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それでも弟は可愛いです

 私、ギョッとしました。

 リバーが水も滴るいい男状態で現れたのです!

 リバーは濡れた髪をかき上げながら(リバーも髪を伸ばしてます。流行りですかね?)、

「レオ様。申し訳ありません。こんな格好で」

「そ、そ、そ、そ、そうよ!ダメじゃないの!そんな格好で!何してたの!」

 私は声を上げました。

 リバー!シャツのボタンを3つも開けるなんて、お姉ちゃんは許しませんよ!おまけにシャツが濡れて、透けてるではありませんか!ぎゃあっ!

 最近、リバーは11歳にして、無駄に色気が出て来ました。お姉ちゃんでなかったら、私、出血多量で死んでます!

 『魔法学園』在学中に女子生徒を口説きまくっていた父に似なければ良いのですが。


「何って、湖で泳いで・・・あれ、お客様?」

 リバーはやっと私たちに隠れて見えなかったアナスタシア殿下に気付きました。と、言うか、私も思い出しました!

「お、お、お、お客様どころか!アナスタシア殿下よ!」

 王女様の前でそんな格好はダメです!

 すると、

「アナスタシア!どうした?!」

 レオ様が声を上げました。

「えっ?!」

 私は振り返って、「ぎゃあっ!」

 思わず、悲鳴を上げてしまいました。


 ・・・アナスタシア殿下が鼻血を出してました。おまけにリバーに目が釘付けになったまま固まってます。


 ・・・分かります。私の可愛い、いえ、無駄に色気のある弟が申し訳ありません。



 それから、ちょっとした騒ぎになりました。私はリバーを屋敷の中に突き飛ばすくらいの勢いで押し込むと、母を呼ぶように言いました。

 その間、さすがのレオ様も心配そうにアナスタシア殿下の背を撫でたりしてました。何だ。いいお兄様ではないですか。

 それから、おふたりを客間にお連れしました。アナスタシア殿下の鼻血は母に治癒魔法をかけてもらう必要もなく、すぐ止まりました。


「一体、どうしたんだ?」

 レオ様はどうして鼻血が出たのかアナスタシア殿下に聞きましたが、

「・・・ちょっと、声を上げたりして、のぼせただけよ」

 と、アナスタシア殿下はぼそぼそと言ってます。リバーの色気に当てられたとはさすがに言えないようです。

「それだけで?」

「そっ、そうよ!だいたいレオ兄様が悪いのよ!」

「はあ?人のせいにするな」

「レオ兄様が意地悪しなかったら、ここに来ることだってなかったのよ!」

「じゃあ、すぐ帰れ」

 と、レオ様は言うと、ドアを指差します。

 まったくもう!レオ様ったら!


「レオ様!」

 私はおふたりの間に入りますと、「アナスタシア殿下は鼻血を出されたばかりですので、また興奮させるようなことはやめましょう!少し休んでいただかないと!!」

「・・・」

 レオ様は私をじっと見つめると、「私も休む」

 はい?


「・・・」

 アナスタシア殿下が絶句しています。

 それも仕方ありません。さっきまで自分に対して、散々文句を言っていた兄が膝枕をしてもらっているのですから。

「精神的苦痛を味わって疲れた」

 と、目を閉じたレオ様は言います。「キャスに膝枕をしてもらわないと立ち直れないから、仕方なくしてもらっているだけだ」

 一応、言い訳をすることは忘れていないようです。


 そこへ、ドアがノックされ、

「失礼致します」

 リバーが入って来ました。よし!ちゃんと一番上のボタンまで留めてますね。

 リバーは私とレオ様の状態を見て、眉をこれでもかとしかめましたが、一人掛けのソファーに座っているアナスタシア殿下の傍に行くと、膝をついて、

「先程はきちんとご挨拶出来ずに申し訳ありません。カサンドラの弟のリバー・ロクサーヌと申します。アナスタシア殿下、体調は良くなりましたでしょうか?」

 アナスタシア殿下は赤くなりつつ、

「ええ。心配には及びません」

 威厳たっぷりに言いました。

「それは良かったです。安心致しました」

 リバーは立ち上がると、丁寧にお辞儀して、「何か必要なものがございましたら、遠慮なくお申しつけ下さい」

「ええ。ですが、今のところは結構よ。お茶も頂きましたから」

 さすが王女様ですね。顔はまだ少し赤いですが、胸をはだけたリバーを見て、鼻血を出したとは思えない程、落ち着いています。


「リバー。私は何か甘い物が食べたい」

 と、レオ様が全く空気を読まずに言いました。

 リバーはジロっと、こちらを見てから、私たちのところへ来ると、

「レオ様の好きなチョコレートがございますが」

「うむ。貰おう」

 リバーは苛々を何とか抑えつつ、

「では、起き上がってもらえますかね。このままではさすがに行儀がよろしくないと思いますので」

「・・・」

 レオ様は少し考えて、「じゃあ、要らない」

 嬉しくないですが、私の膝枕がお気に入りのチョコレートに勝ったようです。

「そうおっしゃらずに」

「嫌だ」

 レオ様は私の腰に抱きつくと、「リバーの魂胆は分かっているからな」

 リバーは腰に手を当てて、冷たーい目でレオ様を見下ろしますと、

「レオ様。一度意見しようと思っていたのですが、もう11歳なのですから、こういったことはお止めになった方が良いと思いますよ。例えば、私がアナスタシア殿下に膝枕をされていたら、嫌でしょう?」

 その例えにアナスタシア殿下がまた赤くなりました。リバー、ダメですよ!そんな例えは!


 すると、レオ様は、

「別に。私はリバー程、過保護ではない」

「・・・ほう。私が過保護だとご存知で?」

 リバー、怖いです!笑顔なのに、怒りオーラを出すなんて、そんな芸をどこで覚えたのですか?!

「そんなの誰でも知っている」

「そんな過保護な弟の前で姉に膝枕をしてもらっているわけですか」

「リバーもそう言わずに、キャスに膝枕してもらえば良いだろう。他の男は嫌だが、リバーなら許してやるぞ」

「何故、レオ様の許しが要るんですか!」

「一番最初に始めたし、私以外してもらってないはずだ」

 と、レオ様がどこか自慢げに言います。

「そんな理屈通りますか?!姉、姉の膝はレオ様のものではありません!これから先もずーっとしてもらうおつもりですか?!」

 まずいです。リバーがヒートアップしています。実はレオ様はリバーを怒らせるのが好きなんですよね。友達なのに、普段、丁寧過ぎるのが気に入らないようです。

「り、リバー。アナスタシア殿下の前よ。ちょっと落ち着いて」

 と、私は宥めようと、「あ、後でリバーも膝枕してあげるから」

 リバーは真っ赤になると、

「そんな問題じゃない!」

 と、怒りました。


 無駄に色気が出て来ましたが、私の弟は可愛いでしょう?



 ちなみにこの後、十分リバーをからかって、満足したレオ様はアナスタシア殿下を連れて帰りました。ですが、馬車は別々でした。まったく・・・。





 双子の父、アンドレアスは次期カーライル公爵になるプレッシャー等から、『魔法学園』在学中、荒れていた時期(女子生徒を口説きまくったり、男子生徒には喧嘩を吹っ掛けたり等)がありました。


 でも、リバーには手の掛かる姉がいますから、荒れている暇はありませんので、安心して下さい。




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