プロローグ
久々に書いたのですが、やっぱり難しいですね、小説を書くことって。
◆○○高校
「えー、明日から夏休みとなりますが……この○○高校の在学生という自覚を持って、毎日行動するようにしなさい。貴方達は○○高校の生徒だという看板を背負っているわけですからね。それと、今年の夏休みの宿題はきちんと提出日までに出せるようにすること。くれぐれも遅れないように! では、以上です。挨拶を」
「規律! ……さようなら!」
「「さようなら!」」
「はい、さようなら……」
先生に帰りの挨拶をすることを頼まれた学級委員による挨拶が終わると、生徒たちは夏休みに関する長々とした担任の教師の話が終わったことに喜色を浮かべながら帰りの支度をし、帰っていく。勿論、このクラスに属している生徒の一人である榊も帰る支度をして、帰ろうとしていた。そこに、一人の女子が声を掛けに行った。榊の幼馴染である茶色がかった髪をポニーテールにした高津という苗字の女子だ。
「ねえ、榊くん! 」
「何か用か? 高津」
榊は体操着の入った袋を取りに行きながら高津に返事をする。高津はその榊をトテトテと追いかけながらおずおずと本題を話し出す。
「えっとね、榊くんさ、今年の夏休み一緒にゲームする気、ない?」
「……ゲーム?」
予想外の話に驚いている榊を尻目に、高津は話を続ける。
「ほら、有名なあの……《repaint・world・online》っていうやつ」
「…? ああ、あの世界で初にして唯一のVRMMOとか言われてるアレか」
「そう、それ!」
榊の認識に正にその通り、と高津はうなづく。そう、《repaint・world・online》とは世界で初の完全没入型VRMMOと呼ばれるもの。日本、中国、アメリカ、イギリスなど多くの先進国と呼ばれる国々で発売を開始され、半年たった今で世界中の国での販売に成功していると言われている。人気すぎて機器の絶対が足りない程には。
「確か、半年前ぐらいにでてたやつだよな。テレビとかネットニュースとかで散々に騒がれてたから知ってるぞ。別にやっても構わないが……俺は機器を持ってないし……。そもそも何で俺を? 太田とか宍戸とか誘えばいいじゃねぇか」
榊はゲーム自体はスマートフォンのアプリを時間潰しにやって満足するような人間なので、榊よりも恐らくそのVRに興味を持ちそうな高津の親友である太田と宍戸という二人の女子の名前を出す。ちなみに、榊とこの二人はかたや高津の親友とかたや高津の幼馴染という関係であるため、高津という共通の友人を通して仲良くなっている。
そして、その指摘に高津は少しどもりながら答える。
「いや、ええとね……この前、くじ引きで二つセットで当たったんだ。それで誰かに一つあげようとおまったんだけど、太田ちゃんと宍戸ちゃんはもう既に持ってるし、お姉ちゃんももう既に持ってるの。お母さんとお父さんは興味ないっていうし……じゃあ、榊くんとやろうかなって。本当はね、中古屋さんに二つとも売るつもりだったんだけど、お姉ちゃんに面白いのにもったいない!面白くていつも品薄状態なんだから、売るなんて失礼だ! 何を考えているんだ! って説得されちゃって……」
「……成る程、そういうことか。しかし、機器を丸ごともらって大丈夫なのか? それ、かなり高いんだろ?」
そう、品薄状態に陥るほどの人気で生産が追いついていない機器など、もともと高いものが更に高くなっているに決まっている。そのようなものを本当に受け取っていいのか、と確認する榊。いくらくじ引きで無償のものとはいえ、一人に対しての個数制限もあることも加えて、そうそう何機も買えるものではない。
「たしかに値段は高いらしいけど、くじ引きだから実質タダみたいなものだし、榊くんと遊びたくて私が渡すんだからその辺は大丈夫だよ!」
「それならありがたく受け取っておく。ありがとうな、高津」
高津は榊が同意したことに高津はヤッタ!と呟き、小さくガッツポーズをしながら満面の笑みを浮かべる。
「どういたしまして! それでね、今日家に帰って取ってくるから榊くんの家で待ってて!」
「おう、わかった」
「じゃあね! また後で!!」
「じゃあな」
高津が帰っていく後ろ姿を見ながら、榊は独り言つ。
「しかし、《repaint・world・on line》ねぇ……大手の任天屋やソーニーが半年経っても作れてない完全没入型VRゲームの唯一のソフト兼ハード……凄いもんだよな、そのゲーム会社。名前は何つったかな……帰ったら調べてみるとするか」
榊もまだ教室に残っていた数人の生徒に挨拶をし、帰っていった。
◆とあるマンション
家に帰った榊は一人パソコンに向かって《repaint・world・online》について調べていた。
「さて、《repaint・world・online》っと」
大手の検索ツールを使って調べると、ネットの百科事典のページや、ホームページが出てきた。そのように調べていると、世界で人気と言う割には批判も少しばかり多いように榊には感じられた。そのことが気になった榊はそれを詳しく調べてみることにした。
すると、批判の殆どはMMOを名乗っているくせに、スキルのバランス調整がなってない云々ということだった。だが、そのバランス崩壊を有り余るほどのゲームとは思えないグラフィックと自由度は認めざるを得ない、ということらしい。
「へえ……MMOはやったことが無いからわからないがそういうものなのか。ふぅん……でも、自由度は凄い、と。そりゃ既存のゲームに比べて人気なわけだ。ゲームバランスが悪くても。ましてや、完全没入型VRはこれしかないみたいだしな」
成る程と榊が一人で頷いていると、会社名を調べてなかったことを思い出し、ホームページに行ってみることにした。そのホームページには"──貴方の世界を塗り替える新しい世界"というでかでかと書かれたキャッチコピーとお問い合わせ先があるのみだったが、そのページの一番下に小さく会社名が書かれているのを榊は発見した。
「会社名は……リペイント。ゲームタイトルと同じなのか。安直なゲーム名の付け方だな」
リペイント。repaint。塗り替えるという意味の英単語。そういう会社名。それに加え、キャッチコピーにも塗り替えると表記されていて、ゲームタイトルも《repaint・world・online》。余りにも安直なネーミングに榊は呆れたが、取り敢えずある程度調べ終わったと思ったと判断したため、高津が来るまでベットで一眠りすることにし、ベットに倒れ込んだ。
次の投稿は明日になります。