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第百五話 サバイバル術の実技で検証 その三

本編には珍しく第三者視点になりました。

 

 ジェラード王国、ウェッバー村の南にある森を、さらに南に進んだ場所。


 王都を中心に広がる王直轄領と、ソメール教国との貿易を取り仕切るダルラン領の境界あたりへと、藪をかき分けながら歩いて南下してくる影が二つ……。


 先行するのは、腰の後ろに二つの鞘をクロスさせて装備し、そのうち片方のショートソードで藪を刈って道を作っていく、引き締まった身体つきの男性……〈爆炎の旋風〉所属、Bランク冒険者、〈無双の双剣使い〉ルノー。


 そして彼の後ろを行くのは、大斧を背中に背負った上で、かき分けた草をならすように大きな丸太を引きずって歩き、通ってきた道を踏み固めながら進んでいる、がっしりとした身体つきの男性……〈爆炎の旋風〉リーダー、Bランク冒険者、〈旋風の大斧使い〉フランツ。


 ジェラード王国の王立学校で、主に冒険者学科の生徒に勉強を教える講師として雇われている二人は、このウェッバー村南の森で最低限の装備と二日分の食料だけを持って一週間過ごすという、サバイバル術の実技を学ぶ授業が行われている中、その授業で組まれた四人グループの生徒がいるキャンプ地へと向かっていた……。


「ったく……何かしでかすとは思ってたが、あいつら、ろくな装備も持たねぇで、こんな奥に拠点を作ったのか?」


「ああ、一応、遠目からだが、四人ともそこにいることは確認してるから、間違いない……もっとも……あれを、ただの拠点と呼んでいいかは疑問だが……」


 日付的には、この森でサバイバル術実技の授業が開始されてから三日目。


 時間は、既に日没から大分経って、あと一時間ほどで日付が変わる頃……。


 本当は昨日までに全てのグループを周り、授業内容のひとつである、盗賊に扮した先生から荷物や拠点を守るという課題を実施する予定となっていたが、このグループだけ拠点が他の生徒たちからかなり離れていたので、このタイミングとなったのだ。


「ただの拠点と呼べない……? まぁ、テントどころかナイフも持たねぇで作る拠点なんて、拠点と言える出来じゃないだろうよ……もっとも、今頃は他のやつらの拠点も似たようなものになってるだろうがな、だっはっは」


 そして、この授業……多くの生徒は、遠足気分で簡単にクリアできる、ほとんど遊びのような授業内容だと思って挑んでいたが……実際には違う。


 授業の説明をそのまま聞けば、冒険者道具を一式、食料も二日分持った状態で、森に一週間だけ寝泊まりするように思えるが……それらの初期装備を最終日まで持っていられるなんていう説明も、先生方が襲撃でそれらを奪っていかないなんていう説明もない。


 つまり……実際には、一日目で楽勝だと判断して、ろくにサバイバル生活の下準備もしていない生徒が、二日目、あるいは三日目以降から食料と便利な道具を無くし、それらのありがたみを実感するという授業内容なのだ。


 まぁ、だが……そんなものは、それを知ってか知らずか、最初からそのどちらをも自ら手放して、勝手にサバイバル生活を始めたこのグループには関係ないこと……。


 それどころか……。


「あー、いや……それがな……なんというか……拠点と言える出来じゃないのは、まぁそうなんだけどな……」


「なんだ、思ったよりも発展してたか? まぁ、成果はともかく、もともと冒険者活動をしてるやつもいるし、他の生徒とは違って勉強熱心なやつもいるから、それなりに出来ててもおかしくないだろうがな……」


「それなりに、か……」


「ああ、流石にナイフも無じゃ出来ることがかなり限られてくるからな……俺でもサバイバルで何かひとつだけ持っていいならナイフを選ぶ……それくらい無いと何をするにも面倒だから、この襲撃でもナイフと、あと防寒具だけは取らないことにしてるしな」


