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1.淑女はきっと未来を照らす

2021/3/13 加筆修正


物語の始まりはいつも唐突に書くのが自分の定型文になってます。

今回の始まりの仕方は途中で終わらせた『天使に恋した少年』の続きからになっていますが

今後掲載される話によってはこの投稿一本で完結すると思われます。


なのでここから読んでいただいて構いません。

ちょっと変化球になりますが……良ければご覧ください。


何かを為すには何かを失わなければならない。

これはどこにもある普遍的なルールだ。

無から有が作れないように、また作られないように

その普遍的なルールは存在している。

生きることだって何かを得るためには絶対にその代償がかかるものだ。

酸素を補給して二酸化炭素を吐く。

栄養を得るために食物を消費する。

一度に大きな事をすればそれだけ疲れるように、楽に容易に得だけはできない。

だけれど何故だろうか?

損はそうではないのだ。

損をすればその後得が来るのか?



違う。

順序がそもそも違う。

得を得たら損をするのだから始めに損を得たら得はできない。

なにせ何の得なのか仮に自分自身が理解していても他者には理解できない。

痛感ながら私はそう思う。

考えて考えてそれでも損から得を生み出そうとして私は失敗した。

私の人生で何か得があるとすればそれは生きていることだろう。

だから私は何度も損をする。

助けられたはずの命も助けられなかった。

助けようとした命も目の前で失われてしまった。

損と損が噛み合えばこうもなってしまうのか、

こうも脆く弱くなるのかと考えると今すぐに

私はこの身を投げ出してしまいたくなる。

でも、あの時だけは私は願ったのだ。

自分自身などもうどうでも良い、どういう過程であれ

授かった生命とその絆は絶対に守り抜こうと。


ストーリーテラー

「ごきげんよう、私の名前はアリス、アリス・シャルロット。」


今から綴る物語の主人公の一人であり、そして

目的のために世界を滅ぼそうと目論んだ破壊者だ。



平和とは戦争との対義語と思われがちだが私はそうではないと考える。

戦争とはそもそも話し合いで解決しなかったために

武力行使を以て解決しようとしたものであり、平和の対義語は混沌となるだろう。

だがそうではない、そうじゃないと戦争を

知っているかのように謳う者達は気が狂っている。



否定の意見は賛成の意見があってこそ成り立ち、また生まれるもの。

否定だけが生まれるはずが無い。

言い換えればその否定の意見が生まれる根本的な原因こそ生まれないはず。

まぁこれは私の考えであるからそうではないと言う者達はそうなんだろう。

ただ意見とは意思を示すモノであり他人の意思を潰すためのファクターではない。

故にあれはダメだのこれはダメだの押し付けることは

間違いだし、またそれを反論する者に関しては正直言葉を失う。

前者は当人の意見だけで相手の意見をまるで聞かずに

潰そうとして、後者は意見を聞いたからこそ反論に出ているから、

後者は意見を聞いているしそうなんだろう。

だがこれは見方の問題であるが故に何一つ解決には繋がらない。



私のいる世界の構成は天界、魔界、常界と構成されている。

その中のうち常界の端にある"不思議の国"と呼ばれる国が私の生まれ故郷。

だけれどそこは世界そのものが国、という場所であり、また恐ろしい世界だった。

なにせその世界に入れば二度と他の世界へ渡航することが許されない。

すべての世界からはずれて、すべての世界を拒絶した世界。



その国には何か強く誇示できる力はなく、また認められない。

すべての国民が非力である。

だからこそ知識に才を出すものがいたがそれすらも"力"として淘汰される。

みな平凡であり高度なものはいらない平等な世界。

それこそがその国の絶対不変なルールであり変えることのできない常識。

天界や魔界、下界と称される常界より非力な力を持たない者を集めた国、

他の国や世界からそこは不思議の国と呼ばれた。


アリス

「そこでの絶対的なルールのうち明確で守られるもの、

 それは―――力を持つとその者は狂ってしまうので淘汰しなくてはいけない」


力を持つことを禁ずる、つまりその国に統治者はいない。

統治者という唯一無二の立場こそが力だから、いらない。

みなが統治者であり国民である、だからこそ不思議の国はそれゆえに

国交を交わすことはほとんどない。

