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キャスと天使の受難。その2

 私は恐怖のあまり固まっておりましたが、

「あ、アナスタシア殿下。ご無沙汰しております。本日は我がダンレストン家にお越しいただき、ありがとうございます」

 サラ姉様がご挨拶しましたので、

「あ、あ、アナスタシア殿下、本日はお目に掛かれて、う、嬉しく思いま、す」

 私も何とか挨拶しました。

「・・・ええ。私も嬉しく思いますわ」

 アナスタシア殿下は、まるで私を睨みつけるようにして言います。全く嬉しくなさそうです!

 ど、どうしましょう。私がシュナイダー様を好きだと言うことがアナスタシア殿下に知られてしまいました!


「・・・」

「・・・」

「・・・」

 しばらく沈黙が続きます。誰も何も言えません。サラ姉様もアナスタシア殿下と打ち解けていないせいで、何を話していいのか分からないようです。私の方は恐ろしさのあまり、声が出ません!


「あっ・・・ジャスティン殿下はまだ到着されていないのですか?」

 と、サラ姉様が無難な話題を持ち出しましたが・・・アナスタシア殿下は次はサラ姉様を睨んで、

「何?何を措いても、ご自分のところに来ると思って?」

「そ、そんな滅相もございません」

 サラ姉様は慌てて言いました。いえ!ジャスティン殿下の本心はサラ姉様のところへ何を措いても行きたいはずです!とは、言えませんがー・・・。


 私とサラ姉様は蛇に睨まれた蛙状態です。いえ!私以外のおふたりは、へびさんにもカエルさんにも例えるには美し過ぎますけどね!

 誰か来てー・・・と、私が思っていると、

「ああ。アナスタシア殿下。そちらでしたか」

 私の父、アンドレアスがやって来ました!助かりました!

「まあ!カーライル様!」

 そのアナスタシア殿下の声はとっても可愛らしく・・・。では、さっきまでのひっくい声はどこから出ていたのでしょう?


 父は小さなアナスタシア殿下に目線の高さを合わせるように膝をつくと、

「今日はお会い出来て、大変光栄です。馬車移動をされたばかりですが、お疲れではありませんか?」

「いいえ!ちっとも!カーライル様にお会い出来て、とっても嬉しいわ!同じ城に居ても、あまりお会い出来ないんだもの」

 父はアナスタシア殿下が前に言っていたとろけるような笑顔を浮かべると、

「遊びに来ていただいても、宜しいんですよ。私は嫌われ者なので、誰も寄り付きませんからね」

「嫌われ者だなんて!皆、カーライル様を尊敬してますわ!それに、私はカーライル様が大好きですもの!」

 父は嬉しそうに笑うと、

「ありがとうございます。そんなことをおっしゃって下さるのはアナスタシア殿下だけですよ」

 むぅ。お父様ったら、何ですか。アナスタシア殿下だけでなく、私だって、言いますよ。そりゃあ、あんなに可愛くは言えませんが。面白くないです。・・・私、ちょっと妬いてます。むぅ。


 私がそんなことを思っていると、父がこちらを見たので、私は笑顔を見せました。『私、妬いてます』なんて顔は見せたくないですからね。

 父はアナスタシア殿下を促しながら、こちらに来て、

「サラ様。カサンドラと親しくして下さって、ありがとうございます。カサンドラは内気なところがあるので、心配しておりましたが、サラ様のお陰で楽しく過ごせているようで安心しました。感謝しています」

 ・・・ええ、私、顔に似合わず内気です。

 サラ姉様は父の登場にホッとしたのか、いつもの天使のような笑顔を見せると、

「私こそ、キャスと仲良くなれて、楽しいですし、妹が出来たようで、とっても嬉しいです」

 サラ姉様・・・私、感激して、泣きそうです!


 父は私を見ると、良かったね。と、言うようににっこり笑うと、私の頭を撫でようとしましたが、綺麗に編み上げていることに気付いて、寸前で止めました。母にまた怒られますからね。

 ところが。

「あーっ。キャス。髪が乱れてしまった!」

 父はそう声を上げると、「ちょっと直してあげるからおいで!」

 え?髪、触ってないですよ?どうしたのですか?


