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王子様の旅立ち。その2

 アナスタシア殿下との別れの挨拶を終えたレオ様は泣いているクリス殿下を抱きしめて、

「泣くな。私もアナスタシアもすぐ帰って来るから」

「れ、レオ兄様ー・・・」

 クリス殿下はぼろぼろと涙をこぼしてます。うーん、泣き虫さんはジャスティン殿下譲りですかね。でも、お兄様とお姉様の二人共としばらく会えなくなるんですもんね。しょうがないですよね。


 ところが。

「兄上のことを頼むな」

 と、レオ様が言いますと、

「はいっ!」

 クリス殿下は元気良く答えました。

 いや、ジャスティン殿下もクリス殿下に頼まれる程じゃないと思うんですが。でも、クリス殿下はとても張り切っているようですので、まあ、いいですかね。


 レオ様はわずかな護衛と旅に出ますが・・・。

「カーライルは来なくても良いのだぞ」

 私の父も護衛として、ルークの御祖父様の家までついて行くのです。

「何をおっしゃいます。山賊が出るとの噂がありますからね。殿下にもしものことがあっては大変です。ですが、ご安心を。私にかかれば山賊など一瞬で灰になりますから」

 父はどんと任せなさいと言うように胸を叩きました。

 ・・・お父様、怖いです。


 レオ様はぐすぐす泣いているルークの前に来ると、

「ルーク。騎士を目指している男がそんなに泣くものではない」

「す、すみません」

 ルークは自分も行くと言いましたが、レオ様は許しませんでした。ついでにルークの御祖父様もあの馬鹿は連れて来るなと言っていたそうです。

「ルーク。私はお前が思っていたような人間ではなかった。失望させたな。悪かった」

 ルークは涙を乱暴に拭いますと、

「自分は殿下に失望なんかしません。だいたい自分はリバーやカサンドラ様が言うところによると、『レオ様馬鹿』らしいので、賢くなんかなりませんから!ですから、失望しません!」

「なんだそれは」

 レオ様は笑いましたが、ルークを抱きしめて、「ありがとう。ルーク」

「!」

 ルークは真っ赤になると、ガッチガチに固まりました。

 うーん、私、また誤解しちゃいますよ?


 続いて、レオ様はシュナイダー様の前に来て、

「2年後に、私が帰って来た時くらいはその無表情をやめて、笑うくらいしろよ」

「・・・努力します」

 と、シュナイダー様が答えたので、レオ様は苦笑いすると、

「冗談だ。無理することはない」

「殿下こそ、もう無理はしないで下さいね。・・・今まで何も力になれなくて、申し訳ありませんでした」

 シュナイダー様はちょっと眉を下げて言いました。

「シュナイダーが謝る必要はない。一人で抱え込んでいた私が悪いのだから」

「まあ、そうですね。そこまで頼りにならなかったのかと、腹が立ちました」

「わ、悪かったよ」

「ですが、私ももっと殿下に頼られる人間になるよう頑張りますから」

 レオ様は目を細めると、

「ありがとう」

 と、言いますと、人にべたべたされることが苦手なシュナイダー様に気を使って、肩を叩こうとしましたが、シュナイダー様から、レオ様を抱きしめました!ぎゃあっ!

「どうかご無事で」

「ああ。・・・元気でな」

 二人はしっかりと抱きしめ合いました。

 う、美しいです!素晴らしいです!何故、この世界にはカメラがないのでしょうか?!


「リバー」

 レオ様はリバーの前に立つと、「キャスに悪い虫がつかないようにしっかり見張っておけよ」

「レオ様に言われなくても」

 と、言って、リバーはにやりと笑いました。

「そうだな」

 レオ様もにやりと笑いました。

 この二人、笑顔でも怖い時がありますよね。変なところが似ちゃいましたね。

「帰って来たら、是非手合わせをお願いします」

「こてんぱんにしてやる」

 と、言ってから、レオ様はリバーを抱きしめました。

「・・・こっちの台詞です」

 と、リバーは少し震える声で言うと、抱きしめ返しました。

 それから、二人は抱きしめ合いながら、ひそひそと話をしています。全く聞こえませんが、長いですよ?!お姉ちゃん、鼻血が出ちゃいますよ?!


 やっと、リバーから離れたレオ様は最後に私の前に立ちました。

「キャス・・・」

「レオさ、ま」

 途端に涙が溢れ出ました。

 レオ様は困ったように笑うと、

「永遠の別れじゃないんだから、そんなに泣くな」

「だ、だって・・・」

 レオ様は私を抱きしめました。父が『あっ!』と、声を上げましたが、母が押さえました。

「必ず成長して帰って来るからな」

「わ、私も・・・」

 レオ様は首を振ると、

「キャスはそのままでいてくれ。私はそのままのキャスが大好きだ」

「れ、レオさ、ま」

「キャス。本当にありがとう。私もキャスに出会えて、本当に良かった」

「ふぁい」

「私もキャスがどんなに馬鹿なことをしようがずっと友だからな」

「ふぁい。で、でも馬鹿なことなんてしましぇんー」

「どうかな。キャスは何をするやら分からないからな」

 レオ様はそう言って、ちょっと私から離れると、私の額にキスしました。

 『あっ、ああっ?!』と、父がまた声を上げましたが、今度はジャスティン殿下が謝って下さってます。

「あー、絶対、キャスより大きくなってやる」

 と、レオ様は悔しそうに言いました。

 私の額にキスするために、背伸びしましたもんね。

 私は思わず、笑ってしまいました。



 レオ様は馬車に乗り込むと、馬車の窓を開けて、

「皆、ありがとう!元気で!!」

 と、大きな声で言いました。

 皆様が口々にはいと言いました。

 私はもう声が出ませんでした。ただただ涙がこぼれます。

 馬車が動き出して、ルークが駆け出します。

 私も駆け出しましたが、

「あっ」

 すぐに何かにつまずき、転びそうになりました。

「キャス!」

 レオ様は声を上げましたが、同時にリバーとシュナイダー様が私を受け止めてくれました。

 レオ様はホッとすると、

「転ぶから、そこにいろ!ルークももういいからなー!」

「殿下ー!お元気で!!」

 ルークは言われた通りに立ち止まると、大きく手を振りました。

「レオ様ー!」

 私も手を振りました。

 レオ様も振ってくれます。

 私たちは馬車が見えなくなるまで手を振り続けました。


 レオ様の目からこぼれ落ちた涙は太陽に照らされ、美しい銀髪に負けないくらいキラキラと輝きました。


 こうして、皆に愛されている王子様は一人旅立ちました。


 2年後に再会する時は笑顔で会いましょうね!


 

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