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プロローグ〜デッドエンド〜

 腹部を貫く熱い痛み。

 それに耐えきれず、みっともなく無様に叫びそうになってしまう自分を必死に抑えつつ、


「なん、で、こっ、んなこ、とをっ?」


 声を発するたびに今まで感じたことのない鋭い痛みが身体を襲う。

 ふざけんなよ、マジで。何をどうトチ狂ったら、人の腹をブッ刺してなんならその後グリグリえぐるとかできちゃうんだよ。殺意高すぎでしょ、俺何にもしてないじゃん。え、してないよね?


「アビリティー、アクト」


 目の前の、現状殺人未遂の狂人はこちらの質問に答えず、そう言った。無視とかひどい。もうすぐ死ぬ男に向ける慈悲はないとでも言わんばかりじゃないか。


 一周回ってそろそろ寒気を感じてくる。気休めに刺された部分を手でおさえていたが、シャレにならんレベルで血が流れて床を赤黒く染め上げていた。

 ポックリ逝っちゃう前に辞世の句でも詠んでちょいと離れたところに立っている下手人に嫌がらせをしてやろうとすると、


「私は、あなたから愛されたかった」と女は言う。「昔のこと、すごく後悔していたわ、ずっと」


 どうやらさっきの問いに答えてくれるらしい。いや、犯行動機、それなの? いつの間にヤンデレちゃってたんですかね? 私を愛してくれないなら、あなたを殺して私も死ぬわ、とかやりたいのだろうか。


「それで、あのとき神様に願ったの」


 神様、とは俺たちがここに来る前に会った、あのぴかぴかした変テコな奴のことだろう。俺も欲しい能力を聞かれたから願い事を言った記憶がある。最後の最後に役に立たなかったけどね!


「対象からあるものだけを抽出して抜き取り、それを別のものに移転させたり、なんなら具現化させる能力が欲しいです、って」


 神様を名乗る誘拐の怪しい仲介業者に心中でクレームをつけている間も彼女の説明は続いていた。え、何その能力。ずるすぎるんですけど。

 それで、さっきのセリフと繋がる訳だね?

 アビリティーアクト。

 神に与えられたチート能力を、今ここでどう使うというのか。


「そうすれば、私は、私のことが好きだったころのあなたを手に入れられるから。あなたから高2のときまでの記憶を抜き取ってそのまま人として具現化させることでね」


 地雷すぎる発想だった。

 そうか。それで高2のころの『理想の俺(笑)』がいると今の俺が邪魔になるからついでに殺しちゃおう的なアレな訳ですね。怖すぎるでしょ、この人。


「だから、さようなら、ううん、また後で会おうね、17歳のあなた」


「ふっ、ざ、けんーーーー」


 最後に、残された力を振り絞って恨み言を述べてやろうとする途中で俺の意識は闇に落ちた。

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