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取り巻きA

 朝が来ました。

 昨日は大変な一日でした。また自分のダメさ加減に落ち込みましたが、しっかりしなくてはなりません。

 今日はアナスタシア殿下の誕生日パーティーがありますからね!

 パーティーは正午から始まりますが、朝食をちゃちゃっと済ませます。ドレスを着て、髪を編み上げてもらわなければなりませんからね。

 私のドレスの色はいつもの濃い青色です。ちなみに事前の調査によりますと、アナスタシア殿下はピンク色のドレスだそうです。

 あ、そうです。プレゼントが髪飾りだけでは少し寂しいので、ルークママがルークと市場に花を買いに行き、花束を作ってくれるそうです。もうプレゼントは完璧でしょう!

 

 私が支度を終えて、一階へ降りて行くと、リビングルームには父とリバーが居ました。すっかり準備万端のようです。

 後は母だけです。一番時間がかかるのは仕方のないことですね。

「ああ。キャス。今日は一段と美しいね。キャスのような美しい娘の父になれて、私は世界一幸運な男だよ」

「うん。新しいネックレスがとても似合ってるよ。キャスに着けてもらうためにこの世に誕生したんじゃないかな?キャス。本当に綺麗だよ」

 ・・・このおふたりは、度々、こういうこっぱずかしい褒め言葉をさらりと言うんですよ。娘と姉をいい気にさせてどうするんですかね?

 父はともかく、まだ12歳のリバーが歯の浮くような台詞を平然と言うんですよ?ちょっとおかしくないですか?将来が本気で心配です!


 それはともかく、せっかく褒めていただきましたので、

「お父様。リバー。ありがとう」

 私は赤くなりながらもお礼を言いました。

 父は満足げに頷きましたが、

「キャスも座って。ちょっと話しておきたいことがあるから」

「はい」

 私がリバーの隣に座るのを待ってから、父は口を開きました。

「前に私が王城で嫌われ役をやっていると聞いたことがあっただろう?」

「はい。レオ様から聞きましたよ?」

 と、リバーが答え、私も頷きます。

「私だって、好きでやっているわけじゃない。この国を良くしようと思うからこそ、厳しくしているんだ。それを分かってくれている人間もいるんだが、分かってない馬鹿、あ、いや、分かっていない人間がいて、私には敵が多い。・・・誤解しないで欲しいんだが、他の五大公爵だって、大変な仕事をしているし、敵もやはり私と同じようにたくさんいる。ただ私は一番若いし、闇の属性を持っていないから、与し易いと思われているんだろうな」

 と、父はそこまで話したところで、ソファーの背もたれに深くもたれると、「こういう話は二人が魔法学園に入学する時にしようと思っていたのだが、今回のアナスタシア殿下の誕生日パーティーに出席する顔触れを見て、話しておくことにしたんだ」

「そんなに厄介な方なのですか?」

 リバーの言葉に父は肩をすくめてから、

「いや、私からすれば、大した男ではないが、どんな手を使ってくるか分からないからね。キャスとリバーにまで害が及ぶ可能性もある」

「そ、その方は誰なんですか?」

 と、私が恐々と聞きますと、

「バドレー公爵だ。バドレー家はカーライル家より、ずっと古くから、その地位にある。そして、長年、我々カーライル家を敵視しているんだ。それから、どういうわけか、カーライル家が没落するなり、五大公爵家から追われることになったら、バドレー公爵家がその座に取って代われると思い込んでいるんだ。そんなおめでたい頭を代々受け継いでいるから、始末が悪い」

「・・・」

 ば、バドレー公爵?って、まさか・・・「マーガレット・フォスター・・・」

「うん?娘さんのことを知っているのかい?」

 あ、しまった!つい声に出してしまいました!

「あ、アナスタシア殿下と親しいと聞いたので・・・」

 私は咄嗟に思い付いたことを言いました。

「ああ、それで、アナスタシア殿下も招待したんだろうね。・・・キャス。親たちの諍いに子供は関係ないから、マーガレット嬢と仲良くしてもいいんだよ?」

「僕はそうは思えませんが。バドレー公爵は何をするか分からないのでしょう?なら、わざわざ近付く必要はないのではないですか?僕はともかく、キャスが・・・」

「あ、ああ、キャスがねえ・・・」

 父とリバーが私を見ていますが・・・。


 バドレー公爵令嬢、マーガレット・フォスターは、『魔法学園でつかまえて』でカサンドラ・ロクサーヌの取り巻きAとして登場するのです!

 同じ公爵令嬢を取り巻きにしちゃうんですよ?!カサンドラ、ハンパないです!

 最初は家同士が敵対していることもあり、カサンドラとマーガレットも敵対していましたが、カサンドラがマーガレットをやり込めて、自分の取り巻きにしてしまうのです。

 おまけに、父やリバーに内緒で、独自に動いて、バドレー公爵の弱みを握り、父の邪魔をしようものなら、全てばらしてやる。と、脅し、バドレー公爵がカーライル家に何もしないよう約束させるのです。

 うーん、やり方はかなりおかしいですが、カサンドラはカーライル家の為に動いたのですね。なんだかんだで家族思いな女の子だったのでしょうか?


 となると、私もマーガレット・フォスターをやり込め、取り巻きにしなければならないと言う事ですか?

 す、すみませんが、無理です。私、こればっかりは、早々に諦めます。だって、私、今まで、悪役令嬢として、何もやり遂げてません。

 いじめなければならなかったレオ様と友達になり、嫌われなくてはならなかったシュナイダー様とも親しくなりました。

 そんな私が公爵令嬢をやり込め、取り巻きにする?無理に決まってます!

 なら、どうすれば・・・?


 はっ!


「あっ!」

 私は声を上げました。


 父とリバーが驚いて、

「キャス。どうしたの?」

 私は立ち上がりますと、

「私、マーガレット・フォスター様とお友達になります!」

 と、宣言しました。


 マーガレット・フォスターと仲良くなれば、学園で敵対なんかしなくなります。子供同士が仲が良ければ、バドレー公爵だって、カーライル家に対して、悪巧みなんてしなくなるかもしれないじゃないですか。

 私にバドレー公爵を脅すようなことなんて出来るわけがありませんが、平和的な解決に導くことなら出来るかもしれません。

 迷惑を掛けてばかりいる家族の為に、私、カサンドラ・ロクサーヌは頑張ります!


 新たな使命に燃えている私を見ながら、

「人見知りで内気なキャスには厳しいんじゃないか?」

 と、父が小声で言いました。

 リバーは頷くと、同じく小声で、

「水を差すのも可哀相ですし、キャスがそのマーガレット嬢に害を与えることはないでしょうから、好きにさせましょう。娘同士が仲良くなったところで、父親の敵対心までなくなるなんてことは有り得ませんが」

「落ち着いて考えれば、分かりそうなものなんだけどね・・・」

「ですね・・・」

 父とリバーは溜め息をつきました。


 そこへ、すみれ色のドレスで身を包んだ母が現れ、

「お待たせして、ごめんなさい」

 と、謝ってから、私を見て、「まあー。キャス。今までで一番綺麗よ。いつもみたいにぼーっとしてないのが良いのかしらね?それが今日ずっと続くといいわねー」

「・・・」

 私、いつもぼーっとしてますか?



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