「そうだよなぁ……普通に考えればそうだよな……」


「? なんだよ、なんか煮え切らねぇなぁ……そんなに普通じゃなかったのか? あー……まぁ……確かに、普通じゃないやつが一人いるから心配ではあるが……」


「まぁ、なんというか……口では説明しづらいし、見た方が早い……ほら、もうすぐ見えてくるぞ……分かってると思うが、ここからは静かにな」


「んなこたぁ言われなくたって分かってる……どれどれ……その噂の拠点の状況は……って……なっ……!」


 おそらく、ルノーが事前に注意を促さなければ、フランツはそこで声を止めずに大声で叫んでいただろう……いや、今も心の中では実際に「なんじゃこりゃぁあああ!!」と声高々に叫んでいるに違いない。


 そこにあったのは……フランツが想像していた、地面を底辺に正三角形に組まれた木の枝を草や枯葉で覆ったAフレームシェルターが焚火を囲んで四人分並んでいるだけの拠点ではなかった……。


 拠点と言える出来じゃないのは確かだったが、それは認識を下方修正するための言葉ではなく、上方修正するための言葉……。


 それはもう、一軒の家と言ってもいいのではないだろうか……。


 何をどうすれば三日でここまで発展が遂げられるのか……いや、頑張れば実現できるとしても、どんな考えをどう間違えたらそれを実行しようと思えるのか……。


 そこには、隣接する三本の木を活かし、倒木や伐採した木できちんと骨組みが組まれた、高床式の木造シェルターが建造されており……その床、地面からは屋根になっている部分に、おそらく簡単に煙でいぶって燻製にしてあるであろう獣肉が吊るされている他、近くには石や粘土で作られたのであろう簡単なかまどが設置されていた。


 見張り役であろう一人の女子生徒が丸太に座り、その燻製にさらに火を加えたのであろう骨付き肉を大事しそうに抱えながらも、木造の机に寄りかかってスヤスヤと寝息を立てているのが気になるところであるが、それはまさに森の中に建てられた一軒の家だ。


「……な? 普通じゃないだろ?」


「……ああ、普通じゃないな」


「……」


「……」


「……で、どうする? こいつらに限っては元々の目的である冒険者道具も持参した食料も自ら手放してるから持ってないわけだが……襲撃するか?」


「……いや、いいだろ……なんかもう、こいつらは勝手にやらせておこう」


「ま、そうなるよな」


「ああ……あと数日耐えられそうか確認して、ひもじい思いをしてたらアドバイスをするか、最悪少しくらい食料を恵んでやろうと思ってたが……これなら後半にもう一回確認しに来るのも無しでよさそうだな」


「そうだな」


「はぁ……グラヴィーナ帝国の武闘大会で予選に参加して、あのライヒアルトさん相手に粘ってたのも度肝を抜かれたが……こいつは本当に、何もかもとことん規格外だな……」


「その話に関しては、未だにオレはリーダーが夢でも見てただけだって思ってるけど、まぁ、このグループが規格外なのはその通りだな」


「それも本当のことなんだが……まぁいい、とりあえず帰るか」


「うぃーす、撤収―」


 そうして、フランツとルノーの二人は、特に何もせずに来た道を引き返す……。


 来るときと同じく、彼らが獣用に仕掛けたのであろう凶悪な罠の数々を慎重に避けながら……。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈水×34,000〉〈枯れ枝×400〉〈小石×1,690〉〈倒木×20〉〈布×100〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×2000日分〉〈保存食×100〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×706〉〈獣生肉(上)×993〉〈鶏生肉×242〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×949〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈変装セット×10〉〈宝飾品×100〉

〈調合セット×1〉〈調合素材×100〉〈空き容器×99〉〈本×100〉

〈上治癒薬×6〉〈特上治癒薬×3〉〈魔力回復薬×8〉〈上解毒薬×4〉〈猛毒薬×5〉

〈筋力増加薬×3〉〈精神刺激薬×3〉〈魔力生成上昇薬×8〉

〈掃除道具一式×1〉〈茶道具一式×1〉〈絵画道具一式×1〉〈手持ち楽器一式×1〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×0〉〈銀貨×0〉〈大銅貨×0〉〈銅貨×3〉


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