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ルークと呼びます。その1

 私はルーカスを連れて、音楽室に入りました。

 音楽室は防音バッチリなので、秘密の話をするにはぴったりな場所です。

 ちなみに音楽室には、母、マリアンナの宝物であるピアノがあります。私から見ても、大変立派な物だと思います。

 私たち双子は絵だけでなく、音楽も全くダメなので、この音楽室に普段は寄り付きません。


 私は振り返りました。

 ただ振り返っただけなのですが、ルーカスがビクッと体を震わせます。私、怖いですかね?

「・・・あの」

 と、私は切り出しました。「あんなこと言ったのは、私に嫉妬してのことかしら」

 いきなりこんなことを聞かれるとは思っていなかったのか、ルーカスはきょとんとして、

「は?」

「は?・・・じゃなくて!私にあんな悪意のあることを言ったのだから、レオ様と仲の良い私に嫉妬したからだと思うでしょう?」

「・・・」

 ルーカスは私が言ったことを反芻していたようで、しばらく黙っていましたが、「・・・そうかもしれません」

 おっ?!

「それって、どういう」

 と、私は言いかけましたが、

「母が妹を出産した後・・・」

 と、ルーカスが話し始めます。

 この人、人が話そうとするのを遮りますよね。やっぱり、リバーに教育してもらいましょう。

「母が体調を崩したので、一緒にグレイ伯爵家の領地でしばらく過ごしていたんです」

「はあ・・・」

 そうなんですか・・・大変でしたね・・・。

「母の体調が良くなり、王都に戻って、久しぶりに殿下にお会いしたら、お二人の話ばかりしていて・・・」

「私とリバーの?」

 ルーカスは頷いて、

「特にカサンドラ様のことを・・・」

「・・・」

 どんな?とは、聞かずにおきましょう。

 レオ様の前で数々の失敗や挙動不審っぷりを見せましたからね。


「殿下が楽しそうで良かったと思う反面・・・シュナイダーもこちらに来ていると言うことで、自分だけ除け者にされた気がして・・・おまけに殿下が女性にべったりだとか聞いて、ショックだったんです。確かに自分は殿下を崇拝する余り、理想化し過ぎていましたから・・・反省しています・・・」

 話しながら、ルーカスはだんだん俯いていきます。

 憧れの人には孤高な存在でいてほしいって感じですかね。レオ様にとっては迷惑な話です。


 私は溜め息をつくと、

「レオ様はあなたはいい奴だから、仲良くなれるって、私に言ってました」

 ルーカスは顔を上げましたが、またすぐに俯いて、

「自分は殿下の信頼を裏切ったのですね・・・」

「・・・」

 垂れた耳としっぽが見えるようです。『くぅーん』とかって、鳴きませんかね。 


「あの、でもね」

 と、私が言いかけて、

「ですが!」

 ルーカスは声を上げます。・・・むぅ。また遮られました。

「カサンドラ様のお陰で、殿下に許していただけました!」

 ・・・どうでしょうかね。そのうち許したと思いますよ?

「このご恩は一生忘れません!」

 ・・・大袈裟な。

「ですから、これからはカサンドラ様のために何でもやります!」

 ・・・ん?何でもとおっしゃいました?

「それなら」

 と、私は言いながら、ルーカスに向けて、手の平を広げると、「お願いだから、遮らないで下さいね」

「はい!」

「何でもしていただけると言うのでしたら・・・その、あ、でも、その前に聞いておかないと」

 ・・・どう聞けば、いいのでしょう。かと言って、遠回しに聞いても分かりませんよね。よし!


「あなた、レオ様を崇拝してるとか、私に嫉妬したかもと言ってたけど、それって、あれかしら」

「あれ?」

「レオ様が好きとか・・・」

「それはもちろん、好きですが・・・」

「えっ?!そうなのっ?!」

 こ、困りました。私のために何でもするとルーカスは言いましたが、私が、今、話そうと考えていることは、レオ様を好きなルーカスには酷な話です。


 私は気付けば、うろうろと歩いていました。

 ルーカスはテニスの試合を見るようにうろうろする私を目で追っていましたが、

「あのー、カサンドラ様。何か悩みがあるのですか?」

 ・・・ええ。あなたのせいでね。

「良ければ、相談に乗りますが・・・」

 ・・・全く良くありません!

「話せば楽になるかもしれませんよ?」

 ・・・そりゃ、あなたは私にレオ様が好きだと告白したんですから、楽になったでしょうね!

「ところでここに来たのは、どういったお話があって・・・」

「・・・もういいのです」

「良くありません!何か思い詰めているようですよ?!」

 ・・・。

「言って下さらないと、今日、眠れそうにありません!」

 ・・・子供ですから、ベッドに入ればすぐに寝ますよ!

「あ、でも、あんな失礼なことをしたばかりの自分にお話してくれるわけがありませんよね!では、リバー様を連れて来ます!」

 ぎゃあっ!なぜそうなるんですか?!困った人ですね!


「では!」

 ルーカスが音楽室から出て行こうとしましたので、私は慌てて、

「待って!リバーはいいの!でなきゃ、ここにあなたを連れて来るわけがないでしょう!」

 ルーカスは振り返って、

「でしたら、話してください!」

 と、声を上げます。

 そんなに声を荒らげなくてもいいでしょうに!誰のせいですか?!と、私は苛立つと、

「で、でしからっ、ですからっ、レオ様の理想の女性は実際に存在するんです!だから、レオ様とその方が結ばれるようにあなたと私で協力し合っていきましょうと言おうとしたんです!なのに、あなたがレオ様を愛してるなんて言うから、言えなくなってしまったんでしっ!」


 ・・・あ、言ってしまいました。そして、何故か『ども噛み』再発しました。





 本人に自覚はありませんが、キャスはルーカス以上に『思い込みが激しいお馬鹿さん』です。




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