PROLOGUE
こちらには初投稿です。
どうぞよろしくお願いいたします。
稲妻が闇を切り裂き、間髪を入れず雷鳴が轟く。
篠突く雨を突っ切り、ひとりの男がシュトゥラを駆る。シュトゥラの繊細なたてがみは重く濡れ、今はべったりとその優美な首にまとわりついている。
男は手綱にしがみつくように身体を伏せながらも、純白の乗騎に何度も鞭を入れた。真っ直ぐに続く林の中の一本道。その先に石造りの城がある。城の四方に立つ尖塔のひとつに穿たれた窓から明かりが漏れていた。
(急がなければ。かの悪しき伝承が現となり、光は力を失って闇の帳が世を覆尽くすことになる)
闇夜に蠢く分厚い雲が間欠的に紫色の閃光を放ち、突風に煽られる梢の影を大地に投げかける。
また夜空を稲光が彩り、男の鋭く尖った顎が闇に白々と浮かんだ。深く被ったフードの下で男は口を固く引き結んでいる。城はもう目前だ。
***
城の尖塔の一室では広々とした寝台に女が横たわっていた。室内に灯された幾つもの燭台の灯りに影が踊る。
女は寝台の上で苦悶に身を捩り、歯を食いしばっている。部屋の片隅に控えた黒い影が低い声で歌うように詠唱を続けていた。
寝台の脇では太った大女が息も絶え絶えに喘ぐ女の手を握って励ましの言葉をかけている。寝台に横たわる女は汗まみれの顔を仰け反らせ、シーツを掴む指と己が身体に渾身の力を込めた。
***
ずぶ濡れの男は騎乗のまま城門に向かって自らの名を名乗ると開門を命じた。門内から今一度姓名と用向きを誰何する声が帰ってくる。知らぬ名であろうはずがない。おそらくは信じられぬ思いでいるのだろう。男は激しい焦燥に苛まれて声を荒げる。その声には何人たりとも動かさずにはいない威儀が伴っていた。城門は重々しい音を響かせ、開き始めた。その刹那の間すら惜しい。
そのとき、この世界全体をあり得べからざる地響きが襲った。巨大な地震のように震源を一にするものとは異なる不気味な微震が一瞬で全土に伝播した。
男は天を仰ぐと腰の剣を抜き放つ。鋭い切っ先を持つその長剣は、反射する光源とてない闇の中、淡い青色の光を放った。




