ステータスと超古代文明の名残
「本題、ですか」
「そう、本題だ。その本題とはスキル構成とステータスについてだ。まずはステータスを開いて見てみろ。心の中でステータスと念じるだけでいい」
サカキとユズリハは言われた通りに念じた。すると、二人の前にチュートリアルでも出てきた半透明なステータス画面が現れる。その現象に驚き、目を見開く二人を見ながらユズは溜息を吐く。このゲーム、ROのチュートリアルのあまりな不親切さに。最初期からこのゲームをプレイしているユズの頃からこのゲームはあらゆることに関する説明が乏しかった。それは改善点が浮き彫りになった半年たった今でも変わっていない。これでは運営会社はまるで運営としての義務を放棄しているようなものだ。
「それがステータスだ。二人のステータスを見比べてみろ」
name:サカキ
gender:男
level:1
job:暗殺者level.1
HP500
ST:1000
MP:500
STR:100
AIG:200
MDIF:50
PDIF:50
INT:50
LUC:50
DEX:150
RES:150
所持スキル: スキル未取得
■■■■■■■:現時点での開示不可
装備①:『初心者のヒ首』
装備②:『漢服(黒)』
name:ユズリハ
gender:女
level:1
job:槍使いlevel.1
HP:700
ST:700
MP:600
STR:150
AIG:100
MDIF:75
PDIF:75
INT:125
LUC:50
DEX:125
RES:100
所持スキル:スキル未取得
■■■■■■■:現時点での開示不可
装備①:『初心者の長槍』
装備②:『軽装簡易鎧』
「同じレベルなのに、何故二人のステータスが違うかわかるか? これも本来ならチュートリアル等で説明しなければならないんだろうが、初期職業によってある程度ステータスの傾向が決まってくる、ということだ」
個人差は多少あるが、要は暗殺者などは身軽だから AIGの値が高く、戦士は STRの値が高くなったりするということだ。自由度が高いと謳うならば初期ステータスを自分自身で全て決められないということは何とかすべきだろうが。
「ここからのステータスの伸ばし方は自分の好きなようにできる。レベルアップすることでポイントを割り振れるようになるからな」
「自分の思い描いたプレイスタイルに沿って、ということですね?」
「そういうことだとも」
ユズは二人がしっかりと話について来ているか確認した後、話を続けた。
「次にステータスの効果というか、影響の説明だ。 HPは生命力。これは言わなくてもわかるだろう? これがゼロになると死ぬ。それだけのことだよ。自然回復するが、自己再生系のスキルを持っていなければ自然回復の速度は遅いからアイテムを使った方がより効率的だ」
アイテム……そういえばチュートリアルで回復薬を貰ったなとサカキは思い出す。低級なのでどれぐらい回復するかは不明だが、あらゆることが説明不足なチュートリアルで回復薬を貰えたのは有難いことだ。
「STは体力。激しい動きを続けるとどんどん消費していく。これがゼロになっても死ぬことはないが……気絶することがあるな。これも自然回復はするが徐々に体力の上限が来て自然回復しなくなる。その時は飯は食べろ。それで何とかなる」
「アイテムボックスに入れて置いて、STが無くなったら食べるみたいな感じでいいの? お姉ちゃん。というか、アイテムボックスの中に入れて時間が経つと腐ったりしないよね?」
ユズリハの疑問は確かに悪くない線を行っている。アイテムボックスはあくまで空間を圧縮しているだけであって時間が止まっているわけではない。
「いや、腐る。残念ながらそんな夢みたいなことはない。だから街でならまだしもダンジョン内だと保存の利くもののみだな。基本的には」
「えっ、保存食なの……」
ユズリハは態々ゲームの中にまで来て保存食を食べなきゃいけないという事実に少し落ち込む。一部の人間を除いて誰だって態々ゲームでそんなことはしたくないだろうが、仕様なのだから仕方のないことだ。
「それで、だ。残りの説明をしよう。 MPは魔力。魔法スキルを使用するのに使う。ちなみにこいつも自然回復するな。後は純粋な力を表すSTR、速さを表すAIG、魔法に対する防御力を表すMDIF、物理に対する防御力はPDIF。アイテムのドロップや確率系スキルに影響するLUCや古代魔法の使用や古代文字を読む為に必要なINT、生産関係や遠距離攻撃に影響するDEX、状態異常に対する耐性のRES。これがステータスの値の全てだ」
「成る程……少し質問いいですか?」
「なんだ?」
「 古代魔法や古代文字を読む為のINTとのことですが…… INTの影響は他に無いんですか?」
INT。この数値を上げたとしてもそれだけだと直接的なメリットが少ない。それだけではただの死にステータスになってしまうのだ。古代魔法の威力にもよるが。
「知りたいだろう? じゃあ、教えてやろう。ここ古エリシャ王国は超古代文明の名残を残す国だ。後はわかるな? 超古代文明の強大な技術力が手に入るんだよ。古代文字が読めて運が良ければな」