神聖な儀式です
私、カサンドラ・ロクサーヌ。12歳になりました!!
レオ様がいなくなって、寂しい毎日を送っていましたが、今日はテンション上がり気味です!
私とリバーは今日が誕生日なのです!
と、言う事は!
そうなのです!魔法を使うことが出来るのです!
そういうわけで、現在、魔力を制御している術を解いてもらう為、馬車で教会に向かっています。
ちなみに父は仕事が忙しいそうで、今日は母だけです。
「ああ、良かったわ」
と、母、マリアンナがほうっと満足げな溜め息をつきました。
「何がですか?」
と、私が聞きますと、
「あなた、攻撃魔法の特性がないでしょう?」
「・・・はい」
全く納得していませんけどね!
「神様に感謝しないと!」
母は空に向かって手を合わせました。
「何をですか?」
「だって、あなたが攻撃魔法なんて、そんな恐ろしいこと、私、耐えられないわ」
「はい?」
「だって、何をやらかすか分かったものじゃないでしょう!お父様のように火系の攻撃魔法を唱えることが出来ても、あなたが黒焦げになるかもしれないわ!」
母は超真剣ですが、そんなこと有り得ませんよ。
だいたいそんなことになったら、逆に器用なくらいじゃないですか?
私が何だかなあ。と、思っていると、私の隣で笑いを何とか堪えていたリバーが、
「僕もその方がいいよ。僕が黒焦げになる可能性もあるからね」
「はっ!」
それもそうですね!いつも一緒にいるリバーがとばっちりに遭う可能性の方がありますもんね!
私、自分が不器用で残念なことを忘れてました!
ここはリバーの為に攻撃魔法のことはすっぱり諦めましょう!
治癒魔法の遣い手として、有名になってやります!(目立つの苦手なくせに)
私が気持ちも新たに燃えていますと、
「キャスはほんとに単純だなあ」
と、リバーがぼそっと言いましたが、私、燃えてますので、聞こえません!
教会に到着し、3人で祈りを捧げますと、サンタさんみたいな牧師様が、
「12歳のお誕生日おめでとうございます。早速、制御の術を解きましょう」
「はい」
「ふぁい」
と、私とリバーは答えました。先に答えたのはリバーです。・・・分かります?ですよね。
「では、お母様はこちらでお待ち下さい。おふたりはこれから地下に行きますからね」
「!」
な、何ですと?!
「さあ、行きましょう」
牧師様が先に歩いて行きます。
「ち、ちょっと、キャス。歩きにくいよ」
私にがっちりとしがみつかれたリバーが言いました。
「だ、だ、だ、だって、地下って、怖くない?」
牧師様とリバーがランプを持って、やや薄暗い階段を降りて行きます。
な、何故、わざわざ薄暗い階段を降りて行くのですか?もっと、明かりを点けて下さい!落ちて、首の骨でも折ったら、どうするんですか?!
はっ!もしや、生贄の儀式だったりして?!
あっ!それよりもです!双子は縁起が悪いから、後に生まれた子を殺した。なんてお話を前世で読んだことがあります!
となると、優秀なリバーは生き残り、残念な私は・・・。
「ぎゃあ!」
私は自分勝手な想像にもかかわらず、怖くなって、思わず、悲鳴を上げてしまいました。
薄暗い階段に悲鳴が響きます。その悲鳴はくぐもって聞こえ、自分の声だとは思えませんでした。なので、私は更に怖くなってしまうと、
「ぎゃあああっ!!」
更に大きな悲鳴を上げました。
「うわあっ!」
と、それに驚いた牧師様が悲鳴を上げ、姉の悲鳴には慣れっこのリバーですが、牧場様の悲鳴にはさすがに驚いたようで、
「わあっ!」
と、悲鳴を上げました。
しばらく、悲鳴の合唱が続き・・・。
無事に階段を降りきった私とリバー、牧師様でしたが、息も絶え絶えでした。
やっと、息を整えた牧師様が・・・。
「・・・神聖な場所で行う、神聖な儀式ですので、お静かに」
「「申し訳ありません」」
私とリバーは声を合わせて、謝りました。
階段を降りてすぐの所にあるドアを牧師様は手で示して、
「では、お姉さんの方から先に・・・」
「ひぃっ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・僕から先にお願いします」
「・・・そうですね」
・・・牧師様とリバーはいそいそと部屋に入って行きました。
3分後、リバーが出て来ました。
「リバー、大丈夫?!爪はちゃんとある?!」
と、私が詰め寄りますと、
「何故、爪・・・」
リバーは呆れたように言いましたが、「さあ、キャスの番だよ」
「い、痛くない?」
「全く」
「牧師様、怖くない?」
「早く行かないと、怖くなるかもね」
と、リバーは言うと、私の後ろに回って、肩を押すと、「大丈夫だから。ルークもシュナイダーも何ともなかったって、言ってただろう?」
「そ、そうよね!ルークはともかくシュナイダー様がそう言ったんだもんね!なら、大丈夫よね!行ってくる!」
私は意気揚々と部屋に入って行き・・・。
「ルークがかわいそー・・・」
ドアを閉める瞬間、そんなリバーの声が聞こえました。だって、それはしょうがないでしょう!
「ドアはしっかり閉めて下さいね。鍵もかけて」
部屋に入ると、牧師様が言いました。
「ふ、ふぁい・・・」
私は震える手で鍵を閉めました。
部屋の中央には教卓みたいな台があって、
「さあ、こちらへ」
牧師様と私でその台を挟むようにして、立ちます。「祈りを捧げるように、手を合わせて、俯いて。それから、目はしっかり閉じなさい。とても眩しいですから」
「ふぁい!」
閉じますとも!
私が言われた通りに手を合わせて、目をぎゅうっと閉じていると、牧師様が私の名前を呼んだ後は、何やら呪文を唱え始めました。
1分くらい唱えた後、目を閉じていても分かるくらい部屋の中が一瞬カッと光りました。
そして、
「もう目を開けていいですよ」
「は、はい」
私が目をしばたいていると、
「あなたのその魔力が正しいことに使われますように。神のご加護がありますように」
と、牧師様がおっしゃいました。
何と有り難いお言葉でしょうか!
「ありがとうございます!」
私は頭をがばーっと下げました。
牧師様は驚いたようですが、顔を上げた私に、にっこりと笑いました。
私、治癒魔法しか出来ないので、間違ったことに使いようがないですけどね・・・。
早く『魔法学園』に入学しろよと思われそうですが、レオ様が帰って来た時のことも書きたいですし、魔法のことにもちょっと触れたいので、ご容赦いただけたら、有り難いです。




