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第八十八話 王都の冒険者活動で検証 その四

 

「……大丈夫っすか? オースさん」


「う……うむ……」


 陽の光が射しこまない洞窟の中、自分は松明の灯りも壁や天井まで届かないそれなりに広い空間で、真っ暗な天井を見上げていた……。


 大量の巨大コウモリがいたこの空間に勢いよく飛び出した後、彼ら目掛けていつかゴブリンから頂戴した〈棍棒〉をいくつか投げつけるものの、どれ一つ届かない。


 仕方がないので松明を地面に転がして〈弓〉を構えるも、暗くてどこに何がいるのか全く分からないし、右往左往しながらテキトーな場所に矢を放っているうちに、気が付くと彼らは近距離攻撃範囲内まで近づいていて、こちらは身体中を鉤爪で引っかかれる。


 近くで見ると彼らはオオカミと同じくらいのサイズで、当然その爪もオオカミ並みの攻撃力を持つものなので、身に着けていた革の鎧で守りきれていない部分を引っかかれるとそれなりのダメージを受けたし、普通に痛かった。


 しかし、そこまで近づかれたのであれば逆にこちらの近接攻撃も届くだろうと、弓をしまって振り回しやすい〈シミター〉を両手にひとつずつ持ち、乱舞と呼ばれるにふさわしい見事な剣の舞を披露するが、彼らは避ける避ける……たまに当たっても地に固定されていない敵だからか大したダメージは入らない。


 結局、自分の活躍はあまりダメージソースにはならず、グリィ殿が殆ど一人で倒し切るという形で今に至ったわけだ。


 ……まぁ、新しい敵キャラクターである巨大コウモリの攻撃方法や攻撃力を自分の身で検証できたし、グリィ殿がアタッカーとして攻撃に集中できるように手助けするおとり役としてはなかなかの活躍だったので良しとしよう。


 自分は今回の検証結果にそんな感想を抱きながら、亜空間倉庫から〈上治癒薬〉を三本ほど取り出して頭や身体などの怪我をしている部分に塗りたくり、ついでに〈自然治癒上昇薬〉を飲んでおく……。


 ふむ……傷口の消毒や殺菌、止血などの作用がある、複数の薬草をすりつぶして乾燥防止にオイルを混ぜた、軟膏のような治癒薬も、飲むと血液やコラーゲンの生成を促進させたり、傷口を塞ぐ細胞の動きを活発化させたりする自然治癒上昇薬もいいが、せっかくこの世界にはポーションとやらがあるらしいし、今度そちらの効果も試してみたいな。


「オースさんって、そんなに弱かったっすかね……?」


「いや、少々手加減をしすぎただけである」


「……そうっすか」


 ゴブリン掃討作戦に参加した時とは実践経験の差があるので、戦い方はきちんと頭でも身体でも覚えているのだが、やはりスキルの補助がないと一挙動一挙動が少々もたつくようなスピードになるし、武器を投げたり振り回したりする威力も落ちるらしい。


 この世界はどちらかというとスキル重視で、スライムを大量に倒すことでレベルと共に上昇した最大体力の恩恵など感じたことはなかったが、それがなかったら気絶していたかもしれない……これは今後の検証が継続できる時間を考慮して、スキルだけでなくレベルの方も少し鍛えた方が良さそうである。


 自分はそう思って思念操作でステータスウィンドウを確認してみる。


「ふむ……?」


「どうしたっすか? どこか身体が動かないところとかあったっすか?」


「……いや、なんでもない……薬でいくらか痛みも引いたし、先に進むか」


「? そうっすか? まぁ、オースさんが大丈夫なら私は構わないっすけど」


 開いていたステータスウィンドウを閉じて、グリィ殿に支えてもらいながら立ち上がると、自分は転がっていた松明を拾いなおす。


 ……うーむ……これはどういうことだろう?