そのくせ外部からの逃亡者は受け入れその住人の数を増やしていく。

だからこそ"不思議"の国なのだ。

国交を交わさないのにも関わらず外部の者たちは受け入れる。

そんな実情を表面上知っただけで私を生んだ両親は

その不思議の国へと足を踏み入れた。

実を言えば禁忌を犯したが故に、そこしかもう逃げる場所がなかったそうだが。

中に入ってそこが楽園だとそう考えた父と母は

その後死ぬ間際まで後悔することとなる。


アリス

「それから私と弟のアリスィアは不思議の国で生まれるのだけれど、

 私が物心つく頃にはお母さんはこの世から去ってしまった。」


父は甲斐甲斐しく私たちを育ててくれたが

弟のアリスィアが物心ついたときには

ほとんど生きる気力のほとんどを失くしていた。

争いもない広い広い平和な世界、でも

その国は国民のそのほとんどが流れ者で構成されている。

弱いしね。

端的に言えば刃物を持つことすべてが悪だということ、

それが畑を耕す鍬であっても石で作られた器であったとしても

それらすべてが悪と見なされ禁止される。

毎日死人が出る国、それこそが不思議の国の実態だった。

一度入れば二度と外の世界に行くことはできない。

外の世界に行くという行為が敵対行為とみなされるから

それが子供であっても近づけば異端と見なされてその者からは生命の権が剥奪される。

当事者は逃げたいのに逃げた先が地獄だったのに初めて気づいた。



人間で例えるなら異端者に人権はなく奴隷以下と見なされて

別に暴力を与えても良い存在になるのだ。

だからこそ不思議の国にいるもののほとんどは狂っており笑っている。

誰かが外に出ないかと待ち構えている。

痛めつけることでしか心は安らがないのだ。

しかしながら絶対不変のルールなのにも関わらず

そこだけは緩いのか、もしくはこのルールを作った本人の頭が既にイカれていたのか。

異端者を痛めつける行為には絶対不変のルールは適用されない。

人を痛めつける暴力の行為が何もかも存在しなくなる。

都合のよいように人を痛めつける。


アリス

「逃げ出そうとしたお父さんもそのままその罪で死んじゃった。

 暴行と餓死でぽっくりあの世行き~。でも矛先は止まらなかった。」


私と弟の場所はそのまま父母と暮らした家になったが

弟のアリスィアがあるスキルを持って生まれ、力に覚醒したことで


”それ”が明らかになった。


―――スキルの名は【創世】


―――有限を無限に変え、何もない場所から無限を生み出せる力。


―――その世界では異端とされる力の象徴。


無意識のうちにそのスキルが働いていたためか

アリスィアは物心ついたときから、思い出せばあまり食事を取っていないと言っていた。

だが同時にそれがよくないことを生み出すんじゃないかと

不安が募って結果的に最悪を招くこととなってしまった。



アリスィアに力があるということは親類の私も力を持っているんじゃないかとして

その一件がばれてから私たちはそこから生命としてみられることはなくなったのだ。

まったく変で奇妙で奇怪な話だ。

物心ついたと思えば家族が死におかしな世界に立って迫害を受ける。

自分とは違うというただそれだけの理由で。

不思議の国で家畜以下も同然の扱いを受けた私たちは酷い生活をしていた。

よく分からない白色や透明、黄色茶色……。



でも大丈夫、きっとすぐに終わるからと私とアリスィアは

ずっと死ぬことだけを追い求めるような生活を続けるようになる。

だけれどそんなとき不思議の国である事件が起こった。

それの発端は私の父母に起因している。

父母の種族はこれと言って不思議なものではなく、父は天使で母は人間だという。

だが混血を避けるべく天使は人間と恋やまぐわいをしてはいけないとされていた。

だが父は母に一目惚れをしてこの不思議の国へと逃亡したという。



だが混血への断罪以上に長く苦しい生活が待ちうけ、

また産んだ子供も産まれ落ちたせいで断罪されるともなれば

最初から断罪されてくれれば良かったのになんて、お門違いだろうか?

まぁそこまでは良かったのだ、だが母の方に問題があり

それは天界で"保護"という名目で保管していた女性だったということだ。

何故保管するのかと言えば母には強大なスキルを持っていたらしく

それが天界の切り札ともいうべき代物だったからである。

そう、言うなれば母は生物兵器のような存在で父は

それを盗みそして混血を産まれさせようとする罪を犯した者だった。


アリス

「なんでその話をしたかって?

