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第百十八話 遺跡調査で検証 その三

 

「……この班の担当は、この建物から調査を始めて、終わったら一軒隣、それが終わったらその隣と、ここから一軒ずつ北東に進んでいくことになっている……道中で何度も説明したが、魔法の品や書物などを発見したら、詳しく調べずにそのまま私に持ってこい、分かったな」


「「はーい(っす)」」


「……はぁ……こりゃあ思っていた以上に子守りって感じの任務だな」


 長い階段を下りて、下層にたどり着いた後、自分たち王立学校の生徒は各調査チームに案内役兼見張り役の騎士が一人つけられ、その騎士に率いられる形で、それぞれ調査を担当する場所へと移動した。


 そして、他の生徒たちと分かれる直前にも思ったのだが、このチームは……全体的に年齢が低い。


 学校への提出書類的には、このメンバーは公爵家の長男であるヴィーコ殿が集めたということになっているため、今のメンバーで許されているのだろうが、他のチームを見る限り、その殆どは上級生なども交えた年齢的にもバランスの取れたチームとなっており、一年生だけで構成されたチームは見る限り自分たちのチームだけだった。


 その中でもロシー殿とカイ殿は年齢も十五歳で、この世界ではその年齢で成人ということらしいが、身長的にも振る舞い的にも子供っぽいからな……担当の騎士が案内役というよりも保護者役のように感じてしまうのは仕方のないことだろう。


 一応、自分とアーリー殿、カヤ殿は十六歳で、グリィ殿とヴィーコ殿は十七歳ではあるのだが……この世界での年齢は数え年だから、現実世界の基準で考えると実際には一つか二つ下の年齢であるし……。


 この中では年長であるはずのグリィ殿が、気が合うのか何なのか、ロシー殿とカイ殿と既に仲良くなって、もう一人の姉弟のようになっているから、それはもう、このチームだけ小学校の遠足と言われても違和感がない雰囲気だ。


 まぁ、おかげで保護者役の騎士の注意は彼女たち三人に向いているし、自分はその間にじっくりと遺跡の検証をするとしよう。


「へー、これが古代文明の住居なのねー、あたしたちが今使ってる家具と形が似ているものもあるけど、やっぱり材質はどれもみたことのないものだわ」


「ふむ……そうだな……アーリー殿、試しに用途の分からない家具をあの魔法で調べてみたらどうだ?」


「そうね、ちょっと試してみましょうか」


 調査チームで分かれて最初の建物を探索しているとき、立ち寄った部屋にいたアーリー殿がそんなひとり言を零していたので、自分は彼女が魔法の検証中に習得したひとつの魔法を使ってみるように提案した。


 調合や錬金術のことを考えている時は、親しい人に聞いてもいない考察を早口で喋り続けたり、声をかるまで食事や睡眠を忘れて研究に没頭してしまったりする彼女だが、基本的には冷静で、年上であるはずのグリィ殿よりも大人な対応をしたりする。


 ロシー殿やカイ殿と幼馴染ということなので、昔から彼らのお姉さん的な存在として行動させられてきたことが、主な要因になっているのかもしれない。


「【マテリアル・アナライズ】」


 そんな今は冷静モードのアーリー殿が、鞄から取り出したスクロールを開いて、それを家具に向けながら魔法の発動句を唱える。


 ピカッ……と、そのスクロールから一瞬だけ眩しい光が発せられて、魔法の対象となった家具を照らすが……その後は特に何も起きず、初めてこの魔法を見た人は不発だったと思いそうな静寂が訪れた……。


