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第百二十四話 大きな分岐で検証 その一

 

 くつ……なんてことだ……。


 急なストーリー展開にメモを取りながらついていくだけで精いっぱいだというのに……ここにきて、こんなに大きな選択を迫られるなんて……。


 しかも、どうやら今回の選択肢には時間制限がないのか、あるいはとても長い時間が設定されているのか……自分が答えを出すまで展開を先に進めてはくれないようだ……。


 この世界の本を読んだり、アナスタシア殿やフランツ殿から教えられたりしたことで、一応、この世界にある三つの国の現状と時代背景に関して、知識としてならば少しは持ち合わせてはいるが……しかし、自分が実際に経験としてその世界観に比較的深く触れているのは、まだグラヴィーナ帝国だけである。


 なのに……この情報が不足している中で……ジェラード王国かソメール教国のどちらを味方するか選べだなんて……。


 その自分が出した答えが……。


 これから地上で起こる、戦争の行く末を左右するだなんて……。



 ♢ ♢ ♢



「ジェラード王国が、ソメール教国に対して最後通告を送った……!?」


「ああ、そして、一か月以内にこちらの交渉に応じる返事が来なければ、そのまま武力行使……戦争に突入する予定だ」


 二人の王子に自分が勇者であるかもしれないことを開示した後、そのバトンを受け取るようにヴェルンヘル殿が話し始めた内容は、なんとグラヴィーナ帝国以外の二国が開戦間近という衝撃の事実だった。


 いや……それは流石に言い過ぎだな。


 確かに、これからメインストーリーが動き始めるかもしれないというこのタイミングでそのことがヴェルンヘル殿から伝えられたことには衝撃は受けたが、ジェラード王国とソメール教国が危ない状況だったというのは、既に知っていた……というより、知らされていた。


 あれは魔法や錬金術の検証が終わった頃だったか、Eランク昇格試験の検証を始める少し前に、グラヴィーナ帝国から屋敷に乗り込んできたダーフィン殿から、そのことを聞かされていたのだ。


 来るとは聞いていたものの、訪れるのが予定より早いなとは思ったが……彼は、ジェラード王国とソメール教国の間に戦争が起こりそうだということを察知して、その情報を運んでくるとともに、そのまま自分をグラヴィーナ帝国へと連れ帰ろうとしていた。


 しかし、今こうして自分がまだジェラード王国の地下遺跡なんていう場所にいることからも分かるように、自分はその父上からの指示らしい言葉に反対して、ここに残ったのだ。


 あの時のイベントも少々大変だったな……。


 まさか屋敷の中でいきなり戦闘イベントが始まるとも思わなかったし、ダーフィン殿があんなにも強い人物だとも予想していなかった。


 ダーフィン殿は、自分がどう言葉で反対しても、力づくでも連れて帰るように言われていると言って、そこから屋敷の内装が全て吹き飛ぶほどの戦闘イベントが開始してしまったのだ。


 まぁ、ここにいる結果から分かるように、最終的には自分が勝利をおさめて、こちらの言い分を通したのだが……。


 流石はグラヴィーナ帝国で王宮魔術師として活躍していたキャラクターである……直前に魔法の検証を終わらせていなかったら、まずこのイベントを乗り越えられなかっただろう。


 結果的にその戦闘では勝って、自分のわがままを通せてはいるが、その内容は、決して胸を張って勝利したとは言えないものだったからな。


 確かに、王族の血筋や毎日のトレーニングで鍛えた成果によって、体力も魔力も自分の方が多かったし、直前の検証で魔法の真理をいくらか暴いていたが……。


 それでも、もし、ダーフィン殿が、周囲の被害も気にせず、本気を出して戦っていたとしたら……きっと自分は勝てなかった。


 だってそうだろう……?


 魔法だけしか使ってはいけないルールではないからということで、祖父上に修行させられた剣術も含めて、スキルを全解放し……屋敷の内装が壊れるのも気にせずに、自分の持てる力をすべて使って……それでも殆どギリギリその勝利を収めたというのに……。


 屋敷の外に出た自分が目にしたのは、そこから見えるいつもの光景だったのだから……。


 それぞれの部屋を区切っていた壁がひとつも原形をとどめておらず、自分の部屋がどこにあったかも分からなくなるほど、屋敷の中はひどいありさまだったのにも関わらず……。


 屋敷を出て振り返った自分の目に映ったのは、傷一つない、いつもの屋敷の外装だった……。


 庭ももちろん……そこにいた、コンラート殿が逃がしてくれた屋敷の使用人たちも傷一つなく……何より、あれだけの大騒ぎをしたにもかかわらず、屋敷の前の道を通る住人は、何故か庭に出払っている使用人たちを不思議そうに眺めるだけで、この屋敷で先ほどまで何が起こっていたか全く気付いていない様子だった。


