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第百一話 魔法基礎の座学で検証 その二

 

 様々な学科の生徒が入り混じった、魔法基礎の授業が行われる教室。


 今はその午後四枠が割り当てられた授業のうち前半二枠が終わった休み時間で、残り半分も引き続き同じ授業……つまり、自分にとっては魔法基礎の座学が行われる予定となっているわけだが……。


 この休み時間のうちに、早くも何人かの生徒は、鞄を持って、他の選択授業へと移っていったようだ。


 確かに、この週に三回ある戦闘の選択授業は、どんなタイミングで他の科目に移ってもいいとは言われているが……まさか初日の、しかも休み時間中に、もう移動が行われるとは……なかなか自由な授業形態だな。


 まぁ、だが……他の授業に移りたくなる生徒の気持ちも分からなくもない。


 魔法基礎の座学……この初日の前半に行われた授業内容は、なんというか……非常に退屈なものだった。


 それは、言うなれば……どちらかといえば歴史の授業と言えなくもない内容で……。


 この世界には基本的に【火】【風】【水】【土】の四つの属性があると考えられている、だとか……。


 創造の女神は【土】と【水】を操ることを得意とし、破壊の神は【風】と【火】を操ることを得意とし、その子供である変動の女神は【土】と【火】、循環の女神は【水】と【風】をそれぞれ得意とした、だとか……。


 だからそれら後継神がそれぞれ生み出したと言われる種族、ドワーフは【土】と【火】、エルフは【水】と【風】の魔法を扱いやすく、そうではないヒューマンはどの属性も平均的に扱える、だとか……。


 魔法の知識が全くない生徒のことを思って、本当に基礎中の基礎から教えているということなのだろうか……。


 正直に言って、魔法の研究員を目指している生徒や、戦闘で魔法を使おうと思っている冒険者、ましてや、親を含め周囲の人々が日常的に魔法を使っているであろう貴族に関しては、すでにそのあたりの知識は持っているだろう。


 何せ、今まで特に魔法を扱うことを目指してこなかった自分でさえ、一般常識や歴史の勉強として、アルダートンの教会のシスター・アナスタシア殿から何度もしつこいくらいに聞かされた内容なのだ……この世界で過ごす住民がこの年齢まで聞いたことがないということは、おそらくない。


 前半の授業を受けて出て行ってしまった生徒はきっと、授業さえ受ければ、簡単に敵を蹴散らす攻撃魔法を習得できるかもしれないと、必要以上に変な期待をしてこの授業を選択してしまっていた生徒か……もしくは、もう既に基礎的な部分は知っているから、知らない部分の授業内容になるまでは、他の科目の授業を受けようと判断した生徒か……。


 どちらにせよ、この授業の退屈さに耐えられなかったのだろう。


 自分も、既にアナスタシア殿から聞いて知っている内容だったので、授業内容として退屈さを感じることに違いはないのだが……まぁ、もともと検証というのは退屈な作業が大半だからな……ゲーム完成後に仕様書と説明書の原稿を見比べるような気持ちで、教える人物によって内容に齟齬があったりしないかの検証をしている気持だった。


 それにしても、【火】【風】【水】【土】の四元素か……。


 このゲームはどちらかといえばリアル志向による傾向があるからな……魔法にも、その古代ギリシアから百年以上も支持されていた、そんな要素を入れてきた、ということなのだろう。


 知名度の高い日本のゲームだと、対戦型格闘ゲームのような操作性のリニアモーションバトルシステムで有名な、十シリーズ以上続いてアニメ化もしているあの有名RPG作品でも取り入れられていたし、扱いやすい設定だ。


 現実で実際に使われていた、他の属性的な考え方だと、五行思想という属性区分も有名だとは思うが、ゲーム的にも現実的にも、要素が少ない方が覚えやすいからな……どちらかといえばシンプルな構成で考えられる四元素の方が、知名度が上だったり、使われやすかったりするのは仕方がない。


 まぁ、もっと子供向けのゲームや、スマートフォン向けのサクサク遊べるゲームだと、四元素でもまだ覚えにくかったり、そのまま使うとジャンケン相性にならなかったりする理由で、五行思想の【水】【木】【火】だけ切り出されて使われていたりはするが……。


 とりあえず、プレイヤー的にも、デバッガー的にも……今、気になるのは、その【相性】の部分だな。


 アナスタシア殿からも、今回の前半の授業でも、属性の種類に関する説明があったものの、その相性に関する説明がなかった……。


 ゲームで属性ときたら、相性というものが付きまといそうなものだが、まぁ中には特に相性が設定されていないゲームがあったり、そもそも四元素を自然哲学や宗教の分野でよく示される相性そのまま利用するとジャンケンではなく火が一番強く土が一番弱いような構図になってしまったりするので、この世界では採用されていない考え方なのだろうか。


 無いなら無いで、その仕様に沿って検証を進めるのでいいのだが……同じような属性を採用していても、ゲームによって相性が異なったりするから、あるなら早いうちに覚えておきたいのだが……うーむ……。


