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第百二十一話 ルート変更で検証

 

 ふむ……よく分からないが、新マップに来たのでいつも通り壁などの当たり判定を調べる検証をしていたところ、何やらまた大きなイベントに遭遇したようだ。


 ジェラード地下遺跡の入り口に近い区域にある、騎士の駐在所として利用されている大きめの建物……。


 日中、今日から始まった王立学校の授業でもある、ジェラード王国が行っている遺跡調査の手伝いを行う中で、指定された区画や指定されていない区画の、指示された調査や指示されていない調査を進める検証を行っていたのだが……。


 その日の授業の終わりに、国からの指示ということで、学校の生徒は全員、この遺跡調査の手伝いが終わるまでは自宅へ帰らず遺跡の中で過ごすことになるという、謎のイベントが発生し、それぞれのクラスで男女別に割り当てられた調査済みの建物で寝泊まりすることとなった。


 まぁ、自分は別に枕が変わっても眠れる人間なので、寝る場所が変わるくらい別にどうでも良いのだが、問題はその夜……。


 遺跡に入ってきたときには地下都市全体を照らすほど明るかった天井の光は、時間帯に連動して昼や夕方、夜を演出して色味や光加減が移り変わるようで、今は月光が夜の地下都市をうっすらと照らすような光となっている時間帯……。


 話を聞いている限り、ここを含めた遺跡というジャンルの区画は一般人が気軽に立ち入れる場所ではないらしいし、もしかするとこのマップは、一度イベントを進めたら二度と入ることはできない類のマップかもしれない……。


 そう思った自分が、こうして遺跡に寝泊まりできて、夜もこの新マップで活動できる機会が与えられているのだからと、今のうちに建物の壁にポリゴンの隙間がないかの検証でも進めておいた方がいいだろうと行動を始めるのは自然な流れだろう……。


 だから、出入り口を見張っていた騎士を二階の窓から出ることでやりすごし、冒険者学科の一年生男子に割り当てられた建物から出て……他の建物や遺跡の壁の当たり判定を確認しながら、遺跡の入り口付近に向かって進んでいくという行為は、何もおかしなことはない。


 そして、その検証途中で遺跡の警備として見回りをしていた騎士に発見されて捕まってしまうのも自然な流れだろう……。


 警備の人数が少ない建物は【諜報術】スキルなどで足音や気配を消すことでやり過ごせたが、流石に見張りの数が多い騎士の駐在所という建物の検証は、気配を消す程度ではどうにもならなかったらしく、中央に近い建物の壁にゴリゴリと頭を擦り付けながら歩いていたところで、進行方向の角から出てきた騎士と目が合ってしまった。


 見つかってしまったものがしょうがないので、そのついでに、普通に挨拶をして何食わぬ顔で通り過ぎようとすれば逃れられないだろうかとか、ただトイレに行く途中で道に迷ったのだと言い訳できないだろうかと、色々と検証してみたのだが、どれもダメ……。


 そんなことはしていないのだが、壁に耳を当てて部屋の中の会話を盗み聞きしていたのだろうと問い詰められたので、あえて「そうだ」と答えたところ、応援を呼ばれて複数人がかりで取り押さえられ、連行されてしまったというわけだ。


 スキルをフルで使用すれば逃れられたかもしれないが、駐在所の会話内容を盗み聞きしている怪しい人物がいれば捕まるだろうという、意図していなかった検証項目が埋められたことだし、このままどこかの諜報員のふりをしていたらどんなイベントが発生するのかも気になるということで、とりあえずそのまま連行されることにした。


 そう……自分としては、このジェラード地下遺跡という新マップで、プレイヤーに与えられた自由時間を使い、この場所で行える小さな検証をただコツコツと進めていただけのつもりだったのだ。


「よう、久しぶりだな」


「!? オース君、なぜ君がここに……」


 しかし、連行された先は、拘置所などの未決拘禁者を収容する施設などではなく、この場所に用のある客人が通されるのであろう応接室で……そこにはなんと、授業終わりに挨拶をしていたヴェルンヘル殿下と、今回の授業で別のチームになってしまったアクセル殿がいた……。


「うーむ……どうなっているのだ? これはいったい何のイベントが発生しているのだ?」


「何のイベントだって聞かれると、お前のことは気まぐれで通してみただけだから特に何でもないんだが……まぁ、あえて言葉にするなら、三か国の第三王子、ここに集結! って感じか? ハッハッハ」


