19 大切な人
ズキン、ズキン――
一定のリズムで、頭の芯に激痛が走る。
一体何が……。
頭の中に起きた出来事に関する膨大な情報が詰まっているのは分かった。しかし、その記憶は混然一体となって『ある』ことは意識できるものの、秩序立てて整理し、理解することができない。
そして、カイは身動きひとつできないでいることに気づいた。
全身に力が入らない。
身体中のすべての活力を奪い去られたかのようだ。セムケルヴとの戦いのさなかでさえも、感じることのなかった凄まじいまでの倦怠。
残された僅かばかりの気力を総動員して目を開く。
そうして、やっとカイは自らが地面に倒れ伏していることに気づいた。
視界の端に広がる空間にはゴンザが立っていた。その彼方に懐かしくも心強い仲間たちの姿もある。
オラフ、力強く一見粗野に見えて、仲間のために心を砕く優しい大男。
ルーサー、誰よりも素早く疾り、自らが戦いを不得手とすることを知るが故に強い男。
そして、ガラ。
いつも傍に居てくれたガラ。スメクランの流儀に馴染まぬカイを励まし、何くれとなく世話を焼いてくれたガラ。どんな強敵にも臆さぬ芯の強さをもちつつ、次第に長の娘として、里人たちへの想いを育み、里人たちからの敬意も勝ち得つつあった少女。
カイが何事かに立ち向かおうとするときには、いつも隣にガラがいた。
ガラが駆けてくる。
また、きっと傍らに寄り添ってくれる。
オラフとルーサーも僅かに遅れて続いた。
指導教官のゴンザが歩み寄ってくる。詰めの甘い自分を見限ることなく叱咤し、鍛え上げてくれた師。その眼には労わりの色があった。
ああ、何かがあって、何かが終わったのだ。
カイの心の奥底から力が湧き上がった。
帰らなきゃ。大切な人たちのところへ。
ゆっくりと力を込めて立ち上がろうとする。
大切な人?
カイの脳裏を何かが閃光のように過った。凄まじい激痛が一筋に脳と胸を貫いた。途方もない喪失感がカイを襲う。
縺れた糸のような記憶の混乱が解れていこうとしている。
どういう訳か、その感覚は安堵ではなく恐怖を呼び覚ました。心の奥底にある何かが警告を発している。
身を起こしかけたカイを前にして、ゴンザの足が止まった。
続いて、ガラとオラフ、ルーサーも。
どの顔にも驚愕が張りついている。
やがて、ゆっくりとガラの口が動いた。
一切の音が聞こえない。しかし、ガラが何と口にしたかは分かった。
それは、思いもよらぬ言葉だった。
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