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第百話 魔法基礎の座学で検証 その一

 

 ジェラード王国、王立学校、二階の北西にあるその教室は、冒険者学科が全員集まるときに使用する一階南の大教室と比べて半分ほどの広さしかない。


 それでも一応、入ろうと思えば冒険者学科の全員が入れなくはないくらいの広さではあるのだが、実際ここにいる人数はその教室を選んだ先生方の予想が正しかったのか、少し密度は高いものの、それなりに少ない人数となっている。


「ふむ……思ったよりも魔法の授業を選択する生徒は少ないのだな」


 今日の午後は戦闘に関する選択授業……。


 選択科目としては剣や槍、格闘などの近接戦を学ぶ【近接戦闘】と、弓や投擲など遠距離攻撃や後方からの支援方法を学ぶ【後方支援】、そして火力が高い代わりに習得が難しい魔法について学ぶ【魔法基礎】の三種類から選ぶことになっており、近接攻撃も遠距離攻撃もグラヴィーナ帝国でだいたい習得している自分は迷うことなく魔法を選択した。


 ちなみに、がっつりと座学から始まるのはこの魔法の授業のみとなっており、近接戦闘に関しては自信があるという理由で、近接戦闘の授業は受ける必要がなさそうだと判断したらしいグリィ殿も、残り二種の選択肢があるうち、座学の少ない後方支援を選んだようだ。


 アクセル殿は同じ理由でいくと、近接戦闘の心得もあり、魔法も自国で学んでいるようだからグリィ殿と同じ後方支援の授業を受けるのかと思ったのだが、彼は自身の目的である貴族……もっというと魔力を多く持つものとの接触を達成するために、自分と同じく魔法基礎の授業を選択した。


 そう……この戦闘の選択授業は冒険者学科だけでなく他の学科の生徒たちも合同で行われる授業となっており、この教室にももちろん、研究・生産系の学科の生徒や、王族・貴族学科の生徒も見受けられる。


 いや、むしろこの魔法基礎の教室には冒険者学科の生徒は殆どおらず、研究系の学科と王族・貴族学科の生徒が大半を占めているようだ。


 そして他学科からも含めて、選択する生徒の数が一番多い……つまりそれだけ多くの生徒と交流して、多くの情報を集められるという理由で、近接戦闘の授業を選択したウィル殿の話によると……この魔法基礎の授業は日を追うごとにさらに人数が減り、最終的には教室に最初の半分ほどしか生徒が残らないとのことである。


 確かに、この選択授業は、どんなタイミングでも別の授業に切り替えることが可能ではあるが、だとしても、増えることもありえるであろうそのルールで、減る一方だというのは、流石は習得するのが難しいと言われているだけあるな……。


 そんなわけで、この魔法基礎の授業が行われる教室では、自分が知り合いと呼べる人物がアクセル殿しかいないわけだが……彼は彼自身の目的のために、さっさと貴族が多く集まる席にいってしまったので、現在、自分はひとりきり……。


 少し心細くはあるが、まぁ、授業が始まれば検証に集中するだろうし、そうなると、自分の行動に対してひとつひとつ注意を挟んできそうな知り合いが近くいないのは、むしろありがたいかもしれない……それに、彼の近くで自分が魔力を多く持っていることをアピールするのはまだ早いだろう。


 自分は周りに知り合いのいないこの状況に対してそう結論付けると、先生の話が一番よく聞こえるであろう一番前の席の中で一つだけ空いていた、一番左側の席の椅子に手を伸ばした……。


「え、あ……えっと……こ、こんにちは……」


 すると、その席の隣に座っていた女子生徒から声をかけられる……。


 前髪が切りそろえられたブラウンのボブヘアーに、黒いカチューシャをつけたその女性は、冒険者には見えない小綺麗な服装をしているものの、王族・貴族学科の試験を受けた際に教室にいたような、いかにもな貴族の方々と比べると、少し地味な……なんとも身分が判断しづらい恰好の外見だった。


「ふむ? ああ、こんにちは、隣の方……あー、もしかしてこの席は、だれか先約があったりしただろうか?」


「あ、いえ、その……特に、誰も座る予定は無いです……ど、どうぞお座りください」


「そうか、では隣に失礼する」


「はい……あの、えーと、わたし、カヤって言います……よ、よろしくおねがいします」


「うむ、カヤ殿か……自分のことはオースと呼んでくれ……こちらこそよろしく頼む」


 そのカヤと名乗る、おそらく今の自分と同じくらいの年齢であろう人物は、名前的には日本でも通用しそうな響きではあるが、瞳の色が青く、肌の色も白いので、見た目的には西洋の方に近いように見える女性だった。


 今の自分の格好は、せいぜい商人の息子くらいに見えなくもない、清潔感はあるものの一般的な庶民の服装なので、服装の質からしてあきらかに彼女の方が裕福な家庭だろうと判断できると思うのだが……それを主張しないどころか、何やらおどおどとした、自信が無さそうな態度なのは、彼女の性格なのだろうか。


