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第百十五話 Eランク昇格試験で検証

 

 ジェラード王国、王都、冒険者ギルドの一室。


 試験がない普段は会議室として使われているのであろうその部屋には、制服を着た数人の冒険者ギルド職員と、自分と同じくらいの年齢に見える若い冒険者が二十人ほど集まっていた。


「筆記試験、始め!」


 冒険者ギルド職員のひとりがそんな掛け声を発すると同時に、若い冒険者組は一斉にペンを取って、目の前に二枚ある紙のうち片方に目を通し、もう片方の紙に何かを書き込み始める……。


 ……自分を除いて。


「ふむ……」


 自分が今日ここに来たのは、冒険者ギルドのランクをEランクに上げるための昇格試験を受けるため……そしてその昇格試験は、筆記試験、実技試験、面接の三つに分かれており、今はその最初の試験、筆記試験の時間である。


 問題内容としては、以前聞いていた通り、王立学校の冒険者学科に入学するときに受けた試験と似た……冒険者ギルドで定められた規則の穴埋め問題と、こんな状況に陥ったらどんな行動を取るか、というような、例題となるシチュエーションに合った正しい選択を文章で答えるような問題……。


 そして、Fランク昇格試験であった、計算問題や、この国の歴史の問題がなくなった代わりに、薬草の種類を答える問題や、魔法の簡単な仕組みを答える問題などがいくつか追加されている。


 つまり何が言いたいのかというと……今、学校でさらにその先の内容まで学んでいる自分にとって、簡単すぎる試験なのだ。


 やはり、冒険者ルートを進んでいる途中で、グラヴィーナ帝国に呼ばれて王族ルートに入ってしまったからだろうか……。


 あの時点でEランク昇格試験を受けられるだけのギルド貢献ポイントは貯まっていたし、実際にグリィ殿は自分が離れている間に、何度も落とされつつも、しかし最終的には受かっているからな……寄り道せずに冒険者ルートを進んでいた想定よりも、難易度が大分低くなってしまっているのだろう。


 王立学校の冒険者学科へ入学するときにもそう感じたが、おそらく正規の冒険者ルートとしては、あのままEランク昇格試験も受けて合格し、その後に受けるDランク昇格試験になかなか受からないといった状況で、学校できちんと専門の先生から学ぼう、という道が開かれたりするのだと思われる。


 マップを自由に歩き回り、クエストを受ける順番も自由に選べて、各ルートを行ったり来たりすることもできるというのはオープンワールドゲームのいいところだが……。


 あまり自由な行動を取りすぎると、こういった序盤にクリアするはずの低難易度イベントを、ステータスや装備が整ってしまった後から消化することになったり、逆に本来はストーリーの後半で訪れる場所に、駆け出しの状態で足を踏み入れてしまって、今のレベルでは絶対に勝てないであろう敵にワンターンキルされたりする……。


 ……まぁ、そんなめちゃくちゃな行動をした結果、めちゃくちゃな難易度になるのも、逆にリアルで楽しいのだが。


 とりあえず、このEランク昇格試験に関して、不合格になる検証の方は、既にグリィ殿が様々なパターンを網羅してくれているということなので、自分は予定通り、全問正解の最高成績を収めて一発合格する検証をするとしよう。


 普通の成績での一発合格に関しては、きっと新しい仲間たちが検証してくれるだろうからな……うむ……検証チームの人数が増えたのは素晴らしく良いことだ。


 自分は試験の問題をのんびり眺めてそんなことを考えてから、ゆっくりと落ち着いて答案用紙を埋め始めた……。



 ♢ ♢ ♢



「おめでとうございます、Eランク昇格試験、トップ成績での合格です」


「うむ……予定通りだな」


 Eランク昇格試験を受けてから数日たち、その試験結果が発表されるということで、自分は他のパーティーメンバーと一緒に冒険者ギルドに来ていた。


 結果は予定通り、全問正解に加えて、ギルド職員の加点も限界まで取得した、これ以上ないパーフェクトな合格だ。


 今回は王都の冒険者ギルドで受けたので、アルダートンで試験を受けた時のように、それなりに仲良くなっていたミュリエル殿などの温情は無かったのだが、筆記試験では一人だけ焦らず落ち着いていて、実技試験では試験監督以上の実力を発揮し、面接ではSランク冒険者を目指しているという高い目標を掲げたことで、加点が加わったらしい。


「ほへー……オースさんって、やっぱり試験の結果はすごいんすねー」


「す、凄いです! おめでとうございます! わたしも次に試験を受けるときは頑張りますね」


「うーん、まぁ、確かに、知識も豊富で、頭の回転も早くて、戦闘能力も高いのは認めるんだけど……それでも何故かこう、いつも通りの涼しい顔でさらっとトップ合格されちゃうと、なんか納得いかないのよねー」