「あ、あの……」


 と、そんなことを考えていると、隣の席の……確か、カヤと名乗っていた女子生徒が話しかけてきた……。


「ふむ? なんだ?」


「そ、その……前半の授業で何か分からないこととかありましたか? あ、いえ……その……突然すみません……何か悩んでいるように見えたので……気になって……」


「いや、授業でセイディ先生が話していた部分に関しては、予習?していたからな……その点に関しては、特に分からない部分は無かったのだが……」


「え、えーと……そ、そうですよね……すみません、急に話しかけてしまって……」


「いや、問題ない……それに、悩んでいたのは事実だ……ただ、それは授業で説明があった範囲とはすこしずれた……四つあるそれぞれの属性に関して、相性のようなものは無いのかといった考え事だがな」


「相性……?」


「うむ……例えば、自分のよく知るシリーズものでは、火と水、風と土は相反していて、一方がもう一方に対して互いに強力な効果を発揮するような構図だったのだが……この世界ではそういったことはないのだろうか……と」


「あ、えと……シリーズもの? というのは、ちょっとよく分からないですけど……確かに、そういった相性があるという説を唱えていらっしゃる魔法学者さんは……過去にいらっしゃいましたね」


「なに? それは本当か?」


「え、あ、あの……はい……といっても、神の力は平等だから優劣をつけようと考えるなんて不敬だとか、そもそも出来ることが異なる属性を比較するのは間違っているとか言われて……結局そういった考えは思っても口に出さないのが暗黙のルールになっていたと思いますけど……聞いたことありませんか?」


「全く聞いたことがない、というかまぁ、暗黙のルールなら聞いたことがないのが普通だろう」


「ご、ごめんなさい……そうですよね、普通知らないですよね……すみません」


「あー、いや……別にカヤ殿に文句を言っているわけではないのだ……そんなに謝らなくていい」


「そ、そうですよね……すみません」


 うーむ……なんというか、彼女のおどおどとした態度と謝り癖がそう感じさせるのだろうか……このカヤ殿という女子生徒はなんとなくアルダートンの冒険者ギルドのエネット殿と似ているな……とまぁ、そんなことは置いておいて……。


 そうか……相性に関してこの世界では結論は出ていない、という設定なのか。


 となると、おそらく仕様的にも、属性相性は特に存在しない、といったところだろう。


 まぁ、カヤ殿が言っていたように、それが神様に対する不敬になるかどうかはともかく、出来ることが異なるものに優劣や相性をつけるのは、普通に考えて難しいからな。


 水をかけて火が消えるのは一つの結果であり、優位性ではない……強い火力であれば水の方が蒸発して霧散するし、風で火が強くなることも弱くなることもある……それに、最近の消火器の中身は液体ではなく粉末だったりするので、どちらかというと土属性と言えるかもしれない……。


 ゲーム的には、相性が決まっていた方が覚えやすいし、検証しやすいが、実際に考えるとその通りにいかないこともあるので、リアル志向なこのゲームでは相性を確定させないという道を選んだのだろう。


「ふむ、なるほど……カヤ殿、教えてくれてありがとう」


「い、いえ……私は別に……ただ知っていたことを話しただけですから……」


「そうか……ふむ? そういえば、カヤ殿はこの人から聞かされる機会がないであろう暗黙のルールのことをどうして知っていたのだ?」


「え? あ、えと……それは……その……」


 と、そんな会話をしているうちに休み時間が終わったようで、教室の入り口からセイディ殿が入ってくる……。


「はーい、みなさまお待たせしましたー、後半の授業を始めるので席について……って、あら……もう何人か移動してしまったのですね……事前に聞いてはいましたが、少し寂しいです」


「む、先生が来てしまったな……話の続きはまた今度にしよう」


「そ、そうですね」


 なので自分もカヤ殿との話を切り上げ、前に向き直る。


「後半の授業も魔法の基本的な知識……主に魔法発現の仕組み、並行して魔法陣と呪文の関係性について説明します……退屈かもしれませんが、これを理解しないと魔法をきちんと扱うことはできないので、ちゃんと聞いて覚えてくださいね?」


 ふむ……四元素の次は、魔法陣と呪文か……いよいよそれっぽくなってきたな……。


 カヤ殿が知っているらしい、授業で話されない知識に関しても気になるところだが、今は授業に集中するとしよう……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈水×34,000〉〈枯れ枝×400〉〈小石×1,690〉〈倒木×20〉〈布×100〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×2000日分〉〈保存食×100〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×706〉〈獣生肉(上)×993〉〈鶏生肉×242〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×949〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈変装セット×10〉〈宝飾品×100〉

〈調合セット×1〉〈調合素材×100〉〈空き容器×99〉〈本×100〉

〈上治癒薬×6〉〈特上治癒薬×3〉〈魔力回復薬×8〉〈上解毒薬×4〉〈猛毒薬×5〉

〈筋力増加薬×3〉〈精神刺激薬×3〉〈魔力生成上昇薬×8〉

〈掃除道具一式×1〉〈茶道具一式×1〉〈絵画道具一式×1〉〈手持ち楽器一式×1〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×0〉〈銀貨×0〉〈大銅貨×0〉〈銅貨×3〉



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