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これでもお姉ちゃんなのです

「本当にお願いしますね」

 私の母がシュナイダー様とルークにお願いしています。

「はい」

「お任せ下さい!」

 と、シュナイダー様とルークが答えました。

「本当に、本当におね・・・」

 と、母が繰り返し言おうとして・・・。

「お母様、大丈夫ですよ。ルークは王都暮らしで頼りになるし、それに近くのお店にちょっと行くだけなんですから」

 と、リバーが言いました。

 

 明日、アナスタシア殿下の誕生日パーティーがあります。もちろん、シュナイダー様もルークも招待されています。ですので、私たちはプレゼントを子供たちだけで買いに行くことにしました。

 母は学園時代のお友達が訪ねて来ることになったので、私たちに付き添えず、とっても心配しています。

「キャス。絶対にリバーから離れちゃダメよ」

「はいっ。リバーのことは任せて下さい!」

 私は胸を張って、言いました。

 私、お姉ちゃんですからね!それに前世は都会生まれの都会育ちです!王都くらいどうってことありませんよっ!

 リバーはいわゆるお上りさんですからね!そりゃあ、心配でしょう!ですが、お姉ちゃんに任せておけば心配ないですよ!初めて、お姉ちゃんらしいことが出来そうです!


「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「?」

 何故、皆さん、黙るのですか?

 まあ、いいです。早くアナスタシア殿下へのプレゼントを買って、ルークママお勧めのジェラート屋さんに行きましょう!も、もちろん、アナスタシア殿下へのプレゼントを買うことが、最も重要ですよ。分かってますとも。

「さあ、いきましょう!」

 私は意気揚々と歩き始め・・・。


「あの自信はどこから来るのでしょう。是非、根拠が知りたいですね。ないかもしれませんが」

 と、シュナイダー様が珍しく・・・て、手厳しいです!

「僕もキャスに心配されたら、終わりだなあ・・・」

 と、リバーがやれやれと首を振ります。ひ、ひどいです!

「と、ともかく行きましょう!カサンドラ様は赤ちゃん並の体力しかありませんが、今日はとても人が多いので、見失ってしまう可能性もありますから」

 ルークは慌てて私を追いかけました。

 赤ちゃん並はないでしょう!毎日、剣術の稽古をしているルークにはそりゃあ敵いませんが、最近、50メートルくらいなら、走れるようになったんですよ!(とても遅いですし、走った後はしばらく動けません)


 私たちを見送っていた母ですが・・・。

「ああ・・・本当に胃に穴が開いてしまいそう・・・」

 母は眩暈を起こして・・・。

「奥様!」

 侍女さんたちが慌てて、母を支えます。

「大丈夫です!お嬢様は必ず生きて帰って来ますわ!」

 ・・・私、お買い物に行くだけですよ?



 現在、私たちは可愛らしい雑貨屋さんにいます。

 お客様は女性ばかりで、リバーたちは居心地が悪そうにしていますが、我慢してもらわないといけません。

 ちなみに、皆でおこづかいを出し合って、プレゼントを買うことにしています。一人では、大したものは買えませんからね。アナスタシア殿下は王女様ですから、しょぼいものは贈れません。


「こんなのはどうかしら」

 私、お魚さんの体に人間の顔がついたキモカワイイぬいぐるみを皆に見せます。

「キャスとレオ様くらいしか喜ばないと思うよ」

 と、リバーが言います。

「そう?あ、体は犬さんのもあるけど・・・あっ!2つ買ったら、お金、ちょうどになりますよ!」

「そういう問題じゃありません」

 と、ルークが言います。

「でも、可愛いと思わない?」

「全く思いません」

 と、シュナイダー様が言ったので、やめます!


「じゃあ、これは?」

 私、熊さんがお魚さんをくわえている木彫りの置物を見せます。 

「本気で言ってるの?」

 リバーが怖い顔になります。

「荒々しい魅力があっていいじゃない!」

「カサンドラ様の好きな魚が食べられそうになってますよ!いいんですか?!」

 ルークもいやに怖い顔をしています。

「でも・・・お魚さんは可愛いし・・・」

「カサンドラ様。お魚さんからは離れましょうか」

 シュナイダー様が安定の無表情で言いました。そ、そうしましょう!


「にしても、可愛らしい雑貨屋さんなのに、どうしてこんな変なものが置いてあるのかしらね」

 私はその場から離れながら言いました。

「・・・」

 3人とも、あなたがそれを言いますか?と、思ったそうで・・・。いや、私は可愛いし、良い物だと思ってますよ!



 と、言うわけで・・・。

「髪飾りかあ・・・芸がないですね」

 せっかくなので、珍しい物をと思ったのですが・・・皆さんに髪飾りがいいと押し切られました。

 リバーがぽんと私の肩に手を置いて、

「キャス。アナスタシア殿下相手に冒険なんかしなくていいんだよ」

 た、確かに!お姉ちゃんはようやく納得しました!

 ところで。

「どっちがいいかしら?」

 赤いバラの髪飾りかピンクの小さな花がいくつか並んでいる髪飾りか・・・どちらがお好みでしょうか。意外にいいお値段なので、ふたつとも買うわけにはいきません!

 アナスタシア殿下は華やかな顔立ちをしていますので、赤いバラかしら?と、私は思いましたが、

「アナスタシア殿下は小さな頃からピンク色の物を集めていますよ」

 と、シュナイダー様が言いました。「赤いバラよりも、こちらがアナスタシア殿下に似合っていますよ」


「・・・」

 私は何も言えなくなってしまいました。

 すると、リバーが私の頭を撫でてから、

「じゃあ、これにしよう。僕、払ってくるね。店、混んできたから、先に出てて」

「うん、分かった」

 私たちは先に店を出て・・・。

「カサンドラ様。ジェラート、何を食べましょうか?一個だけですよ。おなかをこわしますからね」

 と、ルークはそう言ってから、にこっと笑いました。

 私も笑顔を見せて、

「じゃあ、ルークママが一番お勧めだって言ってたオレンジにする!とっても楽しみ!」

 ちょっとはしゃいで見せました。


 シュナイダー様がアナスタシア殿下の好みを良く知っているからって、落ち込むなんておかしいですよね。


 こんな胸の痛みなんて・・・これから、何回も経験するんですから。


 きっと、すぐ何とも思わなくなりますよ・・・。





 キャスは趣味がおかしいです。お魚さんだったら、何でも可愛く見えてしまいます。




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