新たなる世界
二話目の投稿となります。
ピンポーンという音が部屋に鳴り響く。その音に睡眠を乱された榊は目をこすりながらベットから起き上がる。
「ん……インターホンの音か……高津が来たのか」
高津が来たということを寝惚けた頭で悟った榊はゆっくりとドアを開けるボタンを押しに移動する。そして、カメラで送られてきているマンションの玄関前の様子を画面で見ると、やはり高津が段ボールを持って立っていたので開けた。
そうして、ぼんやりと上がってくるのを待っていると、再びインターホンが鳴ったので玄関に出てドアを開ける。すると、白い大きな段ボールが目の前にあった。思っていたより大きい段ボールだったため、榊は驚いたが受け取って、高津を中に入れ、礼を言う。
「ありがとな、高津」
「どういたしまして。所で、眠そうだね、榊くん。もしかして寝てた?」
「ああ。ついさっきまで寝ていた」
「やっぱり! 幾ら夏休み初日だからって怠けてちゃ駄目だよ。今年の夏休みはこれもやるんだし」
学校から帰って直ぐに寝るという行為を聞き、やっぱりそうしてたかと高津は呆れて怒った。その怒った高津を面倒くさいと思ったのか、榊は頭を掻きながら同意して、話を変えようとする。
「あー……これからはそうする。それで、だ。それが例の……?」
「うん、これが《repaint・world・online》、略してROだよ! こんなに大きい箱に入ってるけどかなり軽いんだ。俗に言う最先端の技術で作られているからかな?」
「たぶんそうなんじゃないか? 高津の力が無さでも持ってこれたんだし」
榊がリビングに置いた箱を不思議そうに眺める高津に対し、何だかんだで少し、ROに期待している榊は適当にあしらって段ボールを丁寧に開けて行く。
するとそこには、頭を覆うヘルメットのようなモノと、手を覆う小手のようなモノが二つと、それに似たようなモノが二つ入っている透明な袋と、恐らく高津のモノと思われる水色に白の水玉模様があしらってある布のバッグがあった。
「はい、これがROの一式。これを頭、腹、手足に付けるんだって」
榊は高津が手渡してきた透明な袋を開けて中身を取り出して広げた。
「体全体に付けるのか。予想してたのとは違うな。頭だけかと思ってた」
「ええと、ある程度の具体的な身長を図るらしいよ。詳しくは私もわからないけれど」
ある程度の具体的な身長を図るという説明に、榊はそういえばそんな記述もインターネットで見かけたようなと思いつつまじまじとROというソフトとVR機器が一つになっているモノを見つめて呟く。
「成る程。最近の科学は発展してるな……」
「老人みたいな事言わないの。それでね、これを付けた後このボタンを押して……ログアウトはゲーム内のボタンでできるって。非常時のためにこの機器にもログアウトボタンはあるらしいけど。たぶんここかな」
高津の説明を聞きながら段ボールの中に説明書がないか榊は探すが、何処にも見当たらない。まさか……とある事に思い至った榊は高津をジト目で見ながら疑問を口にする。
「説明書は無かったのか?」
「……てへ。忘れて来ました!」
榊のジト目から目を逸らしながら、忘れてきたことを高津は告白した。そんな高津に榊は溜息をつく。
「そんなことだろうと思ったよ。まあ、ある程度読んで来たみたいだし、問題はないか」
「ごめんね、忘れて来て……」
「いや、気にすることはない。高津がドジっ子だってことは知ってるからな。予想はしてた」
謝る高津に榊は励ますように微笑んで、言葉を掛けた。その言葉に高津は頰を膨らませる。
「むぅ、ドジっ子って言われてもあまり嬉しくない……」
「そりゃあ、嬉しくはないだろ、褒め言葉じゃないんだから」
そんなこんなで、じゃれあっている内に二人とも準備は終わっていた。
「よし、これで後はログインするだけだな」
「先にログインしてて。私も飲み物を飲んだら行くから」
榊が装置をつけ始めると、高津は立って台所に向かっていく。その後ろ姿に榊はまだ話していなかった重要なことについて問いかける。
「おう。待ち合わせ場所とかは良いのか?」
そう、待ち合わせ場所についてだ。ROでは最初に選択できる国が14ヶ国存在する。
"和の国"出雲朝廷。
"華の国"大華朝。
世界有数の軍事大国であるソメエカ国。
都市国家の連合体であるメラシル民主連邦。
世界で最も領土の大きい大イラリス帝国。
超古代文明の名残を残す古エリシャ王国。
最強の騎馬部隊を持つモン帝国。
唯一神を信仰するヴァチ教皇庁。
東西に分かれたかつての強国である東西羅馬。
大イラリス帝国から独立した自由の国、南イラリス共和国。
建国者聖ストゥープゥを崇める信教国家、聖ストゥープゥ教国。
小国だが世界で有数の商人の国、モアナドラ公国。
砂漠の国であるヒーニャ王国。
以上の14ヶ国の首都から初期プレイヤーの出発点を選ぶことができるのだ。なお、どの国を選んだかによって基本的に不利を被ることは無いが、その国の情勢によっては稀に何らかの不利を被ることがある。
「国選びで、古エリシャ王国を選択して! 選択してチュートリアルを終えればそこの王都に転送されるからそのまま動かないでいてね」
「わかった。古エリシャ王国な」
待ち合わせ場所を確認した榊は装置を完全につけて横になる。
「よし。ログインっと」
そして、ログインボタンを押した。
各国にはモデルとなった国が存在します。何処とは言わないけども。
次の更新は明日になります。
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