キャス、王都へ行く。その2
移動の祠を何回も経由して、やって来ました!王都です!
「うわー!人がいっぱい!」
馬車の中から、街中を眺めていた私は声を上げました。
カーライル家の領地とは全然違います。
領地は人間より、動物さんが多いんです。酪農が盛んなので、牛さんがもーもー言ってます。
なので、カーライル家の食卓には、朝には必ず牛乳が出ますし、ホワイトソースなんちゃらとか、ミルク煮なんちゃらが良く出ます。
ですが、私、牛乳、嫌いなんです!特におかずに使われることが許せません!
公爵令嬢として、いい生活をさせてもらっているので、贅沢を言ってはいけないと我慢しているうちに言えなくなり、今に至ってます。
リバーは知っていて、どうしてもダメなものはこっそり食べてくれています。ですが、朝の牛乳は体にいいから、飲んだ方がいいよ。と、言うことで、頑張って、牛乳を飲む私をリバーは目で応援してくれるのです。いい弟です。
と、言うわけで、食事が憂鬱な分、おやつには命懸けてます!と、言うくらい、おやつが大事なんです!おやつ抜きにされたら、生きて行けません!お菓子に牛乳を使うのは、もちろん、オッケーです!
まあ、そんなことはどうでもいいとして、
「さあ、着いたぞ。降りよう」
そう父が言った途端、スーッと馬車の扉が開いて、私たち4人は馬車から降りました。
カーライル家の本宅からは、既に執事のタリスさんや侍女頭さんなどが数日前から来ていて、屋敷内を整え、私たちを出迎える準備をしていました。
私はお屋敷を見上げて、
「可愛いおうちですね!」
別宅は本宅より、こじんまりとしていて、赤い屋根に小さな窓がたくさんある可愛いらしいお屋敷でした。
「公爵家の屋敷にしては小さいだろう?代々の公爵は無理をしてでも、領地に毎日帰っていたから、この屋敷は名目上、構えているだけなんだ。でも、学園に入ったら、自由に出入りしていいよ。寮にこもりきりも嫌だろう」
父の言葉に母は頷くと、
「そうね。この子たちが学園に入ったら、もっと、頻繁に王都に行きましょう」
「3年も別れて暮らすなんてなあ・・・」
何故か、父が泣きそうです。入学はまだまだ先ですよ!
「キャスは嫁いでしまうかもしれないし・・・」
と、母が寂しそうにぽつりと言いした。
と、と、と、嫁いで?!
お父様もお母様も気が早いです!
すると、
「嫁ぐなんて、有り得ない!私は絶対に許さん!キャスはずっと家に居ればいい!」
と、父が怒り始めました。・・・忙しい人ですね。
「はー・・・良くそんなことが言えるわね」
母は呆れて、「あなたは2年の時に私にプロポーズしたくせに」
おっ!
「卒業記念の舞踏会の時ですね!その時に結ばれたカップルは一生幸せになれるとか!」
実は『魔法学園でつかまえて』のクライマックスシーンが卒業記念の舞踏会なんですよね。その時、攻略対象キャラに告白されたら、ハッピーエンドとなります。
うーん、私、卒業まで学園にいられるのでしょうか・・・。
「あら、キャスは詳しいのね」
「そりゃあ、こう見えても、私も乙女ですからね!」
「・・・まさか、それを夢見てたりしないよね?」
父は怖い顔になって・・・「相手はあの無表情がいいとか思ってないだろうね?」
ぎゃあ!この方は何を言ってるんですか?!あの無表情なんて、シュナイダー様に失礼ですよ!
私は真っ赤になりますと、
「そっ、そんなことお父様には言いません!」
「なっ・・・」
父はショックを受けたようですが・・・。
「お取り込み中に申し訳ないですけど、玄関前で話すようなことじゃないですよ?」
と、リバーが落ち着き払って言いましたので、父は我に返ると、
「あ、ああ、そうだね。すまない」
ところが、リバーはにやりと笑って、
「お父様。心配しなくても、大丈夫ですよ。僕が邪魔しますから」
・・・可愛い弟はたまに怖いです。
その後、お屋敷に入り、一休みすることになりました。
父はお茶を一口飲んでから、カップを置くと、
「じゃあ、明日は早速、王城へ行こうか。アナスタシア殿下も・・・それから、フォルナン侯爵夫人もキャスに会いたいっておっしゃってるし」
「え・・・」
取って食われたりしないですかね。アナスタシア殿下によると怒ると凄く怖いそうですが・・・。
「大丈夫よ。厳しいと言えば、厳しいけれど、懐が深くて、暖かい方だから」
「は、はあ・・・」
母の言葉を聞いても、私の不安は消えません。王城に行くだけでも、緊張していると言うのに、そんな大物に会わないといけないなんて、大変です!話を聞いたところでは、両陛下より緊張しそうな方ではないでしょうか。うー、泣きそうです。
私は早くもド緊張してしまっていましたが、
「キャス。お茶が終わったら、早速、買い物に行きましょうね。あなたに合うドレスの生地を買いたいし、これからは、もう少し、大人っぽい装飾品も必要になってくるから、それも買いましょうね」
母は上機嫌で言いました。
「・・・はい」
私、疲れたので、昼寝したいです。でも、田舎暮らしの母は久々に王都に出て来たので、ショッピングを楽しみたいようですね。ここは我慢して、お付き合いしましょう。
「キャスは行きたいところある?」
はっ!
「お魚さんのお店に行きたいです!レオ様が前に言ってました!」
前世で私が働いていた熱帯魚専門店みたいなお店が王都にも一軒だけですが、あるそうなんです!レオ様が楽しいぞ。と、言ってました!
「はぁ、あなた、変わってるわね」
基本、動物さんに関心がない母は呆れているようですが、
「お母様も行ってみれば、好きになるかもしれませんよ」
私はにこにこしながら言いました。
その後、ドレスの生地屋さんや装飾品屋さんに連れて行かれましたが、やっぱり全く興味は湧かず・・・うんざりしてしまってましたが、母が我慢をしてくれたご褒美だと言って、お魚さんのお店に連れていってくれました!
ですが、店内は水槽だらけのお魚さんだらけで、私たちが動く度に無数のお魚さんが注目してきますので、『魚にあんなに見られるなんて、耐えられない』と、言って、母はすぐに店から出て行きました。面白いのになあ。ですが、お魚さんの色が派手過ぎて、目がチカチカしました。
やっぱりめだかさんが一番ですねっ!