「? ジェラード王国の王子……確かに僕はソメール教国の第三王子で、君はジェラード王国の第三王子だが、ここにその二人が揃っているからと言って、三か国の第三王子が集結しているというのは少し大げさな物言いではないか?」


「おっと? あー……オース、話してなかったのか?」


「うむ、まぁ、そうであるな……だが、必死に隠していたわけでもないからな、別に大丈夫だ」


「???」


 ふむ……。


 急な展開過ぎて本当に全くついていけていないのだが、確かにヴェルンヘル殿の言う通り、ここにジェラード王国、グラヴィーナ帝国、ソメール教国の三か国の第三王子が集結している……。


 そして、メインイベントが進んでしまうのを先延ばしにしようとアクセル殿に打ち明けていなかった、自分が魔力の豊富な王族であるという事実を、こんなにあっさりと話されてしまった……。


 うーむ……これは、検証中に思わぬイベントに遭遇してしまったな……。


 遺跡に泊まることになった初日の夜に抜け出して駐在所に行くことでのみ発生するような、隠しイベント的存在なのか、遺跡調査期間中の夜に出歩くだけで遭遇するような、確定イベントなのか……はたまた、そういった条件を満たしても発生するのは確率によって決まるような、ランダムイベントなのか……。


 これがどんな種類のイベントなのは分からないが、とりあえず集まっているキャラクターがキャラクターであるし、ジェラード王国の王からの指示で遺跡から出られなくなっているという状況だ……これはそれなりに大きなイベントだろう。


 タイミングを逃したり確率だったりするイベントの可能性もあるし、そう考えると取り逃さなくてよかったという気持ちも湧かなくもないが、アクセル殿に自分が多くの魔力を持つことがバレたとなると、メインストーリーが進んでしまう気がするな……。


 ……というか、このイベントは何だか、プレイヤーがメインストーリーを進行せずにはいられない状況を作り出そうという、ゲーム制作陣の強い力が働いているようにも感じる。


 ゲーム内で一定の期間が経過すると必ず状況が動くように作られているのか、プレイヤーが一定期間メインクエストを放置しているとこういったイベントが発生するのか……特に前触れもなく、偶然発生したことを考えると、そんな類のイベントのようにも思えるが……まぁ、そんなのは後で備考欄にメモしておけばいいか。


 発生してしまったものは仕方ないし、バレてしまったのも仕方ない。


 アクセル殿はまだヴェルンヘル殿の言葉を完全には呑み込んでいないようなので、ごまかそうと思えば、まだごまかせるのかもしれないが、せっかくこんなイベントに遭遇したのだ……そのままこのイベントを進めて、その検証をするとしよう。


 メインクエストの方に引っ張られてしまうと、前回グラヴィーナ帝国へ行くことになった時と同じように、またしばらく冒険者の検証が出来なくなる予感もあるが……まぁ、どんなイベントを発生させると強制的にそちらのルートに進まされてしまうのかを覚えておけば、二周目ではそのイベントを避ける検証ができるからな。


 心残りと言えば、この遺跡の検証も始めたばかりで、洗い出した検証項目の一割も達成できていないことも気になるが……他にも一週目では無理だと判断して二周目に回している検証はたくさんあるし、ここはレアイベントかもしれないこちらの検証を優先するべきだろう。


 そして、どうせメインストーリーを進めることになるなら……。


「ふむ……なるほど……よし」


「アクセル殿、今まで黙っていたが、自分はグラヴィーナ帝国の第三王子で……」


「……ついでに言うと、輪廻の勇者でもある」


 勇者であることも告げて一気に進めてしまった方が効率的だろう。


「……」


「……」


「「えぇぇええええ!?!?」」


 一瞬の静寂の後、ヴェルンヘル殿とアクセル殿が同時に驚きの声をあげる……。


 流石に勇者であるというカミングアウトは予想していなかったようで、アクセル殿だけでなくヴェルンヘル殿まで驚かせてしまったようだが、どうせメインストーリールートの検証を進めることになるなら効率的に進行していった方がいい。


 自分はそうしてこのルート変更に対する意思を固めると、せっかく各国の王子が集まっているこの状況を活かして、ずっと気になっていた、勇者とはどんな役割を持つものなのかなどの、メインストーリーに関わるであろう情報を二人に聞いてみた……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1627日分〉〈保存食×90〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×615〉〈鶏生肉×50〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×90〉〈本×110〉〈遺物×10〉

〈体力回復ポーション×9〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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