないが、声をかけるだけ声をかけてみようとは思っているのだ。


「……本当にグリィ君たちにも声をかけるのか?」


「うむ、仲間が多い方が道中で何かあった時の対応の幅が広がるだろう?」


「それはその通りだ……しかし、僕のために彼女たちに迷惑をかけるのは忍びない……」


「……まぁ、声をかけてみるだけだ……それで断られたら、このイベントで連れていけるメンバーではなかったということで諦めるさ」


「そうか、わかった……絶対に強要したりしないでくれよ」


「了解だ」


 ここからソメール教国の中央都市まで、最短でも十日はかかるらしい……。


 それほど長い冒険なら、ゲーム的に、現在の仲間の数や進行度などを考慮して、今回の冒険パーティーが自分とアクセル殿の二人だけで設定されている可能性は少ないだろう。


 もちろん、RPGではイベントで仲間が離れたり再開したりを繰り返すストーリー構成になっていたりするし、今回の旅路は一定の安全が確保されていない未開拓地の旅ではなく、むしろ開拓が進んでいて人口も多くなっているであろう方向への旅だから、戦力的にも自分とアクセル殿の二人だけで全く問題ないと思われるが……。


 だが、この冒険に同行させる仲間が増やせるのであれば、その仲間がいることによってでしか発生しないイベントがあるかもしれない……だったら、そういったイベントを余さず検証するためにも、ここで一緒についてきてくれるメンバーがいるのかどうかの確認はしておかなければならない……これは権利ではなく義務である。


 自分はそう思考をまとめると、鎧や武器などを取りに行くアクセル殿といったん別れて、まずはグリィ殿に同行の可否を確認するために、冒険者学科の女子生徒に割り当てられた宿舎へと向かったわけだが……。



「くかぁー……すぴー……むにゃむにゃ……」


「……」


 冒険者学科の女子生徒に割り当てられた、遺跡内の宿舎……。


 【超観測】スキルで人物の位置情報を表示させたマップ画面を頼りに、グリィ殿のいる部屋へと窓から忍び込むと、時間も時間なので、彼女はまだぐっすりと眠っていた。


 うーむ……おそらくこの場で料理でも始めれば、その匂いだけでグリィ殿は一瞬で目を覚ますとは思うのだが……起きた時に彼女が発するであろう大声で、周りの生徒が起き出したら面倒だな……。


 そんなことを考えながら周りを見渡すと、男子生徒に割り当てられた宿舎でもそうだったように、この部屋には彼女以外にも数人の冒険者学科女子生徒が眠っている。


 宿舎として割り当てられた建物は広めの部屋が多く、部屋の大きさによって、一部屋あたり四人から八人の生徒が眠れるようにベッドが設置されていた。


 おそらく、不足分のベッドは他の建物にあったものをここへ運んできたりしたのだろうが、この建物を含めた自分たち生徒に割り当てられた宿舎は、現世のホテルのような作りになっているので、もともと大人数が宿泊するための施設だったのだろう。


 この部屋は四人用らしく、グリィ殿は等間隔で四つ並ぶベッドの一番窓際を使っているので、口を押えるなどで発声を抑制すれば、起きるとしても隣にいる一人だけで済みそうだが……それでその一人が起きてしまったら、今度はその女生徒に対しても悲鳴を上げないよう口をふさがなければならない……うーむ、面倒だな。


 ここは二階なので、【全強化】スキルで筋力や身体能力を上げれば、人ひとり抱えた状態でも問題なく飛び降りて立ち去ることはできるだろうが……そんな姿を誰かに見られでもしたら、間違いなく騎士に報告が行って、きっと他の仲間に声をかけることが出来ないような状況になってしまう。


 どうあがいても、自分が直接この部屋で何かを行うのは危険が伴うな……。


 とすれば、自分が直接手を下さずに、それなりに離れた場所から、彼女だけを自らの足で自分の元へ来てもらうような……そんな合図が必要かもしれない。


「ふむ……試してみるか……」



 ♢ ♢ ♢



「ふが!? ご飯の時間っすか!!!!」


「んー? なーに、グリィちゃん……いきなり大声上げて……ふぁ~あ」


「なになにー、もう朝なのー? って、なによ……まだ夜明けじゃない」


 冒険者学科の女子生徒に割り当てられた宿舎の一室で、一人の女子生徒が大声を上げながら跳ね起き、その声によって同室に寝ていた女子生徒も二人ほど目を覚ます。


 しかし二人は慌てた様子もなく、まだ少し寝ぼけたような頭で声を上げた彼女の無事を確認すると、同時にその向こうで開いた窓から漏れる日の出を模した光も捉えて、まだ起きるには少し早い時間だと認識したようだ。


「くんかくんか……この匂い……間違いなく、あの料理っす……」


「匂い? スンスン……確かに、何か嗅いだことのない匂いがするわね」


「うーん、学校の食堂で嗅ぐスパイスの香りに似てるし、どこかで朝食の準備でもしてるんじゃない……? 昨日校長が言ってた無料のやつ」


「いや、これは確かまだオースさんしか作れない……んー? 私ちょっと行ってくるっす」


「行ってくるってどこに……ってグリィちゃん!? ここ二階……!」


 食べ物の匂いらしいその香りでいち早く目覚めた女子生徒は、ベッドを降りて靴を履くと、友人の制止も無視して躊躇なく開きっぱなしの窓から飛び降り、そのまま明朝の遺跡の中を駆けていった……。


「〈怪力娘〉だか〈怪物娘〉のあの子なら大丈夫でしょ……ふぁ~あ、放っておいてもう少し寝ましょうー? まぶしいからルーバー閉めといてー」


「え? あーうん、まぁそうだね、わかった」


 彼女の友人たちは、そんな彼女の奇行をそこまで気にしていないようで、一人はそのまま布団を頭までかぶって背を向き、もうひとりは窓に近づき……。


「……あれ? 私たち、窓開けたまま寝てたっけ……? うーん……まぁいっか」


 そんな一言を漏らしてから、窓の外に設置された両開きのルーバー雨戸と、上下スライド式の窓を閉めると、こちらも先ほどの出来事よりも睡眠欲の方が勝ったようで、深く考えるのをやめて自身のベッドへと戻っていった。


 この別れを最後に、彼女がしばらく消息不明になるとは想像もせずに……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1627日分〉〈保存食×110〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×615〉〈鶏生肉×50〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉〈抑制の首輪×2〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×9〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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