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第百八話 錬金術の授業で検証 その二

 

「……であるからして、通常の薬を作成する調合と、高度な薬を作成する錬金術は切っても切れない関係であり……」


 そうして始まった、錬金術の授業……。


 この授業の先生は流石にフランツ殿のパーティーのうちの誰かなどではなく、自分が会ったことも見たこともない、普通にこの学校を卒業して研究所で働いている研究者のようだ。


 授業開始前にアーリー殿に訊ねた問い……結論から言うと、保留となった。


 別に彼女が既に他の冒険者パーティーに所属しているというわけでもなく、自分と一緒に錬金術の検証をすることに関しては是非やりたいとのことだったのだが……。


 薬屋と冒険者という二つの職業が、彼女の中で結びつかなかったようだ。


 彼女が目指している薬屋という職業は、この世界では主に、調合や錬金術の知識をつかって薬を作り、それを店で販売する人物を指し……街中を駆け回って困っている人を助けたり、危険な場所に出向いて手ごわい獣や魔物を倒したりするような職業ではない……とのこと。


 確かに、自分が検証で訪れた薬を扱うお店はどこも、他の食べ物や雑貨を扱うお店と変わらず、店内に並べられている既製品を販売しているお店が多く……中には、アドーレ殿をはじめ、効能を指定して薬を調合してもらうような注文を受け付けている店もあるが、少なくとも、魔物退治を注文として受け付けている店はどこにもなかった……。


 そう……まだアイテムを売買する検証をしただけで、きちんと商品の検証をするにいたっていないが……この世界で薬屋と言えば、そういった一般的な薬の販売店や、そこで働く人物を指し、外で冒険をするような人物を指さないのだ……。


 そう、この世界では……。


 だが、思い出して欲しい……調合、錬金術と聞いて、思い浮かぶゲームの数々を……。


 それは、いったいどういったゲームシステムになっているだろうか……。


 この世界で一般的に言われている薬屋と同じく、薬を作って売るだけのゲーム?


 ……まぁ、もちろんそういったゲームもある。


 しかし、有名で人気な錬金術系のゲームを並べてみると、むしろこの世界でいう冒険者のような活動をするゲームが多かったりしないだろうか。


 日本のコンシューマ機器で出されている、錬金術を扱うゲームのなかでも有名な、あの

 アトリエと称された自分の工房を中心に物語を進めていくRPGでも、街の人から出される依頼をこなしていったり、世界中を駆け回って道中の困っている人を助けたりして……最終的には何故か、強大な敵を打ち倒し、世界を救うことになったりする。


 ……自分の中で、薬屋、錬金術師とは、ああいった人物を示すのだ。


 もちろん、その有名なゲームも含め、錬金術系のゲームの中心にあるのは、こだわりの深い錬金術システムであり、それを楽しむのが醍醐味である。


 だが、その錬金術をさらに広く深く習熟するための、冒険と素材集めもまた、錬金術系ゲームのよくある要素として認識している。


 そして、その中でも一般的に有名な部類だと思われる、あの錬金術アトリエゲームを自分が検証するとしたら……まず思い浮かぶのが、厳しい期間制限の検証。


 厳しすぎてクレームも多かったのか、シリーズ作品のうち、新しいものだと期限というゲームシステム自体が取り払われていたりするが、過去の作品からプレイしているファンの方々は、何度も、そのどうあがいても無慈悲に訪れる制限時間と、ついでにレアな効果を持つアイテムの収集に、苦渋を味わったことだろう。


 ……いや通常プレイでは問題ないのだ……普通に物語を楽しむ分には。


 だが、他の同系統のゲームでもそうだが、時間と手間をかけてキャラクターを育てれば、苦戦した強敵を瞬殺できるようになると分かると、何故かそれを目指してやりこみたくなるものだ。


 そして……その「やり込み」と「期間制限」の相性は、最悪である……。


 まぁ、あのゲームは「やり込み」「周回プレイ」「引継ぎ」という言葉がコンシューマゲーム業界で大きく流行っていた戦火の渦中にあったので、そういった作りになっていても至極当然のことなのかもしれないが、少なくとも最近のユーザー価値観からは合わないシステムになっていると感じる。