 そんな天界が魔界と戦争を仕掛けていたからよ。」


天界と魔界は仲が良い間柄、国ではなく逆に死人が出るほどの混乱を極めていた。

そこで天界は生物兵器を作り魔界に一打を掛けようと考える。

それが母であり天界はどうにかしてこれを奪還しなければいけなかった。

だからこそそれが起こり私たちは結果的に助かった。

そう、結果だけを言えばの話だ。







カツカツコツコツ

ブーツを鳴らして軽快な足取りで見慣れた書庫へと辿り着いてその扉を開ける。

そのとき傍にあった死体には目もくれず入って奥の本を掴み、

またその本の近くにある机に腰をかけて広げた。

長い薄く金色に輝く髪がふわっと風で揺らぐと

その少女の額に照準を合わせて青年が銃口を向ける。


アリス

「嫌な再会ねぇ、いきなり銃口を向けるのはどうかしているわ

 ……久々に会ったのに紳士的な態度もないの?」


青年

「死体を見ても目もくれず本に目がいく奴に紳士的な態度を取れと?」


青年は至って変わらず自分と同じ黄金色の髪の少女を見つめて呟いた。

少女はただ目と鼻の先で銃口を突きつけながらも動じず、

撃ちたいなら撃っても良いよ~と言わんばかりに本をペラペラとめくる。

その光景に青年は唇を噛んでトリガーに指をかけた。

だがそれを予期していたかのように少女は呟く。


アリス

「私に死体を見せても偉い偉いなんてお世辞もないわよ?

 恐怖も……ね?私に今負の感情を引き出すことは不可能よ、エク」


エクリクシィ

「元より引き出すつもりはないさ、アリス―――チェックメイトだ。」


そのとき金髪、碧眼の青年、エクリクシィ・ホープのチェックメイトの呼びかけに

一斉に本に擬態、もしくは透明化の魔術を使っていたのか

エクの部下であり相棒である黒いボブカットのクロヌ・ハーヴェスト、

茶色いセミロングのルーナ・ブリトネスが

黒いコートと制服調のような姿でその身を現した。

それにアリスは一瞬驚いたかと思うと笑う。


アリス

「あら……!エク、あなた女好きだったの?

 あのとき会ったときもそうだったけれど友人も相棒も異性なのね。

 感心するわ、なあに?全員と結婚して子作りして

 沢山の子どもに恵まれてハーレム生活かしら。お姉ちゃん心配だわぁ……♪」


―――それとも多くないと満足できない性癖でも持っているのかしら?

と、アリス・シャルロットは依然変わらぬ態度で口元をニヤッとして笑う。

それにエクリクシィが呟いた。


エクリクシィ

「確かにその方が楽しいかもな、でもそんな性癖はないから安心しろ、姉ちゃん。

 それに……あのときの借りは残ってる。

 次こそ捕まえてやるッ……!」


あのとき?

アリスは目を点とさせながら首を傾げる。

その姿にルーナが叫ぶようにしてエクリクシイに対して呟く。


ルーナ

「エク!そこをどいてください!!

 死ぬまで死ぬまで痛めつけて拷問すれば自ずと吐くでしょう?!!!」


とルーナが"自身が受けた様々な痛みを受けさせるかの如く"

アリスに対して銃口を向ける。

銃弾は天使特有の銀の弾丸で悪魔や魔物を主に撃退させるための道具だ。

それをルーナはアリスに向けてトリガーに指を引っ掻けていた。


アリス

「ヒステリックねぇ……やだやだ怖い怖い。

 巨乳でやらしくぷるぷる揺らしちゃってさ、すごい贅肉だこと。

 それで何を挟むのかしらね?

 しっかし……こんな愚娘とも付き合ってるの……?