 父は広間の隅に私を連れて行きました。

「あの、お父様?乱れていても、お父様では直せませんよ?」

 と、私が言いますと、父は背を屈めて、

「・・・キャス。アナスタシア殿下のこと頼むよ。さっき、シュナイダー君と会ったんだけど、アナスタシア殿下がまたべったりとくっついちゃってね。そしたら、シュナイダー君が条件反射と言うのかな。体を強張らせてしまってね。さすがのアナスタシア殿下もショックを受けたみたいで・・・なのに、レオンハルト殿下がそれみたことかと責めるだろう?それで、アナスタシア殿下は逃げてしまったんだよ」

「お父様はアナスタシア殿下を追いかけて来たのですか?」

「うん、幸い気に入って下さってるからね」

「そうだったんですか・・・」

 妹君に厳しいレオ様はいつものことでしょうが、悪気がないとは言え、シュナイダー様の反応はショックだったでしょう。

 と、言うか、そんなところに更に私がシュナイダー様を好きだと知ってしまったわけですかぁ?!そりゃあ、黒ーいオーラを出すわけですね!


「と、言う訳で、何とか仲良くしてあげてくれないかな。サラ様もいるわけだし」

 ですが・・・。

「さ、サラ姉様もアナスタシア殿下と上手くいっているわけじゃ・・・」

「うん。それは分かってる。でも、ともかく、頼むよ。しばらく、父様もいるから」

 父が宥めるように言いました。

 居てくれなきゃ困ります!


 それにしましても、

「お父様も大変ですね」

「分かってくれる?どういう訳か、女の子の扱いが慣れてるだろうなんて言われるんだよ」

「それは、学園で女子生徒を口説きまくってたからでしょう?」

 と、私が言いますと、父はギョッとして、

「な、なぜ、そんな、だっ誰に、いや、キャス、そんな言葉は使っちゃダメだよ」

 えー、大した言葉ではないではないですか。

「さ、さてっ、戻ろうか!」

 父は気まずくなったのか、サッサと歩いて行きます。待ってくださーい。足の長さが違うんですからー。


 私と父が戻りますと、俯いたサラ姉様と腕を組み、そっぽを向いたアナスタシア殿下が居ました。サラ姉様!二人きりにしてすみません!

「お待たせして、申し訳ありません」

 と、父が声を掛けると、アナスタシア殿下は途端ににっこり笑い、サラ姉様もホッとした笑みを見せました。

「何か食べに行きましょうか」

 と、父が言ったので、私も場を盛り上げようと、

「こっ、こちらは本当にスイーツが美味しいですからね!ね、ねえっ、サラ姉様!」

 うわー、私、とってもわざとらしいです。元いじめられっ子に場を盛り上げるなんて高度なことは難しいです・・・はぁ。

「ええ、そ、そうなんです。是非、アナスタシア殿下にも召し上がって頂きたいです」

 と、サラ姉様が言いますと、アナスタシア殿下はにっこりと笑ったまま、

「ええ。是非頂きたいわ」

 あれ?機嫌良さそうですね。あ、スイーツ好きですか?


 4人でスイーツコーナーに向かっていると、

「カーライル公爵様」

 ダンレストン家の執事さんが来て、父に耳打ちします。父は頷くと、

「アナスタシア殿下、サラ様、申し訳ありません。少々、失礼致します。城から知らせが来たようですので」

 父はお辞儀をすると、私に向かって、ごめん。と、口を動かすと、足早に行ってしまいました。そんなー!お父様ー、行かないでー!


 私がどうしたらいいのやら・・・と、思ってると、

「カーライル様がいないんじゃつまらないわ。あなたたちと居たって、しょうがないし」

 アナスタシア殿下は父が居なくなった途端、不機嫌顔に戻りました。

 ・・・あ、そうでした。父のことをシュナイダー様には及ばなくても、二番目に愛してるんですもんね。そりゃ、父の前では、上機嫌になりますよね。


 ところで、この後、私とサラ姉様はどうすれば良いのですか?!



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