 そう……グラヴィーナ帝国の王宮魔術師、ダーフィン殿は……持てる全ての力を出し尽くした自分と互角の戦いを繰り広げながらも、戦闘の被害が屋敷内だけで済むように、どんな攻撃にも耐えうる保護の魔法を屋敷中に巡らせており……それだけでなく、おそらく音や光を吸収する魔法まで発動させていた……。


 そりゃあ、それだけの仕事をこなしていたら、自分の身を守る障壁に魔力を避けず、攻撃に使う意識の集中力だって落ちるだろう……。


 なのに、肉弾戦も交える自分と、一時間近く、魔法だけで戦い抜いて見せたのだ……。


 手にした武器が祖父上譲りの木刀ではあったものの、部屋の壁さえ破壊するほど魔力を纏わせたその攻撃は、何らかの魔法がかけられたダーフィン殿の杖によって軽い力で剣筋を反らされ……。


 自分が発動した、威力も範囲もマシマシの全力魔法攻撃は、まるで曲芸師に球を渡すかのように、放った先から魔法の主導権を奪われて、そのままこちらへの攻撃手段として利用される始末……。


 そのあとすぐ、威力重視の攻撃ではなく回数重視のラッシュ攻撃に切り替えたことで、何とか少しずつダメージを与えられるようになったが、僅かにでも隙を見せたとあれば、そこに、常人であればそんな短時間では構築できないであろう高度で高威力な魔法が叩き込まれる……。


 そんな、激しい攻撃の嵐を繰り出しながらも、相手の攻撃挙動も全身で感じ取らなければならない、非常に高難易度な戦いだった……。


 確かに……最終的に、戦いには勝った……。


 しかし、勝てないな……と……そんな感想を抱いた。


 いくら内側の壁が崩れても、屋敷の一番外側の壁や屋根、それを維持する柱などが崩れないことに……流石ゲームだと、そんな感想を抱いていた自分が恥ずかしい……。


 ここは、奥まった場所とはいえど、貴族街の一角だ……。


 屋敷の周囲に被害が出たりすれば……それだけで自分たちは周囲の貴族から苦情を申し入れられて、国を追い出されることになっただろう。


 自分を力づくでも連れ帰ると言っていたダーフィン殿の言葉が、その言葉通りの意味であったのであれば、そんな方法でも国に連れて帰ることが出来たはずだ。


 なのに、ダーフィン殿は、自分が戦いに勝利し、ここに残ることになるかもしれない先のことまで考えて、ここに住み続けられなくなるという結果を回避したのだ……。


 他の副次効果は排除して、ただ、戦闘の結果だけで合否を決める……そういう仕様のイベントなのだと言われればそれまでだが……自分はそれだけではない、彼の生き様と言えるような何かを見た気がする……。


 だって、後から屋敷を出てきたダーフィン殿は、そんな景色を見て呆気に取られている自分に対して、「強くなりましたな殿下」と褒め、「ちと疲れたので、一緒にお茶でも飲みながら休憩しませんか」と言って、ほほ笑んだのだ……。


 そして、その微笑みに招かれたのは、内装が完璧に修復された屋敷の中だったのだ……。


 王宮魔術師というのは、ここまで強い人間なのか……?


 そして、従者というのは、ここまで主人のために尽くす存在なのか……?


 本当に敵わない……。


 改めてそう思った自分は、ダーフィン殿と一緒に、クラリッサ殿が淹れてくれた温かい緑茶を飲み、約束した……。


 今は帰らないが、学校を卒業したら、必ずグラヴィーナ帝国に帰る、と。


 たとえ戦争が起きようと、ドラゴンが現れようと、絶対に生き残って、必ず帰る、と……。


 何故そんなことを約束したかって……? そんなのは決まっている。


 ……死亡フラグの検証もしようと思ったからだ。


「ふむ……なるほど……よし」


「クラリッサ殿に、パイナップル入りサラダの作り方も教えておこう……」


 この戦争イベントで果たして生き残れるのか、楽しみである。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1627日分〉〈保存食×90〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×615〉〈鶏生肉×50〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×9〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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