 すごいわね……私には出来ないわ本当。」


このあまッッ……!!とルーナは構えて

エクリクシィの言葉を待たずして銃口の引き金を引く。

すぐに打ち出された銀の弾丸はアリスの頬すれすれに当たる。

だがこれにはルーナが驚いた。

何故ならばアリスは微動だにせずまた"死ぬ"という一瞬の気持ちもなく、

ただひたすら前へとなおってただ今の行動に微笑していたためだった。

ただ本をペラペラとめくり猫のような瞳をルーナに向けて呟く。


アリス

「お嬢ちゃん、もうちょっと右方向に撃たないと。

 威嚇射撃じゃないんだから

 ……しっかり狙いなさいよ?こんな風に―――あらっ」


と本を閉じてブーツを軽快に鳴らしながらエクリクシィの銃を掴むと

そのまま自分の頭に無理やり擦りつけ当てる。

だがその行為に思わずエクリクシィが離れた。

その光景にルーナが思わず呟く。


ルーナ

「ばけ……も……の」


腰は抜かさないものの相当のショックを受け、

信じられないものを見ているかのように

わなわなと震えているルーナを横のクロヌが支えるがそれにアリスが笑う。


アリス

「初手を譲ったのに殺す気もないだなんて……痛めつけるだけが趣味ぃ??

 化け物はあなたよ。いつもは本性隠しているのについかぁーっとなって殺す~?

 怖いわぁ……でもこんなことで怯えるのには……嗜虐心が疼くわ……。」


ペロッと舌で舐めとるようにしてニッコリとルーナに微笑むと

その前にクロヌが、冷や汗をかきながらもルーナを守るようにして前に立つと、

アリスは本を置いたまま机に腰をかけエクリクシィ、

ルーナ、クロヌに後ろを向けたまま話し始める。


アリス

「あなた3人は今私を殺す権利がある。

 なにせあなた方はそれに見合う動機があるから。

 コールド・ペインと共に襲撃したこと、

 魔法師団長であるあなたの父親……ティフォナス・ホープの殺害を妨害させなかったこと。

 まぁその他色々と……、まぁ成り行きでもやった経緯は消えないから。

 でもね?私だって弁明くらいはしたいのよ。

 見殺しまた襲ったやつが直々に何を言うかって考えるとは思うけれど。


 ―――そうね、話すとしたら……まずはエクリクシィとどうして離れ離れになったのか。

 

 あなたと会いそしてその後どうしてあなたの前から姿を消したのか。

 そしてその話にどうしてティフォナス・ホープが関わるのか。

 あなただって思うでしょう?不思議に。

 どう聞いて行かない?」


エクリクシィ

「……ああ、そうだな。

 だが僕はそれを嬉々として話すお前に対して

 不思議というよりは怒りの気持ちを抱いている……」


とアリスの言葉を紡いでエクはそう答える。

手には先ほどの銃が握られていた。

エクの構えに先ほどクロヌの後ろで怯えていたルーナも鼓舞されてか同じように構える。

その場で動じず武器を構えていないとすればアリスとクロヌだろう。

クロヌはそんなアリスをただただ冷たい眼差しで見つめていた。


アリス

「―――そう、あなたもそうやって目を逸らすのね。

 そこの茶髪巨乳も……ってあら。黒髪のあなたは向けないのねぇ」


話を振られクロヌは目を細める。

するとエクがクロヌに対してただ一言呟いた。


エクリクシィ

「クロヌ、構えろ。」


だが、断固としてクロヌは腰に備えたホルダーから

銃を取り出すこともなくアリスを見つめる。

そしてエクの言葉に対してクロヌは淡々と呟いた。


クロヌ

「私は目を逸らさないわ、不思議の国のアリス。」


アリス

「へぇ……別に見て欲しくて言ったわけじゃ無いんだけど意味を教えてもらえる?

