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キャスの宿敵と舞踏会のお話

 双子のダンスレッスンが始まって、3週間経ちましたが、私は未だに屋敷周りを走っています。

「はい。出来た!走ってらっしゃい!」

 私の母は明るくそう言って、私の肩を叩きました。

 何が出来たかと言いますと、長い金髪を三つ編みにしてもらったのです。

 自分でやっていたところ、遅い!と、一喝されてしまいました・・・。


 ちなみにノルマがあって、2周走らなければなりません。これからまだまだ増えるそうです・・・。屋敷周りと言っても、カーライル家だって、広いんです!5キロはあります!(ありません!) 


「カサンドラ様ー、頑張れー!」

 ルークが腹が立つくらい満面の笑顔で、シュナイダー様がもうちょっと何とかならないかと思う無表情で応援してくれます。

 二人が遊びに来てくれても、ノルマを達成するまでは会話すらしてはダメだと言われています。シュナイダー様やルークとおしゃべりしたいです!だから、頑張り・・・。

「ぜー、はー・・・」

 私、立ち止まってしまいました。


 そして、膝に手をついて、休んでいますと・・・。

「ほーら、カイル。カイルの好きなキャスがいるよ。遊んでもらいな」

 と、リバーの声が聞こえて・・・。

「?!」

 振り返りますと、私の宿敵であるポニーさんの『カイル』がいました!

「行け」

 リバーはそう言うと、カイルのおなかを軽く叩き、持っていた手綱を放しました!

 カイルが喜々として、私に向かって、走って来ます!

「ぎゃああああっ!」

 私は一目散に逃げ出しました。


 リバーは笑いながら、

「キャスー、早く走れるじゃないか!」

 ルークが顔を引き攣らせて、

「あ、悪魔がいる・・・」

「大丈夫ですよ。カイルは大人しいし、もうお年寄りです。乱暴なことはしませんよ」

 シュナイダー様はとっても冷静です!

「そうそう。ただキャスが好きなだけなんだけど、伝わってないんだよ。可哀相に」

 リバー!お姉ちゃんは可哀相ではないんですか?!

 だいたいポニーさんなんですから、『ポーさん』とか、『ニーさん』とか、可愛い名前にして下さい!



「おー、顔がパンパンのまるまるではなくなっていますよ」

 私は窓ガラスに映る自分の顔を見て、嬉しくなりました。

 体重が大きく減ったわけではないですが、顔が引き締まってきたようです!

 でも、引き締まったら、余計に悪役顔になりました。うーん。ちょっと複雑です。

「どれだけ太ってたんですか?」

 と、ルークが呆れながら、「まあ、今までカサンドラ様は食べるばかりで動いてませんでしたからね」

「は、反省してますよ」

「カサンドラ様」

 シュナイダー様が紅茶が入ったカップを差し出し、「蜂蜜入りです。疲れが取れますよ」

「ありがとうございます!いただきます!」

 何て素晴らしい方なのでしょう!


 悔しいですが、宿敵のカイルのお陰でいつもより早く、今日のノルマが達成出来ましたので、現在、念願のおやつの時間です。

 私が有り難く、シュナイダー様が淹れた紅茶を頂いておりますと、

「で、リバーはダンスはどうなの?」

 と、ルークが聞きました。

「まだ何とも・・・」

 リバーはやや浮かない顔で肩をすくめます。

 運動神経抜群のリバーも勝手の違うダンスには手こずっているようです。

「あー、自分もダンスなんかやりたくない!」

 ルークが頭をぐしゃぐしゃにしながら、「まどろっこしい!」

 シュナイダー様も無表情ですが、うん。うん。と、頷いてます。

 皆、嫌なんですねー。ですが、私みたいに不器用ではないし、鈍臭くないでしょうから、まだましですよ!


「レオ様はダンスとか似合いそうだね」

「あー、すぐ出来ちゃうだろうなー。カッコイイだろうなー」

「・・・」

 レオ様のダンス・・・素敵でしょうね。

 もちろん、パートナーはローズマリー様です。お似合いでしょうねー。

 卒業記念の舞踏会で愛を誓い合った後、二人は手を取り合って、ワルツを踊るのです!ぎゃー!想像しただけで興奮して、鼻血が出そうです。


「キャス。一人でにやにやしないでよ」

 リバーがじとーっとした目で私を見ながら・・・「自覚してないかもしれないけど、酷い顔をしているよ?」

「なぬっ?!」

 ルークは何とか笑いを堪えてから、

「な、何を考えていたのですか?」

「ほら、学園の卒業記念の舞踏会よ!」

 私はカップを置いて、勢い良く立ち上がりますと、「その舞踏会で結ばれたカップルは一生幸せになれるのよ!うちの両親だって・・・」

「いや、正確にはお父様がプロポーズしただけで、お母様はイエスとは言ってないよ」

 あ、そっかー。焦らし作戦でしょうか?お母様もやりますね!


「あのー」

 ルークが赤くなりながら、「舞踏会なんかで、告白をするんですか?恥ずかしくないですか?」

「もっともな意見ね」

 確かに普通の神経なら出来ません。お父様は凄いですよ。

 でも、あなたの主君は平気な顔をして、やってのけることでしょう。

 それにしても、ルークはこれくらいのことで赤くなるんですね。可愛いですね。

「自分には絶対無理だ」

 なんてことを言ってますが、舞踏会場に響き渡るような大声で告白しそうです。有り得ると思いません?


「ねえ、それって、18歳で相手を決めるってこと?早くない?もっと、色々な出会いを経て、決めた方が良くない?」

 と、リバーが言いましたので、私は目を思いっ切り吊り上げますと、

「何言ってるの!そんな遊び人みたいなことを言って!」

 まったく!この弟は!一体、何人の女性と出会ったら、決められると思ってるんでしょうかね!運命の女性と出会う為に、旅に出たいなんて言っても、お姉ちゃんは許しませんからね!甥っ子、姪っ子の顔を早く見せて下さい!

「遊び人なんて大袈裟な」

 リバーは長い前髪をかき上げます。

 ・・・チャラ男にしか見えない仕草もリバーがやると品があります。得な男ですよ。まったく。

 

「シュナイダー様は何か知りたいこと、ありませんか?私、舞踏会のことにはすごく詳しいんです」

「はあ・・・」

 卒業生だけが参加ではなく、在校生も参加していいんですからね。シーア様をパートナーとして、誘ってもいいんですからね!

 シュナイダー様は少し考えて・・・。

「では・・・」

「はい!何でしょう?!」


「卒業式が終わったら、すぐに家に帰りたいのですが、よろしいのでしょうか?」


 ま、まさかの不参加希望ですか?!



 ちなみにシュナイダー様は飼っている大型犬さんや『のらさん』と別れるのが寂しいそうなのです。か、可愛いです。

 はっ!私もめだかさんと別れると言う事ですよね!私も癒しの存在であるめだかさんと離れるなんて辛いです!


「まだ2年以上あるけどね」

 私とシュナイダー様とは違い、リバーはそっけないです。


 ほんとにドライなんだから。『カイル』が寂しがりますよ?



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