「はっはっは、良いではないかアーリー君、仲間が良い成績で輝かしい結果を出したのだ、仲間として素直に喜ぼう! まぁ、僕も少しオース君の実力を疑っていたのは確かだがな、はっはっは」


 一緒に来てくれたパーティーメンバーが祝福してくれている? のは、自分も素直に嬉しいが、今度はそんな彼らがEランク昇格試験を受ける番だ。


 アクセル殿も、カヤ殿も、アーリー殿も、自分やグリィ殿のように、冒険者登録した時に自身の身分を証明できないなどということは無かったので、ランクなしの無印冒険者からではなく、最初からFランク冒険者としてのスタートである。


 だから、最初に受ける試験はFランク昇格試験ではなく、自分がたった今合格したEランク昇格試験……一般的な冒険者としては正しいルートなのかもしれないが、シード権というか、なんというか、自分より優位な権利を獲得しているように思ってしまうな。


「それで、アクセル殿たちの貢献ポイントは足りていたか?」


「それだがな、先ほど受付の方に聞いたところ、僕はもうEランク昇格試験を受けられるようだが、カヤ君とアーリー君がまだ受けられないようだ」


「ふむ……まぁ、加入時期も異なれば、達成している依頼の数もズレがあるからな」


「ああ、だが、そうは言っても、達成している依頼の数に関しては、僕はこちらの用事を優先して冒険に参加していない時も多かったからな……彼女たちとそう離れていないだろう」


「うむ、そうだな……では、あと何回か依頼を達成して、三人で一緒にEランク昇格試験を受けられるようにしよう……パーティー内でなるべく歩幅を合わせておいた方がいいだろう」


「了解だ」


「あーっと……オースさん、だったら、私はなんかDランクの昇格試験をもう受けられるみたいなんすけど、歩幅を合わせるってことなら待ってた方がいいっすかね?」


「いや、グリィ殿はもうDランク昇格試験を受け始めていいぞ、おそらくグリィ殿が合格する頃には自分たちもそれくらいの貢献ポイントが貯まっているだろうから、むしろ今から受け始めてもらわないと歩幅が会わせられない」


「了解っす! ん? それってどういう……」


「よし、では、今日もたくさんの依頼を達成しよう」


「「おー!!」」


「んー? まいっか……おー! っす」


 こうして、自分たち〈世界の探究者ワールドデバッガー〉は、また一度に大量の依頼を受注し、それを近くの森や洞窟、時には竜の休息地まで足を運び、ひとつひとつ着実にこなしていく……。


 目指すはSランク冒険者……および、それまでに受けられる依頼や試験の検証。


 依頼の失敗を検証するために、グリィ殿と自分は少し先行して上のランクを獲得しているという状況もちょうどいい……活動資金を集めたり、昇格試験を受けるためのギルド貢献ポイントを貯めるための依頼は皆で受けて、人から怒られたり、手助けするどころか逆に迷惑をかけたりする検証に関しては、いつも通り自分とグリィ殿で先にやっておこう。


 そして学校を卒業するころには、Sランク冒険者になっているのだ……。


 自分はそんな検証スケジュールを立てながら、今日も冒険者の検証を進めていく……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【全耐性】:あらゆる悪影響を受けにくくなる

【全強化】:あらゆる能力が上昇する

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔術】:自分の魔力を特定の法則に則って思いのままに操れる

【錬金術】:素材と魔力で様々なものを生み出し、扱うことが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる

【古代魔術語】:古の魔法陣を読み解き、描き、呪文を詠唱することが出来る


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】

【権威を振りかざす者】

【禁断の領域に踏み入れし者】


▼アイテム一覧

〈水×26,000〉〈薪×110〉〈小石×1,070〉〈布×116〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1627日分〉〈保存食×90〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×640〉〈獣生肉(上)×615〉〈鶏生肉×50〉

〈獣の骨×710〉〈獣の爪×260〉〈獣の牙×248〉〈羽毛×40〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈宝飾品×100〉〈本×100〉

〈体力回復ポーション×9〉〈魔力回復ポーション×5〉

〈冒険者道具×1〉〈調理器具×1〉〈錬金器具×1〉〈変装道具×10〉

〈掃除道具×1〉〈茶道具×1〉〈絵画道具×1〉〈手持ち楽器×4〉

〈金貨×11〉〈大銀貨×6〉〈銀貨×7〉〈大銅貨×4〉〈銅貨×3〉


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