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王子様の出会い

「キャス?!」

 私の悲鳴を聞いたリバーが私の部屋に駆け付けました。「どうしたの?!」

 私は悲鳴を上げた後は、あまりの衝撃に少々ぼうっとしてしまいましたが、リバーのお陰で我に返ると、

「れ、レオ様から手紙で・・・」

「レオ様からの手紙?印刷してるんじゃないかってくらい同じ文面でしょう?・・・違うの?」

「あ、えーと、珍しいお魚さんを見たって、書いてあるから、いつもより長くて、びっくりしたのよ」

「そりゃ、びっくりするよね」

 リバーが頷きます。

「で、でしょー?」

「でも、いくらびっくりしたからって、あんな悲鳴上げたら、喉がおかしくなるよ?」

「そ、そうね。気をつけるわ」

 リバーはドアを閉めました。


 私はまたレオ様の手紙に顔を戻しました。


『キャス。元気か?私は毎日、元気に稽古に励んでいるぞ。キャス。驚くかもしれないが、私の理想にぴったり当てはまる娘に会ったぞ。キャスは必ずいると言っていたが、内心信じていなかった。でも、本当にいたんだ。とても嬉しく思っている。キャスも喜んでくれると良いが。では、またな』


 喜びますとも!良かったですね!レオ様!

 私は嬉しさのあまり泣きましたが・・・。

「ちょっと待って!」

 これだけでは全く詳しいことが分かりません!

 これはいかん!と、言う事で、私は急いで、レオ様に返事を書きました。

 名前とどこで会ったか、どんな印象を持ったかくらい書いてくれないと、父に頼んで、そちらに行きますからね。と、脅してやりました。


 私に来られるのがよっぽど嫌だったのか、2週間後に、レオ様からの手紙が届きました。やれば出来るではないですか!


『キャス。元気そうだな。例の娘のことだが、キャスにだけは教えてやってもいいぞ。名前はローズマリー・ヒューバートと言って、ルークの祖父さんの家がある村の隣の領地を治めている子爵家の令嬢だ。ルークの祖母さんの買い物について行った時、ローズマリーが買い物袋が破れて困っていたところを偶然見て、声を掛けた。とても美しい娘で本当に驚いた。その後、何回か会ったが、美しいだけじゃなく、気立てが良くて、聡明な娘だと思った。ただ、そそっかしいし、良く転んだり、物をなくしたりと、危なっかしいところが多々ある。私はそういうところも面白いし、可愛らしいと思う。それに一緒にいて、とても楽しい。だが、危なっかしさではキャスの方が上だな。ローズマリーは同じ年で、驚くことに、全属性持ちだ。それから、ローズマリーの幼なじみであるアーロン・ディアボルトもそうだ。こんなに狭い地域に全属性持ちが二人もいることには本当に驚いた。アーロンともとても親しくなったぞ。アーロンは大人しいが、とてもいい奴だ。二人とも、学園に入るから、その時にはキャスとも仲良くなってくれたらなと思う。では、またな。追伸、手紙を書くのは疲れるから、もうこれ以上何も聞くなよ!』


 私は読み終わった後、しばらく呆然としてましたが、

「うっ、ううっ・・・良かった、良かったですね、レオさ、ま・・・」

 私は泣きました。

 一人で住み慣れない土地に行って、どんなにか辛く、寂しかったことでしょう。レオ様は一切手抜きが出来ない人ですから、徹底的に自分を追い詰め、体も心も疲れ切っていたに違いありません。

 過去にシーア様に酷いことをしたとしても、そんな風に頑張っているレオ様に神様がご褒美を下さったに違いありません!


 だって、『魔法学園』入学前にヒロインと出会えるなんて、凄いことですよ!とんでもないフライングスタートですよ!

 と、言いますか、そんな遠くにいたんですね!私もちょっと調べてはいましたが、ちょっと調べただけでは分からないはずです!

 ローズマリー・ヒューバート様は『魔法学園でつかまえて』のヒロインなのです!

 


 さて、とりあえず、レオ様の手紙を振り返ってみましょう。

 ローズマリー様は確かに子爵令嬢です。

 買い物袋が破れて困っていたところに声を掛けたなんて、大昔の恋愛ドラマみたいですが、素敵ですね。

 でも、子爵令嬢が買い物をしたりするんですね。私と違って、働き者です。

 そして、注目です!とても美しい娘で驚いたですよ!おまけに美しいだけじゃなく、気立てが良く、聡明だそうですよ!それから、一緒にいて、楽しいですよ!レオ様、もうべた惚れではないですか!手紙を読んでいて、照れましたよ!レオ様はこんなこと良く書けますね!

 そそっかしくて、良く転んだり、物をなくしたり・・・そういうところも、面白いし、可愛く思うですって!

 ・・・私の方が危なっかしいと言うところは無視します。

 にしても、ここまでレオ様をべた惚れにするローズマリー様は完璧なヒロインですね!恐れ入りました!

 

 もうひとつ大事なことに触れなくはなりません。

 ローズマリー様の幼なじみ、アーロン・ディアボルトは攻略対象キャラの最後の一人なんです!

 生まれた時から、ローズマリー様と一緒なんですから、そりゃあ、レオ様とも知り合いますよね。

 攻略法などは実際本人を見た時にお話しましょう。

 それにしても、アーロンはゲームでは全属性持ちではなかったのですが・・・確か、光と闇の属性は持っていなかったはずです。

 光の属性はともかく、闇の属性は王族か魔女の血を受け継いだ子孫しか持てないはずですから。アーロンは平民ですし・・・まあ、不可能ではないですね。ローズマリー様と一緒で魔女の子孫だったのかもしれません。


 アーロンは幼なじみのローズマリー様のことがずっと好きなんですよね。

 レオ様は親しくなったと書いてますが、アーロンの心中はどのようなものなのでしょうか。

 ここから、遠く離れた地で三角関係の火蓋が切られているんですね。見られないのが残念です。

 アーロンは物静かで穏やかな、いい子なんです。出来たら、幸せになって欲しいのですが・・・

 でも、こればっりはどうしようもないです!私はレオ様の味方なんですから!


 レオ様、空しいとか言って、一人いじけて、すみませんでした!今から、心を入れ換えて、頑張ります!


 ですが、レオ様。もう一つ、すみません。先に謝っておきます。私、ローズマリー様とは仲良くなったらいけないんですよ。・・・困りました。どう逃げたら良いのでしょうか。



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