空き地の帝王
近所の空き地は小さな子ども達の恰好の遊び場となっている。今日も小学生の女の子が怪しい機械を振り回しては子ども達を消し去っていた…………。
「これが代々木マシーナリーの底力よ!!」
ヒーロー物と思われる銃を男の子へ向け、女の子は引き金を引いた。
──バババババ!!
銃から複雑な光線が飛び出し、それを受けた男の子はファサァァと消え果てた。
「カカカカカ! これが最新式『分子分解銃』の威力なりぃぃ!!」
女の子は高らかに笑い声を上げ、気が付けば彼女一人となっていた。満足げな彼女はニヤリと笑い銃を天高く連射した。
そして偶然通りかかった太った青年を見つけると、素早く駆け寄り声を掛けた。
「ねぇねぇお兄さん。私と遊びませんこと?」
「ぶ、ブヒィ!? ぼ、僕と君がかい!?」
太った青年は脂汗を垂らしながら辺りをキョロキョロと見渡し嫌らしい笑みを浮かべた。
「えへへ……それじゃあ遠慮無く♪」
太った青年は脂汗に塗れた顔で女の子へと手を伸ばした―――
「ロリコンは死ね!!!!」
──バババババ!!
分子分解銃からえげつない波動の線が飛び出す!!
「うおっ!!」
青年は間一髪で躱すと光線は塀の上に居た猫に当たり、猫はファァサァァァァ……と消え塵と化した。
青年は素早く女の子から分子分解銃を奪い繁々と見つめる。
「なんだ、ただの玩具か…………」
「か、返しなさい!代々木マシーナリーの英知の結晶を汚すつもり!?」
「ブヒィ!? 君、もしかして代々木マシーナリーの……」
「そうよ!代々木マシーナリー代表取締役代々木蔵之介の一人娘!代々木立花とは私の事よ!!」
「ブヒブヒブヒ! コイツは面白い!」
「離せ!離しなさい!!」
語るに落ちた女の子立花は青年に首根っこを捕まれ、ジタバタと抵抗した。
「慰謝料代わりにたんまりと可愛がってあげるブヒよ……」
「いや!助けて!!助けて~~!!」
──タタタタ!
そこへ疾風の如く現れしマスク姿の少年!!
「止めろ!立花ちゃんを離せ!!」
「ブヒ?」
「丁度良いとこに来たわ佐竹!お父様に報せてコイツを虐殺して貰いなさい!!」
少年は身体中熱っぽく、頭は少しフラついていた。おでこには冷却シートが貼られており首にはネギが巻かれており、どう見ても風邪をひいている様だった。
「……立花ちゃんは僕が助ける!!」
──スポッ!
少年は筒状のポテトチップスの容器を左腕にはめた。
「ブヒィ?」
「あ、あれは……」
そして左腕を青年に向け、右手で左腕を支え何かを放つ構えを見せた……。
「ブヒブヒブヒ!! 子どもの遊びに付き合ってる暇は無いんだよー!」
青年はクルリと少年に背を向けスタスタと歩き出す。肩に担がれた立花は「ココを狙いなさい」と無言で青年の背中を指差した。
「サイコの神様!どうか力をお貸し下さい!!」
少年が力を込めると、ポテトチップスの容器の先が輝きだし紫色の巨大プラズマを放ち出した!!
──バリバリバリ!!
「ブヒィィィィ!!」
巨大プラズマを背中に受け悲鳴を上げる青年は、丸焦げになり絶命した。立花は素早く青年から逃げ、少年の元へと駆け寄る。
「流石私の奴隷13号ね。褒めて使わすわ♪」
「へへ、それ程でも。立花ちゃんに貰ったサイコチップスのお陰だよ」
「でも私の許可無しに風邪をひいて集会に遅れてきたのは許さないわ。後で処刑よ!」
「そ、そんなぁ……」
「ま、でも先ずはその風邪を治しなさい。後でお父様に言って何かお見舞いを持っていくわ」
「えっ!? いやいや大丈夫だよ! なんかこの前貰ったお饅頭も手足が生えて逃げてったし……」
朦朧とする意識の中、少年は立花を家へと送り届け力尽きた。そして更に風邪をひいた…………
──コンコン……ガチャ
「マー君、立花ちゃんがお見舞いに来てくれたわよ? 何か恥ずかしがって直ぐ帰っちゃったけど、この箱を置いていったわ」
母親が箱を開けると、そこにはグチャグチャの何かが袋詰めしてあり、どう見ても推測の域を出ることは無かった。
「ふふ、お母さん将来はクッソ高い老人ホームに行きたいから、宜しくやるのよ? じゃないとお母さんマー君の事滅殺豪昇龍でグチャグチャにしちゃうからね?」
「…………」
母親は謎の脅迫を残し、部屋から出ていった。残された少年は意を決して袋から何かを取り出し一つ臭いを嗅いでみた。
「焦げと魚臭い……」
ザクッと少し齧ってみると、それは僅かに甘い味がした…………
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