私が悪かったので、もう許してください……!
「私が悪かったので、もう許してください……!」
その日私は、学園一のイケメン様に誠心誠意、頭を下げて懇願していた。
「何の事だ、意味がわからん。相手に伝わるように工夫して話せ」
くそう、顔はイケメンだが常に大上段からくるその態度。
90度角の謝罪でもご納得いただけないとは、さすがに俺様、有馬様だわ。しかし私もここで折れるわけにはいかない。なんせ私だって精神的にもう限界だなんだし。
「物凄く頑張っていただいたので、もう満足です。もう毎月挑みに来るの、止めてください」
「お前が満足でも俺が満足じゃない、俺は一度約束した事は必ず遂行する。来月は絶対に大丈夫だ」
「それ、毎月聞いてますから」
ぐっ、と詰まったイケメン様。しかしそれで簡単に退くヤツでもなかった。
「でも今日はちょっと浮いた、だから来月は大丈夫だ」
いっつも思うけど、なんなのその謎の自信。浮いたって、ほんのちょっとじゃん。マジ一瞬だったじゃん。信頼性ホント皆無だから。
一歩も引く気がないらしいイケメン様と不毛な睨み合いを続けながら、私は事の発端となったあの悲しい出来事を思い出していた。
***
そう、そもそも事の起こりは半年ほど前。
私ときたらこんな事になるとも知らず、やらかしてしまったのである。
いや、別に悪い事をしたわけじゃない。むしろご褒美だった筈なんだ、あの時までは。
入学式でのことである。
新入生を前にして、壇上で歓迎の辞を朗々と述べていた生徒会長、俺様有馬様はその最後に、思いついたようにおっしゃった。
「先程の新入生代表、後ほど生徒会室へ来るように。首席で入学したその努力を讃えひとつ褒美を贈ろう」
イケメン生徒会長のお達しに、体育館は黄色い声で揺れた。
ほとんどは羨望、いくばくかの怨嗟の子も混じっていたが、当の新入生代表は「うへえ、面倒くせえ」と思っていた。
もちろん私である。
しかしこちとら新入生だ。面倒くさかろうが完全無視もできない。なんせ相手は一言発する度に講堂がどよめくほどの人気を誇る生徒会長、不興をかっては今後の学校生活に絶対に支障が出る。
危険を回避すべく、私はその日、大人しく生徒会室に出頭したのだ。
そう、そのまま大人しく適当な褒美を貰って、さっさと生徒会室から離脱しておけば良かったんだ。
でもさ、生徒会室に入った途端、俺様有馬様が生徒会長席で思いっきりふんぞり返ってるもんだから。しかもだよ。
「おう、来たな新入生代表。先ほども思ったが、なかなか派手な体格ではないか」
私を見るなり、有馬様はそう宣った。
いきなりそれか。




