表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/216

招待状

 レオ様は本当に失礼ですが、シュナイダー様の誕生日会が行われるなんて、私も驚きました。

 シュナイダー様は今まで誕生日会なんて行ったことはありません。シュナイダー様は誕生日を自分をこの世に誕生させてくれた両親に感謝し、静かに過ごす日だと思ってます(私なんて、ごちそう以外に一切れがリバーの倍以上大きいケーキを食べて、毎年おなかが痛いと騒いでいると言うのに)。

 ですので、私たちはいつもならシュナイダー様が普通に我が家に来た時にちょっと豪華なおやつを用意し、プレゼントを渡しています。今年はリバーとお小遣を出し合い、とても凝った装飾を施している砂時計を贈る用意をしています。



「両親や祖母が初めてのことだからと、どういうわけか、とても張り切っておりまして、皆さんには我が家に泊まっていただけたらと申しております」

 と、シュナイダー様が言いました。

 アンバー公爵家にお泊りですか?!ど、どうしましょう!

「殿下」

 シュナイダー様が4通の封筒を差し出しましたので、レオ様はふと首を傾げると、

「何故、こんなに?」

「レオンハルト殿下、ジャスティン殿下、クリス殿下・・・そして、アナスタシア殿下の4名様分の招待状です」

「はあ?」

 レオ様は唖然としましたが、

「あとはサラ様にも・・・」

 何事もなかったかのようにシュナイダー様が続けますので、

「待て!アナスタシアもだって?!ぶち壊しになるぞ!考え直せ!」

 と、レオ様が言いました。

「・・・」

 シュナイダー様は一体何を考えているのでしょうか。


 レオ様は肩をすくめて、

「本人を前に言うのはあれだが、キャスやサラ嬢もいるのなら、あれはどのみち来ないぞ」

「両陛下とジャスティン殿下、クリス殿下に協力して頂きたいです」

 と、シュナイダー様が言いますと、クリス殿下がこてんと首を傾げます。い、いちいち可愛いです。

 シュナイダー様は続けて、

「殿下がアナスタシア殿下を遠ざけてくれた時は安堵していました。ですが、それでは何の解決にもならなかった。今回のことで分かりましたよね」

 レオ様は溜め息をついて、

「会わずにいたら、気持ちなんて冷めると思っていた。まあ、甘かったな」

「それは私たちが異性を好きになったことがないからでしょうね。だから、簡単に考えていたのです」

「し、しょうがないだろう」

 レオ様はむくれます。


「きっと・・・」

 シュナイダー様は私を見て、「カサンドラ様ならもっと違った方法を思い付いたかもしれません」

「え・・・」

「カサンドラ様がジャスティン殿下に発破を掛けて、サラ様に思いを伝えるようにしましたよね。それを見て、私も何かしなくてはいけないのではないかと思うようになったのです」

「シュナイダー様・・・」

 シュナイダー様は手に持っている招待状を見て、

「これが初めの一歩だと思っています」

 そう言ったシュナイダー様は何の迷いもないと言った表情をしていました。


 シュナイダー様が決めたことです。私に出来ることは誕生日会を楽しく、良い思い出となるよう、微力ながら、協力することです。

 でも、レオ様はやっぱりアナスタシア殿下を招待することは反対かなー、と、思いつつ、レオ様を見ました。

 レオ様は小難しい顔をしていますが、何も言いません。

 あれ?反対しないのかな?


 なんてことを私が思っていますと、

「カサンドラ様、どうぞ」

 シュナイダー様が私に招待状を渡しました。

 私はそれを両手で受け取り、胸に当てますと、

「ご招待ありがとうございます。何があっても行きますね」

 そりゃあもう、ひょうが降ろうが、槍が降ろうが、高熱が出たとしても、這ってでも行きますよ!

「ありがとうございます」

「い、いえ」

 こうして、向かい合うと、私はまたこの間のことを思い出してしまいました。


「あれ?カサンドラ様。顔が赤いですよ。熱でもありますか?」

 と、ルークが言いました。

「!」

 ぎゃっ!もっと赤くなってしまったではないですか!

 こ、このっ、レオ様馬鹿!レオ様のことだけ考えていれば良いものを!

 あー、リバーとレオ様が私を見て、怪訝な顔をしているではないですか!もうっ!

 私は腹立ち紛れにルークのくせのある赤毛をぐしゃぐしゃにしてやりました。

「あー!カサンドラ様、何をするんですかぁ?!」

「うるさいです!そっちの方が似合ってますよ!」

「え?本当ですか?」

 と、ルークはへらっと笑います。

「・・・」

 はぁ。気が抜けます。私は溜め息をつきますと、ルークの髪を撫で付けながら、「嘘です。鳥さんの巣みたいですよ」

「えー、何なんですかー」

 と、ルークは文句を言いました。


 シュナイダー様はそんな私たちを余所に、クリス殿下の前で膝をつくと、

「クリス殿下もどうぞお越し下さい」

「はい」

 クリス殿下は頷きましたが、「ほ、ほんとに姉様も行って良いのですか?」

「ええ。クリス殿下もお姉様が一緒の方が良いでしょう?」

「は、はい」

「私が是非我が家へ来て頂きたいと申しておりましたことを、お姉様にお伝えして下さいますか?」

 と、いつもは声まで無表情なシュナイダー様がどことなく優しい口調でクリス殿下にお願いしました。

「はい!」

 クリス殿下は嬉しいのか瞳をキラキラとさせています。

 か、可愛過ぎます。それにお姉様思いなのですね。

 アナスタシア殿下もシュナイダー様とクリス殿下の思いを汲んでいただけたら良いのですが・・・。


 シュナイダー様のお誕生日会。楽しみではありますが、どうなるか不安です。


 でも、きっと良い事がありますよね?


 ・・・そう信じたいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