 しかし、それでも二十年以上、二十作品以上もシリーズが続いているのは、そんな鬼畜なやり込みゲームが好きな根強いファンが数多く存在しているからだろう……。


 期限が決められていて、期間内に目標を達成できないと問答無用でゲームオーバーになるとしても、二周目の引継ぎ要素も駆使すれば、最強を目指せなくはない……そして、そういったゲームが好きなプレイヤーは、期間内に最強を目指そうと、仕事に打ち込む以上の努力をしてしまうものなのだ。


 時間をかけて、知恵を絞れば、己の目標が達成できる……それがRPGのいいところであり、ゲーム開発者も大切にしているところ……。


 そして……それを実現するために、デバッガーが命を削るところである……。


 この世界に期間内に何かを達成しなければゲームオーバーというような問答無用の期間制限が設置されているかは分からないが……この学校は三年制……あえてそう設定したのか、偶然そうなっているのか……あのシリーズで多く取り入れられている最初の目標期限と同じ年数である。


 プレイしたことはないが、たしかあのシリーズの中で学校を舞台にしたタイトルも、確か三年間の授業という期限だったはずだ。


 錬金術研究学科の、三年間の授業……。


 引継ぎなしの一周目で、どこまでできるかは分からないが、だからこそ、これは絶対に検証しておくべき項目だろう……。



 ♢ ♢ ♢



 そうして、錬金術の授業の検証を始めた自分……。


 先生の話がもっともよく聞こえて、黒板の文字がもっともよく見える最前列の机で、話の流れから、アーリー殿と向い合せの席に座って授業を受けることになった。


 どの授業も、初めに行われる座学の内容というのは大体そうなのだろうが、既に試験勉強のために触れたことのある知識を復習する部分が多い。


 自分はそれでも、事前に勉強した内容と、先生が改めて教える内容に齟齬がないかの検証をしなければならないので、集中力を欠かすことなく、誰よりも真剣に先生の話に耳を傾けているのだが……教室全体の雰囲気を見ると、とても退屈な空間といった雰囲気である。


 どちらかと言えばマナーを気にしない人物が多い冒険者学科の教室と比べると、雑談などが聞こえてこないので、勉強に集中できない空間にはなっていないが……たまに教室のあちらこちらから、あくびが聞こえてくるような状況だ。


 それでも、試験対策として王都の教会でアナスタシア殿に借りたり、入学前に検証も兼ねて王都で本を取り扱っている店全てで片っ端から買い漁ったりして集めた本で、今までゲームの知識を中心に何となく行っていた調合の知識を改めて学びなおし、錬金術の基礎を軽く復習した自分にとっては、それなりに新鮮な知識……。


 新しいゲームの新しいゲームシステムに関するチュートリアル説明を受けているようなワクワク感もあり、この授業はそれほど苦には感じていない。


「……なので、錬金術の知識を持たずに普通に薬を調合している人が、意図せずに錬金術の効果が表れた薬を作ることがあったりします」


 そして、今先生が話している内容は、調合と錬金術……二つの関連性と違いについて。


 現代日本の知識でその二つを説明するなら、錬金術とは、鉛などの錆びやすい卑金属を、金などの錆びにくい貴金属に変化させる術……調合とは、二つ以上のもの、主に薬や香料、液体を組み合わせて、一つの別のものを作ることを指す。


 確かに、概要だけ抜き出すと、どちらも似たようなことを指し示し、錬金術が調合よりも目的がはっきりとしていて、より高度な技術に感じる。


 広義では、錬金術というのは、金属に限らず、様々な物質や人間の肉体や魂をも対象として、それらをより完全なものに錬成する試みで……。


 錬金術師の目標として知られる賢者の石が、卑金属を貴金属に変える霊薬と考えられたり、人間に不老不死の永遠の生命を与える万能薬と考えられたりすることから、薬を作る調合と関連付けられてもおかしくはないのかもしれない。