 しかし、その魔法は確かに発動が成功しており、魔法の効果は実際にその使用したスクロールに現れているのだ。


「うーん、だめね……やっぱりモノに使っても、その素材とか素材の効果が分かるだけで、使用用途とかは分からないわ」


「ふむ……やはり魔法とスキルは違うか……」


 そう言ってアーリー殿が見せてくれたスクロールには、彼女の言う通りその家具がどんな素材で作られているかと、どの素材がどんな効果を持つかだけが記されていた。


 魔法を、魔法陣が描かれた紙、それを筒状に丸めたスクロールで発動させるのは、この世界ではコストの問題を考えるとなかなか珍しいのだが、そもそも彼女は魔法使いじゃなく、錬金術師である。


 エルフの血を継いでいるハーフエルフだからかなのか、一応、彼女は魔法使いとしても十分に活躍できるほどの魔力を持っているのだが、彼女曰く「そんなことに魔力を使うなら、その分を錬金術の研究に充てたいわ」とのことで、魔法使いの道を目指すつもりはないらしい。


 それでも鞄の中にいくつか魔法を発動させるためのスクロールが入って入るのだが、その理由は、彼女がスクロール作成に必要な紙もインクも錬金術で作れるからである。


 この世界でスクロールが好まれない一番の理由は、そのスクロールを作るのに特別な紙とインクが必要で、その紙とインクを作るためには高度な錬金術の知識や技術が必要というわけなのだが……彼女の場合はそれを自給自足出来てしまうので、その理由は適用されないのだ。


 紙やインクを作るための材料も、繊維質の植物や染料になる花などは一緒に竜の休息地に通っていた時に大量に手に入れていたし、油に関しては解体所で獣油が格安で手に入れられるから何も問題ない。


 それに、この先ほど彼女が使用した【マテリアル・アナライズ】という、材料を鑑定する魔法に関しては、どちらにせよ鑑定結果を紙や木版などに焼き付かせる必要があるので、魔法を発動した際に魔法陣が消えてただの紙になるスクロールの仕様が合っているのだ。


 本来は、彼女の祖母であるアドーレ殿の薬屋にも置いてあったように、薬の材料や、出来上がった薬の効果を調べるための魔道具として組み込まれる魔法だからな……それを単体で持ち運べるようにするためには、そういった工夫が必要だったということもある。


「っていうか、何よこの〈再生物質〉って、そんな物質、見たことも聞いたこともないわよ……それに、効果としては、頑丈で、熱にも強い代わりに、魔力を真っすぐ通すことが出来ないって……なんか盾とかにしたら最強な素材に思えるんだけど、何で家具なのよ」


「ふむ……名前から察するに、本来は捨ててゴミになるはずだったものを再利用して作られた素材ということなのだろう……この街の壁や天井も同じ素材のようだし、この遺跡自体が地上で使われていた技術の副産物、といったところか」


「王都よりも遥かに発展してるこの遺跡が、ただの副産物? はぁー……古代文明はとんでもなく発展してるって聞いてたけど……本当にとんでもないわね」


 鑑定を発動させたところ、その再生物質というのがこの遺跡の殆どを構成しているようで、それが自分たちの世界で言う再生紙、再生プラスチック、再生繊維のようなものだとするのであれば、この地下都市を作った時にはそれ以上の品質の何かがあったということだろう。


 見た目や表面のざらつきなどの特徴から、現実世界のファイバーボードのようにも感じなくもないが、触れた時に感じる冷たさが純粋な木材より大きく、しかし金属かと問われると、そこまで熱伝導率は高くない気がするし、何よりも重量が金属にしては軽い。


 金属の重さとしてパッと思いつくのが鉄なので、アルミニウムやマグネシウムよりも軽いかは分からないが、単純な木材やプラスチックよりは重いとしても、鉄よりは軽いと感じる。


 一体どんなものを原料にどんな加工法でこのようなものを作っているのか気になるところではあるが、とりあえず直近の検証項目としては、この新たな素材がどの程度の耐久力を持つのかを確かめたいところだな……。


「ふむ……」


 そう考えた自分は、スッと亜空間倉庫から祖父上譲りの木刀を取り出すと、【全強化】【武器マスター】【武術】スキルを発動させ、木刀に魔力を流しつつ、その腕を振り上げて……。