 経験値が想像していたよりもあまり上昇していない……。


 それなりの量の巨大コウモリを倒したので、レベル上昇までいかずともそれなりの経験値が増えているかと思ったのだが……ふむ……。


 周りの冒険者と比べても自分は既にそれなりに高いレベルなので、この程度の相手であれば獲得経験値が低いというのも考えられるが……それにしてもスライムよりもはるかに強い相手であるし、もう少し高くてもいいように思える。


 ダメージソースが殆どグリィ殿だったからだろうか……と思って、グリィ殿のステータスも確認してみるが……彼女の方も獲得経験値は自分とさほど変わらない。


 ゲーム仕様的には戦闘に対する貢献度はあまり考慮されない、参加パーティー全員に平等に配分されるか、それに近い形式なのだろう。


 だとすると……うーむ……巨大コウモリから獲得できる経験値がただ少なく設定されているのだと、それが仕様なのだと言われれば納得するしかないが……何か違和感のようなものを感じる……。


 今までバグと呼べるバグは見つからず、細部までリアルに、かなりこだわったゲーム設計がなされていたのだ……こんなところに僅かでも綻びが見られるとは考えにくい。


 ……これは後でもう少し詳しく検証する必要がありそうだな。


「む?」


 自分がそんなことを考えながらこの空間を壁伝いに探索するグリィ殿の後ろに続いていると、グリィ殿がまた急に立ち止まる。


「……この部屋で行き止まりだったみたいっすね」


「行き止まり……? あぁ、今まで通ってきた横道はこの広い空間で終わっているのか」


 スキルを制御していると並行思考も機能せず、考え事をしながら周りの状況を察知することがうまくできないようだ。


 おそらくこの広めの空間をぐるりと一周してきたのだろう……前方には自分たちがこの空間に入ってきた横穴があった。


「〈夜明砂〉……見つからなかったっすね」


「? そうだな……途中の分かれ道で曲がった先にあるのかもしれないな」


 おそらく、その辺の地面に転がっているアレがそうなのだと思うが……彼女はまだそれの存在を意識の外に置いているらしい……まぁ、自分も知識として知っているだけでこの世界でもソレを指すか分からないし、一応【鑑定】してみるか。


 自分はそう考えて、その辺に大量に落ちている〈コウモリのフン〉を視界にとらえてスキルを発動させた。


 ……うむ……やはりコレのことで間違いないようだ。


 正確には、これを乾燥させて挽いたものだったかもしれないが、まぁ、依頼主の錬金術師的には同じ意味で冒険者に依頼を出しているのだろうし、自分の【人族共通語】スキルもそれを汲み取ってこの翻訳を選んでくれたのだろう。


 確か、漢方か何かの世界で、目の病気に効果があるとされていたり、農業の世界では優秀な肥料としてバットグアノと呼ばれていて重宝されていたりするんだったな。


 まぁ、専門家から重宝されていようと、一般人からしたらただの動物のフンだからな……グリィ殿が意識から外したくなるのも分からなくはない。


「じゃあ、ここは引き返して、途中の分かれ道で曲がってみるっすかねー」


「うむ、そうだな」


 まだ依頼の達成猶予として一日残ってるし、このまま洞窟をくまなく回ることで行ったことのない道のマップを埋められるし、その方がいいだろう。


 自分はグリィ殿の言葉に頷き、彼女が横道を進んでいくのを見届けると、一応、先ほど倒した巨大コウモリの亡骸と一緒に、ここにあるその大量の〈夜明砂〉を亜空間倉庫に詰め込んでから後に続いた。