 少し失礼して【鑑定】情報を見ると、どうやらファミリーネームがあるので、彼女は貴族だと思われるのだが……ふむ……まぁ、グリィ殿もそうだったように、貴族にも色々事情があるようだし、日本人の価値観的には謙虚なのはいいことだ。


 と、そんな風に隣の席になった人物に対してそんなことを考えていると、開きっぱなしの教室の入り口から、この授業を担当する先生と思われる、一人の見知った人物が入ってきた……。


「……」


 その人物はスラリとして背が高く、スマートなモデル体型といった美しい女性で、プラチナブロンドの長い髪をなびかせながら教室の前方中央に立つと、その深い緑色の瞳で教室をゆっくり見渡してから、女神を思わせる優しそうな微笑みを浮かべる……。


 耳のとがった彼女の持つどこか神秘的な雰囲気さえ感じさせるオーラは、教室の空気を塗り替えるのに十分な効果を発揮したようで、それまで雑談に花を咲かせていた生徒たちも彼女を視界に収めると、誰かに言われるまでもなく静かに席について、彼女の言葉を待つ姿勢をとった。


 それは、彼女が神秘的で美しい、どこか高貴さをも感じる人物ゆえだろうか……それとも、その微笑みの裏にそれ以外の何かを感じ取ったからだろうか……。


 もしかしたら冒険者学科の生徒以外は、普段から授業に対して真面目で大人しい振る舞いをするのかもしれないが、とにかくこの教室にいる生徒たちは今、その誰もが彼女が入ってくると同時に、誰からそう言われたわけでもないのに雑談を止めて、大人しく席に着く……。


 そして、彼女はその彼らの行動を当然のように受け入れると、微笑みを崩さないまま、透き通った声で話し始める……。


「みなさん初めまして、私は今日から魔法に関する授業を担当させていただくことになった、Bランク冒険者のセイディです……この授業に最後まで残ってくれる子たちは、これから数か月の間よろしくね、ふふふ」


 うーむ……まさか魔法の授業が、この国の研究員や貴族ではなく、肩書きとしてはBランク冒険者でしかない、フランツ殿の冒険者パーティーメンバーである、セイディ殿が担当するとは……。


 せっかく知り合いが近くにいない状況で、気兼ねなく検証できるかもしれないと思っていたのだが……その数少ない知り合いの中でも一番やりにくい相手が授業の講師というのは、世の中そううまくはいかないものだな……。


 ふむ……しかし、彼女は以前ゴブリン掃討作戦で一緒に行動していた時、検証のために傷ついた自分を確かに魔法で治癒してくれていたものの、戦闘方法としては近接攻撃をフランツ殿やルノー殿に任せて、遠距離から弓で支援するばかりだった……。


 広い空間に出てからも、どちらかというと魔法で攻撃を行っていたのは、フランツ殿の妹でもあるアンナ殿の方で、セイディ殿は弓の名手という印象が強かったのだが……。


 まぁ……【鑑定】で見る限り、スキル構成は万能タイプではあるものの、確かに魔法職寄りだし、初めて会った時も、自分のちょっとした問いかけに対して、一撃でスキルを獲得できてしまうほどの威力がある、よく分からない魔法を放ってきていたからな……。


 グラヴィーナ帝国で自分が祖父上に教わって会得した、エルフの目とも言われる魔力視を標準装備していると考えると……確かに、魔法を教えるという面では、セイディ殿が適任なのかもしれない。


 その見え過ぎる目のせいで、武闘大会で自分の変装が見破られており、彼女からお金を持ち逃げしたこともバレていたことで……そのお金を返し終わる最近まで取り立てにあっていたからな……。


 そうなると、この授業でも、彼女の目の届く範囲で、何か隠れて行動を起こすような検証は、もしかしたら失敗に終わるかもしれない……困ったものだ。


 だがまぁ、今回の舞台がそういう仕様なのだとしたら、それを受け入れるしかない……。


 それに、今回の授業の目的は、検証というよりも、その準備……魔法を隅から隅まで検証するという目的のために、その技術を習得するのが第一優先、並行して行えそうな検証があればやってみるが、とりあえずは授業に集中するとしよう……。


 自分は、この授業中の行動方針をそう固めると、少しでも雑念を遮断して魔法の習得に集中しようと姿勢を整えた……。



▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈水×34,000〉〈枯れ枝×400〉〈小石×1,690〉〈倒木×20〉〈布×100〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×2000日分〉〈保存食×100〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×706〉〈獣生肉(上)×993〉〈鶏生肉×242〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×949〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈着替え×20〉〈変装セット×10〉〈宝飾品×100〉

〈調合セット×1〉〈調合素材×100〉〈空き容器×99〉〈本×100〉

〈上治癒薬×6〉〈特上治癒薬×3〉〈魔力回復薬×8〉〈上解毒薬×4〉〈猛毒薬×5〉

〈筋力増加薬×3〉〈精神刺激薬×3〉〈魔力生成上昇薬×8〉

〈掃除道具一式×1〉〈茶道具一式×1〉〈絵画道具一式×1〉〈手持ち楽器一式×1〉

〈金貨×0〉〈大銀貨×0〉〈銀貨×0〉〈大銅貨×0〉〈銅貨×3〉


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