 —— ガシッ ゴツンッ ——


 背後から何者かにその振り上げた腕を掴まれ、そのまま頭にゲンコツを叩きつけられた……。


「……痛いではないか、フランツ殿」


「痛いじゃねぇ! 何しようとしてんだ坊主!」


 まぁ、オフにしていた【超観測】を発動させるまでもなく、このタイミングでいきなり自分の頭にゲンコツを振り下ろしてくるのはフランツ殿しかいないのだが……。


 しかし、毎回毎回、自分が何か検証をしようとするたびに現れるのは、このゲームの仕様なのだろうか……。


 器物破損の検証ということであれば、既にグリィ殿が最初に調査しようとしたクローゼットの扉を勢いよく開けすぎて蝶番を破壊していて……その検証結果として、調査開始時から数分もたたないうちから、ロープでぐるぐる巻きにされて天井からつるされた状態で、以降、ずっとインテリアの一部になっている……。


 なので、自分としては、騎士に目をつけられていない状況であれば、そういった結果を回避できると思ったのだが……そうはいかないらしいな。


 騎士がいないところでも、事前に受けた注意を守らないと、どこからともなくフランツ殿がやってきて、その行動を制止される、と……うむ、まぁ検証結果としては妥当なところだろう。


 しかし、それであればアーリー殿も先ほど自分の横で、おそらくこの素材の熱耐久か分解耐性の検証に取り掛かるべく、魔法鞄から錬金器具を取り出していたのだが……。


 ふむ……いつの間にかいなくなっているな……どうやら自分をおとりにして一人で先に逃げ出したらしい。


「フランツ殿、とりあえず自分はこれからこの家具の耐久力を確認する検証……いや、調査をしたいのだが……」


 —— ゴツンッ ——


「言い直したって駄目だ! 検証だろうと調査だろうと、物は壊すなって最初に注意を受けただろ! ……ったく、グリィの嬢ちゃんはさっそくやらかしたみたいだし、今も俺が見回りに来るタイミングが遅かったら……はぁ……お前は、俺が来るまでに何か壊してないだろうな?」


「そんなに心配しなくても大丈夫である、まだ何も壊していない」


 —— ゴツンッ ——


「『まだ』じゃねぇ! 今後も壊すな! はぁ……このチームが心配過ぎてここより前のチームは見回りをなるべく早く済ませてきたが、正解だったな……」


「うーむ、まぁ、全体的に年齢が低いチームだからな、フランツ殿が心配するのも仕方ないだろう」


「いや、年齢が低いのも気になりはするが、俺が一番心配してんのはお前だ」


「ふむ?」


 よく分からないが、フランツ殿は学校の先生たちの間で割り当てられたいくつかのチームの中から、他のチームの見回りの時間を削って、その分を自分やグリィ殿がいるチームの監視に充てているらしい。


 先生がひとつのチームをそんなに優遇してもいいのか疑問だが、まぁ先ほども思った通り、このチームは一年生だけで構成された、全体的に年齢が低くなっているチームだからな……仕方ない、ここはいったん引き下がろう。


 本当は物理的な耐久力を検証した後、素材の説明にあった魔法耐性を検証するべく、覚えたての魔法を思いつく限り叩きつけてみようと思っていたのだが……それもまた今度だな。


 共に行動する仲間も場所も異なるが、一応、今は授業中だ……。


 冒険者学科の授業中は、授業のルールを守らなければフランツ殿のゲンコツが飛んでくるということは、今までの授業で検証済みである……やるとしたら、休み時間か放課後だろう。


 自分はそう考えをまとめると、まだ怪しんでいるフランツ殿の視線を受けながら、建物の探索に戻っていった。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1627日分〉〈保存食×90〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×615〉〈鶏生肉×50〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×100〉〈本×100〉

〈体力回復ポーション×9〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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