▼スキル一覧

【輪廻の勇者】:不明。勇者によって効果は異なる。

【物理耐性】:物理的な悪影響を受けにくくなる

【精神耐性】:精神的な悪影響を受けにくくなる

【時間耐性】:時間による悪影響を受けにくくなる

【異常耐性】:あらゆる状態異常にかかりにくくなる

【身体強化】:様々な身体能力が上昇する

【成長強化】:あらゆる力が成長しやすくなる

【武器マスター】:あらゆる武器を高い技術で意のままに扱える

【武術】:自分の身体を特定の心得に則って思いのままに扱える

【魔力応用】:自分の魔力を思い通り広い範囲で精密に操ることが出来る

【実力制御】:自分が発揮する力を思い通りに制御できる

【薬術】:薬や毒の効果を最大限に発揮できる

【医術】:医療行為の効果を最大限に発揮できる

【家事】:家事に関わる行動の効果を最大限に発揮できる

【サバイバル】:過酷な環境で生き残る力を最大限に発揮することができる

【諜報術】:様々な環境で高い水準の諜報活動を行うことが出来る

【解体】:物を解体して無駄なく素材を獲得できる

【収穫】:作物を的確に素早く収穫することができる

【伐採】:木を的確に素早く伐採することができる

【石工】:石の加工を高い技術で行うことができる

【木工】:木の加工を高い技術で行うことができる

【調合】:複数の材料を使って高い効果の薬や毒を作成できる

【指導術】:相手の成長を促す効率の良い指導が出来る

【コンサルティング】:店や組織の成長を促す効率の良い助言ができる

【超観測】:任意の空間の全ての状況や性質を把握できる

【人族共通語】:人族共通語で読み書き、会話することができる

【人族古代語】:人族古代語で読み書き、会話することができる


▼称号一覧

【連打を極めし者】

【全てを試みる者】

【世界の理を探究する者】

【動かざる者】

【躊躇いの無い者】

【非道なる者】

【常軌を逸した者】

【仲間を陥れる者】

【仲間を欺く者】

【森林を破壊する者】

【生物を恐怖させる者】

【種の根絶を目論む者】

【悪に味方する者】

【同族を変異させる者】

【覇者】


▼アイテム一覧

〈1~4人用テント×9ずつ〉〈冒険道具セット×9〉〈キャンプ道具セット×9〉

〈調理道具セット×9〉〈登山道具セット×9〉〈変装セット×1〉〈調合セット×1〉

〈その他雑貨×8〉〈着火魔道具×9〉〈方位魔針×9〉〈魔法のランタン×9〉

〈水×46,000〉〈枯れ枝×460〉〈小石×1,730〉〈倒木×20〉

〈食料、飲料、調味料、香辛料など×1087日分〉

〈獣生肉(下)×1750〉〈獣生肉(中)×709〉〈獣生肉(上)×999〉〈鶏生肉×245〉

〈獣の骨×720〉〈獣の爪×270〉〈獣の牙×258〉〈羽毛×50〉〈魔石(極小)×64〉

〈革×274〉〈毛皮×99〉〈スライムの粘液×850〉〈スライム草×100〉

〈木刀×1〉〈棍棒×295〉〈ナイフ×3〉〈シミター×2〉〈短剣×3〉〈剣×3〉〈大剣×3〉

〈戦斧×3〉〈槍×3〉〈メイス×3〉〈杖×3〉〈戦鎚×3〉〈弓×3〉〈矢筒×3〉〈矢×9,997〉

〈訓練用武器一式×1〉〈雑貨×50〉

〈魔法鞄×4〉〈風のブーツ×4〉〈治癒のアミュレット×4〉〈集音のイヤーカフ×4〉

〈水のブレスレット×4〉〈装飾品×5〉〈宝石×6〉

〈一般服×10〉〈貴族服×4〉〈使用人服×2〉〈和服×1〉

〈ボロ皮鎧×1〉〈革鎧×1〉〈チェインメイル×2〉〈鋼の鎧×2〉

〈バックラー×1〉〈鋼の盾×2〉

〈上治癒薬×16〉〈特上治癒薬×5〉〈魔力回復薬×10〉〈上解毒薬×7〉〈猛毒薬×10〉

〈筋力増加薬×5〉〈精神刺激薬×5〉〈自然治癒上昇薬×9〉〈魔力生成上昇薬×10〉

〈狐の骸×1〉〈アルミラージの骸×1〉〈解毒草×3〉〈夜明砂×20〉〈オオコウモリの屍×20〉


▼残り支払予定額:セイディ

〈金貨×9〉〈大銀貨×7〉〈銀貨×6〉〈大銅貨×0〉〈銅貨×3〉


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