最終的に浮いたんで
「どう? 満足したー?」
「も、もちろん! こんなにガチで持ち上げてくれた人、初めてです!」
「おー、良かった! やったね、桐野っち」
ふわふわヘアが誇らしげに笑えば、武士サマも満足そうに頷いた。まったくキャラが正反対そうなのに、この二人は仲良しなんだろうか。
ま、それはそれとして。
今が去りどき。チャンスなんじゃなかろうか。そう思った私は、精一杯声を張り上げる。
「ありがとうございました! いい思い出になりました!」
満面の笑みでお礼を言って、速攻で生徒会室の扉へとむかう。もうここに用はない。
扉へ手をかけた瞬間。
「待て! 誰が帰っていいと言った」
待ったがかかった。
ええ……まだ何か用があるのかよ。
嫌々ながらも振り返れば、案の定声の主は生徒会長様だ。しかもなんでそんなにジトッとした陰湿な目で見てくるんだよ。ちょっと怖いじゃない。
「ええと……すみません。まだ、なにか」
「なにを満足そうな顔をしている。まだ俺からの褒美は貰っていないだろう!」
顎が外れるかと思ったわ。
「いやいやいやいや、別に生徒会長からいただかなくても『生徒会』のくくりで問題ないじゃないですか!?」
「そーだよー、桐野っちがかっこよく姫抱っこしてたし、問題なしだよー」
ふわふわヘアも可愛く援護射撃してくれたというのに、生徒会長様は頑として譲らない。
「大丈夫です! もう充分に嬉しいです! 最終的に浮いたんで。生徒会のすごさを知りました!」
「それは生徒会のすごさではなく、桐野のすごさだろう……! 俺はまだ諦めていない!」
図らずも、ヤバいスイッチを押してしまったらしい。生徒会長のヤツ、めちゃめちゃムキになっていらっしゃる。
「あーあ、あきらめた方がいいね、君。こうなったら有馬はしつこいよ。なんせ座右の銘が『諦めなければ失敗ではない』だからね」
なにその迷惑な座右の銘! なんと往生際の悪い。
「一ヶ月後!」
「はい?」
「一ヶ月後の今日を楽しみにしておくが良い! 次こそは直々に、素晴らしい褒美をとらせよう!」
……一ヶ月後かよ。さすがに現状で持ち上げるのは無理だと思ってるわけね。
まあ、私もそう思う。
とりあえず、一ヶ月もありゃあ、今日の悔しさも忘れるだろう。時間が解決してくれるよね。若干アホらしいとも思うけど、ここはおとなしく従ったほうが無難に解放してもらえそうだし。
そう結論づけた私は、素直にお礼を言うことにした。
「ありがとうございます! 楽しみにしてますね!」
ほんとは二度と関わり合いになりたくないけどね!