 しかし、実際は錬金術というのはそんなファンタジーな代物ではなく、その研究が今の科学に引き継がれ、自然科学の大本とも言われている、かなり現実に近いものだ。


 ただ、この世界での、両者の認識は大まかに分けると……。


 魔力を使わないで、素材の表面上の力を引き出す方法が調合。


 魔力を使って、素材の内面の力まで引き出す方法が錬金術。


 と、こういうことらしい。


 実にゲームらしくて分かりやすい分類だが、やはりこの学校に入って魔法が絡んできたあたりから、このゲームの妙にこだわり抜かれていたリアルさというか、現実感や臨場感といったものが少し薄れてきた気がするな……。


 そして……。


「……錬金術で何よりも重要なのが、魔法の基礎でもある四属性……複数の素材に宿るその属性の力をうまく利用して、その素材をただ混ぜるだけでは引き出せない効果を発揮させるのが、真の錬金術なのです」


 自分がその中でも、もっとも引っかかる部分が、この【四元素】の部分である。


 確かに、古代ギリシア時代から始まった古い錬金術では、万物は四元素から構成されているというアリストテレス氏含め古代ギリシアの哲学者たちの考えから、その研究が盛んになったという歴史があるにはあるが……。


 十七世紀の後半あたりからは、錬金術師で科学者でもあったロバート・ボイル氏がその考えを否定し、今の化学の授業で習う元素に近い物質の構成要素を中心とした研究になっていったはずだ。


 このゲームの今の時代的には、ちぐはぐながらも中世あたりのようなので、十七世紀に届いていないといえば、それはそうなのだが……古代の、今よりも一度発展し、滅んだ文明の知識が引き継がれているという世界設定ならば、そのあたりの知識も引き継がれていてもいいのではないだろうか……と、そう思ってしまった。


 まぁ、ゲームとして考えるのであれば、現代の百を超える数の元素はもちろん、十七世紀後半の三十三元素だとしても、覚える要素が多すぎるからな……中世の四元素あたりがちょうどいいのだろう。


 それにしても、ここでもまた、四元素か……。


 魔法の授業でも、某有名なRPGが思い出されたが、錬金術で四種類の元素が関わるといったら、それはもう、やはり少し前にも思い出した、あの錬金術ゲームを連想してしまう。


 前段階の錬金術でも、きちんと調合器具を使用して、蒸留や置換、圧搾などを利用したきちんとした調合をしていたので、まさかここにきて大きな鍋に材料を入れてかき混ぜただけで爆弾を作ったりはしないだろうが……それも面白そうだなと少し期待してしまうのは、プレイヤーとしての気持ちか、デバッガーとしての気持ちか……。


 どちらにしても、今日は座学で終わり、実際にこのゲームでの錬金術が体験できるのは次の授業以降になると思われる。


 知識を得るだけで少々退屈ではあるが、後の実習で正確な検証をするためにも、今は大人しく授業に集中しておこう……。


 自分はそんな検証に対する意気込みを胸に秘め、なるべく早くこの世界の錬金術システムを理解しようと、今以上に先生の話に真剣に耳を傾けた……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【採集】:自然物を的確に素早く採取し、集めることができる

【工作】:様々な素材を思い通りの物に加工することが出来る

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈水×34,000〉〈枯れ枝×400〉〈小石×1,690〉〈布×100〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1960日分〉〈保存食×100〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×660〉〈獣生肉(上)×950〉〈鶏生肉×200〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×949〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈変装セット×10〉〈宝飾品×100〉

〈調合セット×1〉〈調合素材×100〉〈空き容器×99〉〈本×100〉

〈上治癒薬×6〉〈特上治癒薬×3〉〈魔力回復薬×8〉〈上解毒薬×4〉〈猛毒薬×5〉

〈筋力増加薬×3〉〈精神刺激薬×3〉〈魔力生成上昇薬×8〉

〈掃除道具一式×1〉〈茶道具一式×1〉〈絵画道具一式×1〉〈手持ち楽器一式×1〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×0〉〈銀貨×0〉〈大銅貨×0〉〈銅貨×3〉


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― 新着の感想 ―
[良い点] ~ 知識を得るだけで少々退屈ではあるが、 退屈ではない(キリッ!というところから、最後に本音が漏れてしめる……思わず「やっぱり退屈なんじゃねーか!」と言わされるこの感じ。
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