 まさかそんな、勘違いしてた??」


クロヌ

「いいえ、あなたは何かを知っている。

 それを知らないままにするのは腑に落ちない。

 それだけ。それに……私が見ているのはあなたではない。

 ―――姿を現さないのならこちらから仕掛けるけど?」


とクロヌはアリスの左横を眺めてそこでようやく長剣を構えた。

すると見事♪と呟いて指をパチンと鳴らす。

するとアリスの左横に男が出現するのを

対峙する三人のうち気付いていなかったと思われる二人が驚いて見つめる。

そこにいたのは黒いスーツのようなものに身を包んだ銀髪の短髪の青年だった。


ルーナ

「いっ、いつの間に……」


クロヌ

「落ち着いていれば簡単に見破れる隠匿魔法よ

 エクは魔法師団長を失ってから明らかに落ち着いていないし、

 ルーナは挑発に乗り過ぎよ。

 それにあなた一人ではないでしょう、不思議の国のアリスの従者は。」


クロヌの鋭い一言にアリスはふふっと呟く。

エクは後ろに音もなく銃をつきつける紺色のミディアムヘアーの青年が姿を表し、

それがずっとアリスの左横にいた青年と同じスーツを着た

状態でいるのに少し驚いている様子だった。


ミディアムヘアーの青年

「お前らが来たとき優勢だと思ったのだろうがそれは違う。

 俺らはずっといたしここでお前らが来るのを待っていた。

 ―――エクリクシィ・ホープ……背中を失礼。

 俺の名前はキーム・バレット。

 お前にお前の父親が何をしたのかを、お前自身に断罪するべく来た身のものだ。

 本当は抵抗しないでくれるとありがたいんだがな。

 きっとお前らはアリスを追い詰めた時点でチェックメイトだ

 と思ったのだろうがそれはこちらの方だったようだ。」


と紺色のミディアムヘアーをしたキーム・バレットがそう呟き

エクの後頭部に真っ黒に光る銃をつきつける。

それに気づいたルーナが応戦しようとして身構えようとするが

アリスがルーナを見つめており、

ルーナはそんなアリスが何かをするのではと動けずにいた。


アリス

「別にあなたたちに酷いことをしようだなんて思ってないわよ~

 ただ今やりたいのはー強制的にだけど真実を見せようかと思ってね?エク。

 キームが持つ銃は"666の弾丸"って言って……対象者の罪を思い起こさせて

 断罪する銃なんだけれど……なにも対象者の罪を別の人物に向けて良いのよ。

 そして他人の記憶を他の人物に見せることも可能。

 それがキームの能力。

 "知らなかった現実を追体験できるんだからそれはそれで良いことでしょう?"

 まぁ、それを知ってあなたが何をするのかはあなた次第だけれど……ね。」


エクは冷や汗を流しアリスはそれに笑いもせずキームに対して呟いた。

そしてその言葉の合図にエクは抵抗できず倒れる。

ルーナとクロヌが駆け寄る。

呆気なく撃たれた銃弾に、クロヌは直刀の刃を抜くが

アリスの頬を掠めたところでもう一人の銀髪の青年がそれを素手で受け止めた。


アリス

「あら、良いのにアナスタシオス。

 別に斬らせたいなら斬らせれば良い。

 死んでもいない男のことを心配しただけよ。

 死んだんじゃないかとか、よくも傷をつけたのかっていう

 どうでも良い理由なんだから。」


アナスタシオス

「ンなこと知ってるよアリス。

 俺はただそれと同じようなことを考えているだけだ。

 この女も……な。」


と直刀を素手で折りクロヌを後方に飛ばすとコートを羽織りなおす。

エクに続いてクロヌも倒れた光景をルーナは怯えながらに

短刀を持ってふぅーふぅーと息を漏らしながら構える。

だがそれすらも眼中にない状態でアリスもまたコートを羽織り呟いた。


アリス

「ペイン、今は手薄よ。

 加勢に行きなさい、そして彼女の望みが叶った際は契約完了よ。

 あ、あとそこの贅肉娘ルーナさん?

 エクはあともうしばらくしたら意識が戻るでしょうから

 ……そのときはこう言いなさい。

 《――――――――――――――――――》と。」


その言葉にルーナは何なのか困惑と驚きを隠せずにいた。

だが考える暇すらなくいつの日か天界を蹂躙しかけた

コールド・ペインかコートを脱ぎ、黒いスーツのまま翼を広げ窓を開けて飛び立つ。

そしてまたアリスとその従者である2人も謎の空間と共に姿を消していく。

ルーナはその光景に何度も悲鳴混じりの叫びを上げ何度も怨嗟の声を上げた。

それを空間の転移ごしでアリスは苦笑する。

苦笑したアリスに困惑するアナスタシオスになんでもないと彼女は続いて呟いた。


アリス

『―――どっちが悪役か分からないわね。

 今は私たちなのかもしれないけれど』


そう言ってアリスは最後の役目を果たそうとしていた。


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